雑誌『生物の科学 遺伝』 1997年7月号(51巻7号)
B5判 112頁 



【特集1 化石の生物学:パレオバイオロジー/池谷仙之・塚越 哲 企画】
     化石は,生命の進化の歴史を語る唯一の証拠であるが,その情報には大きな制約がある.過去の生物を現代に蘇らせるには,化石を生物としてとらえ,生物学的手法を用いることが重要な意味をもつ.いま,これまでよりさらに生物学的に化石を研究する“パレオバイオロジー”が,広範な現代生物学の領域に対応するさまざまな研究内容を展開している.この分野の多彩な現状を紹介する.

    はじめに:パレオバイオロジーの潮流(池谷仙之)
    生活様式から進化要因を探る−太古のウニの暮らし(金沢謙一)
    生痕化石から何がわかるか−深海生物の生態(小竹信宏)
    化石情報から系統進化を考える−貝形虫類のポア・システム(神谷隆宏)
    時間軸と進化のパタン−貝形虫類にみる異時性(塚越 哲)
    化石の形をシミュレートする−寄生性カサガイの理論形態(岡本 隆・福田恵美)
    マンモスの復活計画−絶滅生物のDNAの研究から(後藤和文)
【特集2 “糖”が開く未来/貝沼圭二 企画】
    食料不足の時代を見据えた澱粉生産の研究,糖質・糖鎖工学プロジェクトの発足,日本の技術がリードする新規糖質の開発など,糖をめぐる研究は最も“熱い”サイエンスの一分野である.糖は生体でどんなはたらきをするのか,なぜ今糖質が注目を集めているのか,どのような可能性を秘めているのか.急速に進む糖質研究でみえてきた“糖”の姿を,さまざまな角度から浮き彫りにする.

    世界の食料生産と糖質研究(貝沼圭二)
    糖質の生体でのはたらき−その制御・利用と展望(渋谷直人)
    新しい糖質とその生理的作用(日高秀昌)
【今月の解説】
    捕食者カイロモンのミジンコ個体群への影響−湖の生物群集におけるケミカル・コミュニケーション(花里孝幸)
    光行動にかかわる新しい光センサー(松岡達臣)

    フグの毒テトロドトキシンは本当に食物由来か?(松村健道)
    フグの毒化機構(野口玉雄)
【トピックス】
    体細胞から“クローン羊”生まれる(入谷 明)
    遺伝子組換えタバコからB型肝炎診断用抗原を作出(岡田吉美)
    植物の陸上化と光呼吸(木崎暁子・竹葉 剛)
    脳細胞のプログラム死の分子機構(杭田慶介)
【連 載】
    連載エッセイ・自然と私/生物科学とバイオテクノロジー(今関英雅)
    江戸東京の自然誌/イワシ漁の不振と干鰯(唐沢孝一)
    植物文化史/ブルーベリー−目の妙薬(臼井英治)
    実験・観察のページ/クズを使った実験と観察(西田謙二)
    ヒトの遺伝をめぐる12の疑問/不妊をめぐって(中込弥男)
    海の向うのワンダーランド−海外調査こぼれ話/熱帯で生態学を面白くする(村井 実)
    実験生物ものがたり/アカハライモリ(駒崎伸二)
    私のメモ/サンゴの骨格中に埋まる生物の年齢推定(西 栄二郎)
    生物ライブラリー/太古の海の記憶―オストラコーダの自然史・老人ボケは防げるか・ダーウィンの時代・植物[ふしぎな世界]



         

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