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 『最新 宇宙学』 
まえがき

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『最新 宇宙学』 カバー  「宇宙」という言葉から,みなさんはどんなことを思い浮かべますか.「無限」「星や銀河などいろんな天体がたくさんある!」「ブラックホールってなに?」,はたまた「宇宙人はいるの?」なんてバラエティーに富んだ返事が返ってきそうです.「難しいことはわからないけれど,なんだかおもしろそうだ」なんていう人もけっこう多そうですね.

 宇宙には無数の天体が輝いています.5000年もの大昔から人々は空を見上げ,星々に名前をつけたり,その星の並び方から人や動物の形を想像して,たくさんの星座や神話をつくり出してきました.また人々は,太陽や星座の動きから,時間や季節を知り,暦をつくり,星占いにも利用しました.

 このように,昔の人々にとって星空は生活の一部でしたが,17世紀にガリレオによって望遠鏡が発明されると,天体そのものへも目が向けられるようになります.より詳しく天体を調べるためには欠かせない道具となった望遠鏡は,宇宙の虜になった人々によってどんどん大きなものがつくられ,20世紀には数メートルもの口径をもつ望遠鏡がつくられるまでになりました.そして現在,その口径は,ハワイにある すばる望遠鏡 に代表されるように,10メートル前後のものまで建設されています.

 より遠くの暗い天体からの微かな光を調べるために,天文学者たちは大望遠鏡をつくる計画を進めてきました.さらに,人間の目には見えない光,X線や電波といった可視光以外の波長での観測技術も誕生したことにより,今まで想像もつかなかった激しく活動する宇宙の姿や,塵で覆われて見ることができなかった星々の誕生する様子など,目に見えなかったさまざまな現象も観測することができるようになりました.科学の技術が飛躍的に進歩した今,これら地球上の望遠鏡群はもちろん,宇宙に浮かぶ探査機や望遠鏡,そしてコンピュータによるシミュレーションなど,さまざまな“眼”が常に宇宙を見つめています.

 ところで,これらの“眼”は,私たちにもたくさんの情報を送ってくれています.すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡,太陽X線観測衛星「ようこう」などが観測した天体像の写真やビデオを見て,「なんかすごいぞ」と思った人もたくさんいることでしょう.また,運良く天文台へ行く機会があって,実際に“眼”として活躍中の現場を見学する機会に恵まれた方もいるかもしれません.そんな機会に触れ,新しい情報を得るたびに,宇宙への想像力を駆り立て,さらにその情報の奥に潜む“神秘”に惹かれていくのは,きっとみなさんも同じだと思います.

 この本でご紹介する内容は,そんな想像に駆り立てられる興味深い研究ばかりです.さぁ,美しい天体画像を見ることから一歩進んで,実際の研究を覗いてみましょう.そこからわかるさまざまな情報,リアルな研究の一部を,是非みなさんご自身で体験してみてください.そして,大いに想像力を膨らませ,“最新の宇宙”を感じてもらえればと願っています.

 2004年3月

編者を代表して
粟野諭美


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