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【裳華房】 メールマガジン「Shokabo-News」連載コラム 
裳華房 編集子の“私の本棚”

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第50回 一万時間の法則

マルコム・グラッドウェル 著『天才!−成功する人々の法則−』(講談社)

『天才!』  編集者πです.
 先日,ある先生が講話で“一万時間の法則”について,述べておられました.読者のみなさまはこの法則をご存知でしょうか.マルコム・グラッドウェル氏は著書『天才!−成功する人々の法則−』でこの法則を紹介しています.さまざまな調査結果を織り交ぜた氏の巧みなフレームワークには独自の面白さがあり,ものの見事に引き込まれてしまいました.早速ですが,本題の“一万時間の法則”について,引用してみましょう.

複雑な仕事をうまくこなすためには最低限の練習量が必要だという考えは,専門家の調査に繰り返し現れる.それどころか専門家たちは,世界に通用する人間に共通する魔法の数字(マジックナンバー)があるという意見で一致している.つまり一万時間である.

 果たして,一万時間とはどれくらいの時間なのでしょう.たとえば,社会人の方でなにか趣味をお持ちならば,仕事が終わってから毎日1時間練習するとしておよそ30年,毎日3時間練習するとしてもおよそ10年はかかる計算です.休日はいつもより多く練習して繰り上げていくなどしても,長い時間がかかります.

 本書では,ある神経学者が以下のように述べています.

作曲家,バスケットボール選手,小説家,アイススケート選手,コンサートピアニスト,チェスの名人,大犯罪者など,どの調査を見てもいつもこの数字が現れる.もちろん,だからと言って,一部の者が他の者よりも,練習から大きな成果が得られる理由がわかるわけではない.だが,一万時間より短い時間で,真に世界的なレベルに達した例を見つけた調査はない.まるで脳がそれだけの時間を必要としているかのようだ.専門的な技能を極めるために必要なすべてのことを脳が取り込むためには,それだけの時間が必要だというように思える。

 練習といってもただ漫然とした態度で臨むのはダメで,具体的で有効性のある内容を,真剣に集中しておこなった場合のことでしょう.指導者について道を誤っていないかフォローを受けた方がよいケースもあります.ときには,軌道修正をはかることもありますが,それを適切に自身が判断できるためにも,まず練習量が必要となってくるように思います.

 一方で,“一万時間の法則”の一万時間という数字にはとくに意味はなく,単なる区切りのよい数字として勝手に独り歩きをしてしまっているといった批判もあるようです.一万時間がすべてに当てはまるかどうかはさておき,個人的な経験に照らし合わせると,なにごとにも程度の差こそあれ,「量質転化」というか,線形的に上手になるというよりは,ある一瞬を境に急にできるようになる臨界点があるように感じます.

 これだけはなんとしてでもできるようになりたい.石に齧りついてでもできるようになりたい.そんな熱意をもって取り組んでいるなにかをお持ちでしょうか.一芸一能を持って,豊かな人生を生きるためにも,日々の積み重ねを大事にしようではありませんか.

【今回ご紹介した書籍】
『天才! −成功する人々の法則−
  マルコム・グラッドウェル 著,勝間和代 訳/
  新書判/320頁/定価(本体1,000円+税)/2014年1月刊行/講談社/
  ISBN 978-4-06-218439-7
  http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062184397
  ※電子書籍版もあります.


「裳華房 編集子の“私の本棚”」 Copyright(c) 裳華房,2017
Shokabo-News No. 340(2017-11-2)に掲載 



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