光化学スモッグ
(2002年8月12日更新)
1970年(昭和45年)7月18日, 東京都杉並区で,体育の授業をうけていた高校生が突然目の痛みや頭痛などを訴えて倒れ,40数名が病院へ運ばれました.東京都公害研究所(現在の東京都環境科学研究所)は,その原因を光化学スモッグと断定,このときより光化学スモッグが注目されるようになりました.(7月18日は「光化学スモッグの日」とされています)
自動車や工場などから排出される窒素酸化物(NOx )や揮発性の有機化合物などは,大気中で太陽の強い紫外線(光エネルギー)によって光化学反応を起こし,オゾン,PAN(パーオキシアセチルナイトレート),アルデヒドなどの光化学オキシダント(Ox )を生成します(オキシダントは酸化力の強い物質の総称).
光化学オキシダントは,それ自身が有害であるのみならず,ほかの大気汚染物質の生成にも大きく関与しています.4月から10月にかけて,日差しが強くて気温が高く,また風の弱い日には,この光化学オキシダントが局所的に集中して,白くもやがかかったような状態になることがあり,これを光化学スモッグ(photochemical smog)と呼んでいます.
とくに,太平洋高気圧に覆われる7〜8月は,気温もたいへん高く,また紫外線も強い安定した天気が続くため,光化学スモッグが発生しやすい気象条件になります.各地方自治体では,光化学スモッグが発生したときや発生しそうなときに,予報や注意報を発令しています.
工場に対する大気汚染物質の排出について規制が進んだため,昔に比べて光化学スモッグの発生に気づくことが少なくなりましたが,しかし実際には,自動車からの排気ガスについてはまだ十分な改善がみられてはおらず,毎年,各地で光化学スモッグの注意報などが発令されています.
とくに,ここ数年,注意報の発令回数は増加しており,関東地方では平均の2倍前後の高ペースとなっています.千葉県では,7月4日,全国で18年ぶりとなる光化学スモッグ警報が船橋市,浦安市,市川市など6市で出され(千葉県では28年ぶり),同じく8月1日にも警報が出されました.光化学スモッグの注意報などが発令されたときには,
(1)なるべく屋外へ出ないようにする
(2)屋外での運動などは中止して,屋内へ入る
(3)窓やカ−テンを閉める
など,各自が十分に気をつけることが大事です.環境省では,光化学スモッグによる被害防止のために,2002年6月27日より,携帯電話で光化学スモッグの注意報・警報の発令状況と1時間ごとの大気中濃度を見ることができるサイトを開設いたしました(岩手県,長野県,鳥取県,高知県,沖縄県を除く).
光化学スモッグによる被害としては,目やのどに刺激があり,「目がチカチカする」「涙が出る」「のどが痛い」などの症状が出る場合があります.
そのような症状を感じたときには,屋内に入り,水道水で目を洗ったりうがいをして,最寄りの保健所に連絡するようにしてください.洗眼やうがいでも様子が変わらず,また息苦しさ・胸苦しさを感じた場合には,医師の診察を受けるようにしましょう.ここでは,光化学スモッグに関係するサイトのいくつかを紹介します.
● 書籍 『広域大気汚染 −そのメカニズムから植物への影響まで−』 (ポピュラー・サイエンス199)
若松伸司・篠崎光夫 共著/定価1760円(本体1600円+税10%)/裳華房
大気汚染の基礎から,光化学オキシダントの発生のメカニズム,大気汚染物質の濃度上昇や広域化するしくみ,またオゾンやPANによる農作物や森林などへの具体的な被害や土壌への影響までを,関東地域での具体的な観測や研究結果等をもとに,やさしく解説します.●オンライン書店での 「光化学スモッグ」「大気汚染」 書籍一覧
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光化学スモッグ注意報は,光化学オキシダント濃度の1時間値が0.12ppm以上で,気象条件からみて,その状態が継続すると認められる場合に発令されます.
光化学スモッグ警報は,各都道府県等が独自に要綱などで定めているもので,一般的には,光化学オキシダント濃度の1時間値が0.24ppm以上で,気象条件からみて,その状態が継続すると認められる場合に発令されます.○ 携帯電話等での確認サイト(環境省)
○ (一部)都府県での発令状況
|福島県 |
|埼玉県 |東京都 |神奈川県 |山梨県 |
|福井県 |愛知県 |三重県 |
|滋賀県 |大阪府 |兵庫県 |
○ 大気汚染状況について
光化学オキシダント(Ox ),二酸化窒素(NO2),浮遊粒子状物質(SPM),二酸化硫黄(SO2),一酸化炭素(CO)など主要大気汚染物質別にみた全国の大気汚染の状況について(平成10年〜12年のみ).
○ 大気汚染物質広域監視システム(そらまめ君)
全国の大気汚染状況について,24時間,地方や自治体別に情報を提供しています(試験運用が終了し,今年1月より正式に稼働中).
○ 大気環境 月間値・年間値データ
○ 環境白書
○ 大気圏環境研究領域
国境を越える地球規模の大気環境問題から,都市大気汚染に至るまで,さまざまなスケールの大気圏環境問題に関して,原因となる物質などの動態・性状・反応を解明し予測するための基盤的な研究を行っています.
○ 国立環境研究所ニュース 「大気汚染と都市の大気」
年6回発行されるニュースに掲載された中で,ディーゼル排ガスやそのほかの化学物質による大気汚染,大気の性質に関する記事の一覧です.
●大気汚染に関する法律
○ 大気汚染常時監視関係法令(福井県による)
○ 大気汚染防止法
・概要 (環境省)
・全文 ((財)九州環境管理協会)
●そのほか
○ 大気環境・保健情報センター (公害健康被害補償予防協会)
大気汚染の歴史や現状と対策,最新の低公害車に関する情報,またぜん息・慢性気管支炎・肺気しゅなどの疾患の予防や健康回復に関する情報を提供しています.
・ 大気環境の改善情報館○ (社)大気環境学会
大気環境に関する学術的な調査,研究および地域の普及を図り,大気汚染防止と大気の清浄化のために貢献することを目的として活動する学術団体.
自然科学書出版 裳華房 SHOKABO Co., Ltd.