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【裳華房】 メールマガジン「Shokabo-News」連載コラム 
裳華房 編集子の“私の本棚”

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第7回 数学者 広中先生からのメッセージ

『生きること 学ぶこと』(広中平祐 著,集英社文庫)

 編集者のAです。
 私が学校帰りにぶらっと立ち寄った駅前の書店で本書と出会ったのは、高校2年生のときでした(私の年齢がばれてしまいますが)。その当時、数学が大好きで、大学では数学を専攻したいと考えていた私は(その後、浪人時代に出会った予備校の物理の先生の影響で物理学科に進学しましたが)、「現役の数学者が書いた自伝のようだから、ちょっと読んでみよう」と気軽な気持ちで買ったのですが、読み始めた途端にその内容に魅了され、時が経つのも忘れて一気に読んでしまったことを覚えています。

 ただ、大変失礼な話になりますが、そのときは広中先生のお名前はよく存じ上げませんでしたし、数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞なるものがあること、広中先生がこの賞を受賞した、世界的な数学者であることも全く知りませんでした(広中先生、申し訳ございません)。

 本書の一節で、広中先生は次のように書いています。

『五十年を越える私の人生の大半が数学という学問とかかわってきた。だとすれば、私が語ろうとする人生は、おのずから数学という学問論でもある。学問論などというと、いささか堅苦しい感じだが、この「特異点解消」の研究を一つの頂点とする私の学問・人生をふり返って、「ものを学ぶこと」「ものを創造すること」について、私が知り得たことを語りたいと思う。』

 内容についてあまり詳しく書いてしまうわけにはいきませんが、私は、

・湯川秀樹先生に憧憬を抱いて入学した京都大学でアインシュタインの理論を学び、物理学者になりたいという気持ちを抱きながらも、その数学的な理論に魅せられ、数学に傾倒していったこと
・論文を書くべきか書かざるべきか悩み続けた大学院時代
・数学者としての一歩を踏み出した頃の話
・生涯の師となる恩師との出会い
・後に“広中の電話帳”と言われるようになった、極めて大部のフィールズ賞受賞論文の完成までの話

など、そのどれもが大変興味深いものでした。

 本書は、広中先生の数学者としての単なる自伝ではありません。進路に悩む若い人たち、これから研究者を目指そうという人たち、研究者として一歩を踏み出した人たち、そして現役の研究者の人たちにも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

 なお、当時私が買った集英社文庫(1984年刊)は品切れとなっているようで、
http://bunko.shueisha.co.jp/recommend/mika_16.html
現在では、装丁を新たに、活字も少し大きくなった“新装版”として刊行されています。


【今回ご紹介した書籍】 
生きること 学ぶこと 
  広中平祐 著/文庫判/248頁/定価(本体476円+税)/2011年5月発行/
  集英社(集英社文庫)/ISBN 978-4-08-746702-4
  http://books.shueisha.co.jp/CGI/search/syousai_put.cgi?isbn_cd=978-4-08-746702-4&mode=1


「裳華房 編集子の“私の本棚”」 Copyright(c) 裳華房,2013
Shokabo-News No. 293(2013-10)に掲載 



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