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【裳華房】 メールマガジン「Shokabo-News」連載コラム 
裳華房 編集子の“私の本棚”

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第23回 液体って何だ、固体って何だ

『砂時計の七不思議』(田口善弘 著,中央公論新社)

 編集者のFです。今回は、粉粒体の入門書をご紹介します。

 粉粒体とは、簡単にいうと“小さな粒の集合体”です。例えば砂時計の砂は、砂粒が多数個集まった典型的な粉粒体です。他にも小瓶に入っている食塩や、降り積もった雪も粉粒体といえます。一粒一粒は単なるつぶに過ぎませんが、多数個集まる(=粉粒体)と、奇妙な振舞いが見られます。
 そのような、粉粒体ならではの現象に雪崩が挙げられます。雪崩は、流れているときはまるで液体のようですが、傾斜の緩いところに到達して止まると、“一瞬にして”固体のように固くなります。これは、水を冷却すると、“徐々に”氷に変化する様子と比べると、ちょっと奇妙な感じがしませんか。人間が雪崩に巻き込まれて生き埋めになってしまうのも、この“一瞬で固体になる”という粉粒体の特異な性質のためです。
 このように、粉粒体はまるで液体や固体のように振舞うのですが、それは私たちのよく知っている、物質の液体や固体とは違うということがわかります。

 この他にも、粉粒体は重力に逆らったり、美しい縞模様を作ったり、常識的には考えられないような不思議な振舞いをします。本書は、このような粉粒体にみられる現象の数々を、実験とシミュレーションの結果を用いて丁寧に解説していきます。それを追っていくだけでも充分楽しめるのですが、最終章では「物理学はどこまで理解できるのか」というような深い内容にも触れており、粉粒体を概観するだけにとどまらない構成になっています。
 また、本書では、先ほどの雪崩のような「粉粒体の液体」と「物質の液体」がどのくらい似ているかという点についても考察しています。読み進めていくうちに、恥ずかしながら、私は液体についてあまり知らないということに気づきました。「そもそも液体や固体って一体何だろう?」そんな基本的な事柄についても考えさせられる一冊です。

 残念ながら現在は品切れ中のようで、2007年には電子書籍版が出版されましたが、こちらも現在は入手できないようです。機会がありましたら図書館等でご覧いただければと思います。


【今回ご紹介した書籍】 

砂時計の七不思議 −粉粒体の動力学− 
  田口善弘 著/新書判/198頁/定価(本体660円+税)/1995年10月発行
  中央公論新社(中公新書)/ISBN 978-4-12-101268-5 ※版元品切れ中
 ※下記リンク先は電子書籍版
  http://www.chuko.co.jp/shinsho/2007/10/512638.html


「裳華房 編集子の“私の本棚”」 Copyright(c) 裳華房,2015
Shokabo-News No. 309(2015-3)に掲載 



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