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裳華房メールマガジン (Shokabo-News)
バックナンバー(No.278)

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  Shokabo-News No.278                2012/9/3
  裳華房メールマガジン 9月3日号
  http://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html

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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今回のご案内 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ◇ 近刊(9月刊行予定)
   『専門課程 物理学実験』『イラスト 基礎からわかる生化学』『光化学』
   物理化学入門シリーズ(『化学結合論』『化学熱力学』『量子化学』)

 ◇ 松浦晋也の“読書ノート”(3) 
    「1960年の民間宇宙開発」

 ◇ 裳華房の“古書”探訪 (5)
    渡邊孫一郎 著『數學諸論大要』(初版 大正10年)

 ◇ 売上げランキング(数学分野,化学分野)

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Shokabo-News 会員の皆様 こんにちは m(_ _)m

 回線故障のため、本号の配信が予定より遅れてしまいましたことをお詫び
申し上げます。誠に申し訳ございません。

 それでは、リニューアルした Shokabo-News の第5号をお届けします.

 裳華房では,この秋より二つの新しいシリーズの刊行を開始します。

 一つは,物理学分野の「量子力学選書」です.

 学部レベルで学ぶ量子力学の知識と,専門分野で最新の論文を読解できる知
識との間を結ぶことを目的に刊行するもので,『経路積分』や『場の理論』,
『多粒子系の量子論』など全8巻を予定しています.
 第一弾として,川村嘉春著『相対論的量子力学』を10月下旬に刊行します.
その内容とシリーズの詳細は,次回9月下旬配信号にて紹介いたします.

 二つ目は,化学分野の「物理化学入門シリーズ」.
 http://www.shokabo.co.jp/series/407_butsurikagaku.html

 基礎物理化学の各分野の教科書として,また改めて学び直したいという方の
ための参考書として,もっとも基本的な題材を選び,できるだけ平易に,懇切
に,しかも厳密さを失わないように解説したものです(全5巻).
 9月下旬に『化学結合論』『化学熱力学』『量子化学』の3点を同時刊行.
各書籍については,今回の「近刊案内」をご参照ください.

 「近刊案内」では,9月刊行予定の他3点もご紹介します。

 一方、連載第3回目となる「松浦晋也の読書ノート」はジョン・R・ピアー
ス著『ピアース自伝』を,また「裳華房の“古書”探訪」では,渡邊孫一郎著
『數學諸論大要』(初版 大正10年)をご紹介します.

 今後も Shokabo-News をご愛読のほど,よろしくお願いいたします.また,
ご意見・ご感想を m-list@shokabo.co.jp までお寄せいただければ幸いです.
(Twitterをお使いの方はアカウント @shokabo まで)


 ★ お知らせ ★

1.「大学・短大・高専用教科書のご案内」
  http://www.shokabo.co.jp/text.html

2.「裳華房 正誤表・訂正表の一覧」
  http://www.shokabo.co.jp/support/errata.html

3.「裳華房 出版原稿受付窓口」
  http://www.shokabo.co.jp/scripts.html
4.数学系の編集者(中途採用・経験者)を募集しています.
  http://www.shokabo.co.jp/recruitment2012.html


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【裳華房 新刊一覧】 http://www.shokabo.co.jp/book_news.html
【ご購入のご案内】  http://www.shokabo.co.jp/order.html
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★★★★★★★★★ 近 刊 案 内 (9月刊行予定!)★★★★★★★★★★★


◆ 『専門課程 物理学実験』

http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-2238-0.htm
高野良紀・植松英穂・浅井朋彦・B.Zulkoskey 編/
A5判/372頁/定価4725円(税込)/裳華房/ISBN978-4-7853-2238-0

 物理学科で学ぶ2年および3年次生を対象とした物理学実験の教科書.
 実験で必要となる原理をできるだけ平易に説明し,学生が実験に対して興味
をもてるように実験テーマにまつわる歴史的な出来事を盛り込みながら解説.


◆ 『イラスト 基礎からわかる 生化学 −構造・酵素・代謝−』

http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5854-9.htm
坂本順司 著/A5判/292頁/2色刷/定価3360円(税込)/裳華房/
ISBN978-4-7853-5854-9

 難解になりがちな生化学を,かゆいところに手が届く説明で指南する入門書.
目に見えずイメージがわきにくい生命分子を多数のイラストで表現し,色刷り
の感覚的なさし絵で日常経験に結びつける.なじみにくい学術用語も,ことば
の由来や相互関係からていねいに解説する.


◆ 『光化学 −光反応から光機能性まで−』

http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3089-7.htm
杉森 彰・時田澄男 共著/A5判/242頁/定価2940円(税込)/裳華房/
ISBN978-4-7853-3089-7

 『化学新シリーズ 光化学』をベースに,光物性・光機能性を大幅に加筆し
て編み直した.光化学の基礎(励起状態の化学)を十二分に踏まえつつも,光
ディスクやルミネッセンス,ホログラフィー,レーザーなど,時代をリードす
る光化学の現状を鮮やかに描き出した基礎光化学の教科書・参考書.


  ◇◇◇ 新シリーズ 刊行開始! ◇◇◇

◆ 『物理化学入門シリーズ 化学結合論』

http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3417-8.htm
中田宗隆 著/A5判/194頁/定価2205円(税込)/裳華房/
ISBN978-4-7853-3417-8

 物理化学のみならず,無機化学・有機化学等すべての化学分野の基礎知識で
ある化学結合を,量子論の基礎をふまえつつ,包括的かつ系統的に楽しく学べ
る快著.化学結合の全体像の美しさを知ることによって,化学の真髄にふれる
ことができる.

◆ 『物理化学入門シリーズ 化学熱力学』

http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3418-5.htm
原田義也 著/A5判/212頁/定価2310円(税込)/裳華房/
ISBN978-4-7853-3418-5

 初学者を対象に,化学熱力学の基礎を,原子・分子の概念も援用してわかり
やすく丁寧に解説している.また,数式の導出過程も省略することなく詳しく
記してあるので,式を一歩一歩たどることで,とかくわかりづらい化学熱力学
の諸概念を,論理的に正確に理解することができる.

◆ 『物理化学入門シリーズ 量子化学』

http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3419-2.htm
大野公一 著/A5判/264頁/定価2835円(税込)/裳華房/
ISBN978-4-7853-3419-2

 量子論の誕生から最新の量子化学までを概観し,量子化学の基礎となる考え
方や技法を,初学者を対象に丁寧に解説.根本的に重要でありながらあまり説
明されてこなかった事項や,応用分野に役立つ事項を含めつつも題材を精選し,
量子化学の最重要事項を学べるよう工夫されている.


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【裳華房 分野別書籍一覧】 http://www.shokabo.co.jp/mybooks/0000.html
【正誤表などサポート情報】 http://www.shokabo.co.jp/support/
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★★★★★★ 【新連載】松浦晋也の“読書ノート” (第3回) ★★★★★★

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 ノンフィクション・ライター/サイエンスライターの松浦晋也さんと鹿野司
さんに,お薦め書籍や思い出の1冊,新刊レビュー等をご執筆いただきます.
今月号のご担当は松浦晋也さんです.
 ・バックナンバーはこちら→ http://www.shokabo.co.jp/column/
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◇ 1960年の民間宇宙開発 ◇

◆『ピアース自伝』(ジョン・R・ピアース 著,日経サイエンス社)

 2012年5月25日、米宇宙ベンチャーのスペースX社が開発した、「ドラゴン」
貨物輸送船が、国際宇宙ステーション(ISS)に初めてドッキングした。ドラ
ゴンは5月31日にISSから分離し、大気圏に再突入して無事に着水に成功した。
このような民間宇宙船がISSにドッキングするのはこれが初めてだった。
 ドラゴンはNASA(アメリカ航空宇宙局)からの補助金を受けてスペースX社
が開発した。開発の主体はスペースX社であり、設計も製造も全責任はスペー
スX社にある。
 アメリカは現在、地球周辺の宇宙空間については、有人宇宙活動も含めて民
間がサービスを提供できるような基盤を作ろうとしている。NASAは、無人貨物
船開発への補助金計画COTS(Commercial Orbital Transportation Services)と、
有人宇宙船開発への補助金計画C3PO(Commercial Crew and Cargo Program。余
談だが旧計画名はCCDev:Commercial Crew Developmentといった。明らかにス
ターウォーズを意識した命名だろう)を動かしており、ドラゴンはCOTSの資金
提供を受けて開発された。もう一機種、オービタル・サイエンス社(OSC)の
「アンタレス」貨物輸送船もCOTSの資金によって開発中で、こちらは2012年中
に最初の打ち上げを行う予定になっている。
 C3POは、第1ラウンド、第2ラウンドとステップを踏んで補助金の額を増や
しつつ応募者をふるい落としていくというラウンド制を採用しており、最新の
第3ラウンドでは、スペースX(4億4000万ドル)、ボーイング(4億6000万ドル)、
防衛系電子機器メーカーのシエラネバダ・コーポレーション(2億1250万ドル)
の3社が補助金を獲得した。単独メーカーに億ドル規模の補助金をぽんと出す、
それも3社に対して同時に――というのは日本では考えられない大盤振る舞い
の産業政策だが、それでもNASAがイニシアチブをとって有人宇宙船を開発する
よりもトータルでは安く付くと見積もられているわけである。
 今のところ莫大な補助金というひもはついているものの、宇宙に行くのに国
が莫大な資金を投入する時代から、自動車のように民間が自らの意志で宇宙船
を開発し、商業サービスを実施していく時代へ――徐々にではあるが歴史はそ
の方向に動いているようだ。

 ところで宇宙開発黎明期の1960年代初頭、アメリカでは民間による自発的な
宇宙開発の芽生えが存在した。最初期の通信衛星の開発を主導したのは、国家
ではなくAT&Tという私企業だったのである。
 アメリカ電信電話(AT&T)は1877年に電話の発明者であるグラハム・ベルが起
こした会社だ。アメリカ国内で電話関連機器から電話サービスまでにいたるす
べての事業を独占する巨大企業であり、同時にベル研究所(後のAT&Tベル研)で
は先進的な技術開発を行う革新的な技術志向メーカーでもあった。トランジス
タ、レーザー光線、UNIXオペレーティングシステム、C言語など、ベル研発の
革新的技術は数多い。
 「ピアース自伝」は、そのベル研で初期の通信衛星開発を指揮した技術者、
ジョン・ロビンソン・ピアース(1910〜2002)の自伝だ。彼は第二次世界大戦中、
ベル研で真空管の開発に携わっていたが、大戦終結後にアメリカがナチス・ド
イツから接収したV2号ミサイルを打ち上げたことから、通信衛星の実現を本気
で考え始めた。赤道上空3万6000kmの静止軌道が通信衛星にとって好適である
ことを初めて指摘したのは、SF作家のアーサー・C・クラークだったが、ピア
ースもまたJ・J・カップリングというペンネームでSF小説を発表する兼業作家
だった。彼は、クラークとは独立に静止軌道の概念にたどり着いてもいる。柔
軟な思考の持ち主だったのだ。
 ベル研の技術者という地位を利用して、彼は通信衛星の実現を訴えるが、世
間はなかなか相手にしなかった。そこに1957年10月4日、ソ連によるスプート
ニク1号打ち上げという一大イベントが起きる。この時のショックをピアース
は「推理作家が帰宅したら居間に死体が倒れていた」と回想している。
 通信衛星の実現が、アメリカにとって緊急の課題として浮上したが、そもそ
もそれまで存在したことのない通信衛星という機器がどんなものであるべきか
というコンセプトを持っている者はピアース他ほんの少ししかいなかった。彼
の出番である。AT&T上層部や政府への働きかけから、技術的課題の解決まで、
ピアースは通信衛星に関するありとあらゆる分野に顔を出し、実現に向けて精
力的に動いた。
 最初の衛星「エコー1」(1960年8月12日打ち上げ)は、直径30.5mの風船だっ
た。表面にはアルミが蒸着してあってマイクロ波を反射する。ジェット推進研
究所(JPL)のプロジェクトとして実施されたが、技術的裏付けは、ピアースが
1950年代初頭に自分のSF小説のために行った反射電波強度の計算にそのルーツ
があった。
 エコーからの電波受信用にピアースは、衛星追尾可能な巨大なホーン型アン
テナを開発した。なお、アーノ・ペンジアス(1933〜)とロバート・W・ウィル
ソン(1936〜)は1964年に、このアンテナの雑音を減らす研究を行っている最中
に、ビッグバンの確たる証拠である宇宙背景輻射を発見している。
 エコーは、ただ電波を反射するだけだったが、次の「テルスター」は違った。
受信した電波信号を増幅し、また別の周波数で地上に送り返す、トランスポン
ダーという機器を搭載したのだ。テルスターこそはすべての通信衛星のルーツ
だった。
 1962年7月10日、ソー・デルタロケットで「テルスター1号」が打ち上げられ
た。重量80kgのほぼ球形。軌道傾斜角44.8°、近地点高度952km、遠地点高度
5654kmの軌道に投入され、アメリカとフランスの間でテレビ中継を実現した。
連続中継可能時間は、衛星が上空にいる20分間だけだったが、世界初の衛星テ
レビ中継だった。中継に使われた画像は、ニューヨークの自由の女神とパリの
エッフェル塔だった。
 世界初の本格的通信衛星だったテルスター1号は、当時世界に大きなインパ
クトを与えた。スプートニク1号が、頭上に拡がる宇宙という存在を人々に知
らしめたとすれば、テルスターは、宇宙技術で生活がより便利になるというこ
とを宇宙中継という形で示した。The Tornadosというバンドは、その名も
「Telstar」という曲をリリースした。エレキ系楽器を多用した明るく律動的
な曲で、「スペースサウンド」「スペースロック」などと呼ばれた。この曲は
アメリカとイギリスでヒットチャートの1位を獲得し、ベンチャーズをはじめ
とした様々なバンドがカバーするほどだった。
 が、そういった社会的影響にもまして注目すべきは、テルスターがAT&Tとい
う企業の宇宙計画であったということである。確かにAT&Tは、巨大な独占企業
ではあった。また、テルスター実現にあたっては、アメリカ、イギリス、フラ
ンスの三国が技術開発のための多国間協定を結んでいる。が、衛星開発のコス
トを支払ったのも衛星の所有権を持ったのも、国家ではない一企業のAT&Tだっ
た。世界初の本格的通信衛星を打ち上げて運用したのは、国家ではなく民間企
業だったのである。
 歴史にIfはないというが、もしもテルスター計画が順調に継続していたなら
ば、宇宙空間への民間企業の進出は20年以上早く進んだかも知れない。テルス
ター打ち上げはNASAが請け負ったが、AT&Tは打ち上げ費用として350万ドルを
NASAに支払っている。ひょっとすると1960年代に、民間の衛星を民間のロケッ
トが打ち上げる世界があり得たのかも知れない。
 しかし実際にはそうはならなかった。それどころか1962年7月10日の打ち上
げ時点において、AT&Tの事業としてのテルスター計画はすでに死に体状態にな
っていた。
 1961年5月、大統領就任直後のジョン・F・ケネディ大統領は国家主導の国際
衛星通信組織を設立するという政策を発表した。新設する組織は民間組織であ
るが国際衛星通信を独占的に実施するとしていた。後のインテルサットである。
アメリカとソ連が冷戦という名の刃を交えない戦争を戦っていた当時、民間企
業が野放図に国際通信サービスを提供することは好ましくないと判断されたの
である。
 テルスター打ち上げから3週間後の8月1日、米議会で「1962年通信衛星法」
が可決された。同法に従って、インテルサットのアメリカ代表となるCOMSAT社
が政府出資によって設立され、これをもってAT&Tとピアースの宇宙への挑戦は
終わった。テルスター1号は故障により1963年2月21日に運用を終了し、同年5
月7日にはより大型(重量176kg)の「テルスター2号」が打ち上げられた。しか
し、テルスター2号はAT&Tにとって、うまくいかなかった事業の残務整理だっ
た。よほどくやしかったのか、ピアースはこのあたりの経緯を「私が実際に衛
星に関係した日をたどってみると、1957年10月4日のスプートニクの打ち上げ
から、1962年8月1日の通信衛星法の議会通過まででした。」(本書41ページ)と
のみ記述している。
 国際衛星通信が民間に開放されるのは、20年以上を経てレーガン政権が大規
模な規制緩和を実施した後のことである。

 さて、その後のピアースはといえば、1970年にベル研を退職。ジェット推進
研究所の主任技術者やスタンフォード大学の研究員などを歴任し、のびのびと
研究生活を楽しんで生きた。スタンフォードでは、コンピューターを使って音
楽の分析を行うCCRMAという組織に所属し、その研究成果は「音楽の科学」(邦
訳は日経サイエンス社)にまとめられている。彼にとって一世一代の大勝負で
あったテルスターはビジネスの果実を結ばなかったが、世界初の本格的通信衛
星という栄誉を得た。興味の赴くままに最先端を駆け抜けて92歳の天寿を全う
した、幸福な人生だったといえるだろう。


◆『情報・通信工学のパイオニア ピアース自伝 −技術者として生きた50年』
  ジョン・R・ピアース 著/猪瀬 博・ 井上 如 訳/B6変形判/221頁/
  定価1580円(税込み)/1988年4月発行/ISBN978-4-532-06269-9/
  日経サイエンス社 (品切れ中)


【松浦晋也さんのプロフィール】
ノンフィクション・ライター.1962年東京都出身.現在,PC Online に「人と
技術と情報の界面を探る」を連載中.主著に『われらの有人宇宙船』『増補 
スペースシャトルの落日』『恐るべき旅路』『コダワリ人のおもちゃ箱』など
がある.ブログ「松浦晋也のL/D」 http://smatsu.air-nifty.com/


      「松浦晋也の“読書ノート”」 Copyright(c) 松浦晋也,2012


 次号は鹿野 司さんにご執筆いただきます.どうぞお楽しみに!


※本コラムは本メール配信約1か月後を目安に裳華房Webサイトに掲載します.
http://www.shokabo.co.jp/column/


★★★★★★ 【連載コラム】裳華房の“古書”探訪(第5回)★★★★★★★

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 弊社の起源は,江戸時代,伊達藩の御用板所であった「仙台書林 裳華房」
に遡ります.ここでは,科学書の出版に力を入れ始めた大正時代から昭和時代
に刊行された書籍の中から毎回1冊ずつ取り上げて紹介いたします.
【バックナンバー】 http://www.shokabo.co.jp/oldbooks/index.html
【裳華房の歴史】  http://www.shokabo.co.jp/history.html
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◆ 渡邊孫一郎 著『數學諸論大要』(初版 大正10年)

 江戸時代に刊行された『早割日用算法記』(1805年;九九、割り算、米穀の
相場割などの解説)や,明治期に刊行された『實用森林數學』(1905年;詳細
不明)などの実用的なものを除き,裳華房における数学分野の“先駆け”とな
ったのが,今回ご紹介する『數學諸論大要』です.
 旧制高等学校の高等科文科(またはそれと同程度の学校)における教科書と
して著されたものです.

 本書が刊行された当時は,文科系の高等教育の数学において,具体的にどう
いう項目内容を教授するのかはとくに決まっていなかったようで[*1][*2],
本書の緒言に

  ……此種學生ニ適スル参考書ノ一ツモ存セザル現時ノ状態ニ於テハ……

  http://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1921watanabe-suugaku/intro.pdf
   #画像は大正11年発行の訂正再版より(以下同様).

とあるように,文科の学生に対する教科書・参考書はまだなかったようです.

 本書の特徴として,同じく緒言に

  高等數學ノ使命ノ一ツハ學生ヲシテ函數ノ概念ヲ明確ニ會得セシムル……

と述べているように,文科系の学生であっても関数に対するきちんとした知識
の会得を望んでいたようです.
 教え方順序としては,当時一般的な,対数→三角法→解析幾何→微分積分,
では無く,まず座標幾何学から入り,空間幾何学,一般の関数,特別の関数
(三角関数,対数関数など),順列・確率という流れで本書を構成しています
(目次参照)[*3].

 文章はきわめて簡潔・平易で,余計な記述がなく[*4],学生にわかりやす
く,教える側に使いやすい教科書だったようで,渡邊が理科系学生のために執
筆した『新編高等代數學』(1923年),『初等解析幾何學』(1929年),『初
等微分積分學』(1930年)(以上いずれも裳華房刊)等とあわせて一世を風靡
したようです.

 著者の渡邊孫一郎(まごいちろう)は,明治18年(1885年)栃木県に生まれ,
東京帝国大学理科大学を卒業後,第八高等学校,第一高等学校,東京商科大学
(現在の一橋大学),東京物理学校(現在の東京理科大学),東京工業大学な
どの教授を歴任されています.
 第一高等学校の教授時代から教員検定委員会や教科用図書調査などの嘱託や
文部省視学委員等に就き,また現在の日本数学教育学会の母体となった日本中
等教育数学会の設立に奔走する(後に会長)など,数学教育の発展につくされ
ました.
 また,東京理科大学の名誉教授の称号を最初に授けられたのが渡邊先生です.
 裳華房からは,上述のほかに,『高等数学初歩』(1939年),『代数学撰要』
(1948年),『數學大要』(1950年),『初等解析學』(1957年)など,数多
くの書籍を出版しています.


[脚注]
 *1 大正8年の文部省令「高等学校規定」では,「数学ハ文科ニ在リテハ数
   学諸論ノ大要ヲ授ケ理科ニ在リテハ代数、立体幾何、三角法、初等解析
   幾何、初等微分積分及初等力学ヲ授クヘシ」とあります.
 *2 本書刊行の翌年,高等学校高等科文科数学担当者会議が開かれ,教授要
   目が決議されたようで,本書の第四版の緒言には,この要目に「準據セ
   ンコトヲ努メタ」との記載があります.
 *3 ただし試行錯誤であったようで,本書の第四版では空間幾何学を冒頭に
   移しています.
 *4 教科書だけでなく,講義も同じような感じだったようで,東京物理学校
   で解析幾何を習った船山良三氏によれば「本当に無駄のない授業で,初
   めから終わりまで同じ調子で話されて,そしてわかりやすい講義でした.
   何か教科書を読んでいるのと同じような無駄のない…….」と述べてい
   ます(「日本数学教育学会誌」56巻3号所載「第4代会長 渡辺孫一郎先
   生の思い出」より).


◆『數學諸論大要』
  渡邊孫一郎 著/菊判/240頁/大正10年(1921年)3月発行/裳華房

【目次】
坐標幾何學/空間幾何學/凾數ト導凾數/三角凾數及ビ逆三角凾數/指數凾數
及ビ對數凾數/基凾數ト定積分/順列,組合及ビ確率  附録(問題ノ答/和
英獨對照述語表/索引)
  http://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1921watanabe-suugaku/mokuji.pdf

【本文(抜粋24頁分)・対照述語表・奥付の見本】
  http://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1921watanabe-suugaku/sample.pdf

※記述の誤りなど,お気づきの点がありましたら m-list@shokabo.co.jp まで
 御連絡ください.


───【裳華房のお役立ちサイト】───────────────────

◎ 2012年 研究所等の一般公開(8/22 更新)
http://www.shokabo.co.jp/keyword/openday.html

◎ 2012年 学会主催 一般講演会・公開シンポジウム(8/24 更新)
http://www.shokabo.co.jp/keyword/openlecture.html

◎ 2012年 若手 春・夏・秋・冬の学校(8/15 更新)
http://www.shokabo.co.jp/keyword/wakateschool.html
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★★★★★★ 裳華房 売上げランキング(2012年6〜7月) ★★★★★★★★

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 分野別の直近2か月の売上げランキングです(2分野ごとを隔月に掲載).
なお,採用品としての注文分は除いています.
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★ 数学分野 ★

1.『曲線と曲面の微分幾何(改訂版)』 小林昭七 著
 http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1091-2.htm

2.『数学選書4 ルベーグ積分入門』 伊藤清三 著 
 http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1304-3.htm

3.『微分積分(改訂版)』 矢野健太郎・石原 繁 編
 http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1071-4.htm

4.『数学シリーズ 集合と位相』  内田伏一 著
 http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1401-9.htm

5.『基礎解析学コース ベクトル解析』 矢野健太郎・石原 繁 共著 
 http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1094-3.htm


 ★ 化学分野 ★

1.『高分子合成化学(改訂版)』 井上祥平 著  
 http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3087-3.htm

2.『化学の指針シリーズ 錯体化学』  佐々木陽一・柘植清志 共著
 http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3224-2.htm

3.『量子化学(上)』 原田義也 著
 http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3073-6.htm

4.『化学熱力学(修訂版)』 原田義也 著 
 http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3065-1.htm

5.『化学英語の手引き』 大澤善次郎 著  
 http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3061-3.htm

 次号では,物理学分野,生物学分野を掲載する予定です.

───【裳華房のお役立ちサイト】───────────────────

◎ 自然科学系の雑誌一覧 −最新号の特集等タイトルとリンク−
http://www.shokabo.co.jp/magazine/ 

◎ 大学・研究所・学協会の住所録とリンク
http://www.shokabo.co.jp/address.html
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 次号は,9月27日の配信予定です.どうぞお楽しみに! \\(^o^)//


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