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裳華房 今月の話題

カメレオンの起源はマダガスカル?

(2002.3.1)

 体色を変化させることで親しまれているカメレオン(爬虫類トカゲ目)は,欧州やインドの一部を除き,その多くがマダガスカル島とアフリカに生息しています.
 マダガスカルはアフリカ大陸の東400kmに位置し,1億数千万年前に大陸から分離し移動を始めたとされる大きな島で,現在世界のカメレオンの半分以上の種が生息しています.

 これまでカメレオンの祖先は,マダガスカルが大陸と分離する以前にやってきたと考えられていましたが,2月14日発売の『Nature』誌にて,マダガスカルが起源の地であるとする研究結果が発表されました.

 この研究は近年進展の著しい分子生物学的手法を用いたもので,52種の細胞のミトコンドリアDNA(母系遺伝をたどるのに有用な分子)を解析し,もっとも古い系統が5000 〜9000年前に現れたマダガスカル産小型種であり,アフリカの種が出現するのは3000〜7000万年前という結果を導きだしました.

 泳ぎの上手でないカメレオンは,当時存在したかもしれないアフリカとの間の陸橋を歩くか,あるいは流木に乗って海を渡るかして,各地に散らばって行った可能性が推測されています.

『Nature』誌に掲載の記事はこちら (会員登録が必要です)


関連書籍・雑誌

●“分子生物学的手法をとりいれた生物地理学”に関する雑誌の特集

『生物の科学 遺伝』 2002年3月号
 特集「生物地理学,分子生物学と出会う −生物地理学の新展開

 さまざまな分子を指標として解析を行うことにより明らかになってきた生物分布をめぐる話題を,日本に生息するさまざまな生物をとりあげて紹介しています.

●分子を用いて生物進化にアプローチする分野“分子系統学”の教科書

『分子系統学』 (岩波書店

 分子進化学の基礎から系統樹推定の統計的手法,実際の適用例に至るまでを解説した1冊.ヒトの起源,脊椎動物の系統,生物の初期進化などの知見も紹介しています.

●マダガスカルの動物についての書籍

『マダガスカルの動物 −その華麗なる適応放散− (裳華房

 多くのカラー写真を添えた,マダガスカルに棲む貴重な動物たちについての解説書です. 自然保護活動の現状も紹介しています.

バイオディバーシティ・シリーズ第1巻 『生物の種多様性』 (裳華房

 生物の多様性をめぐる研究のひろがりを概説した1冊.17章ではマダガスカルの鳥類の華麗な適応放散の研究事例を紹介しています.



         

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