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裳華房メールマガジン (Shokabo-News)
バックナンバー(No.331;2017年1月号 2016年下半期分野別売上げランキングほか)

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆   Shokabo-News No.331                2017/1/16   裳華房メールマガジン 2017年1月号   http://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ★目次★ ─────────────────────────────────── 【1】新刊案内『ゲノム編集入門』 【2】近刊案内『健康寿命を延ばそう!機能性脂肪酸入門』        『新しい教養のための生物学』『これからの爬虫類学』 【3】連載コラム 松浦晋也の“読書ノート”(27):    『阿片と大砲 −陸軍昭和通商の7年−』(山本常雄 著,PMC出版) 【4】連載コラム 裳華房 編集子の“私の本棚”(44):    『確率論と私』(伊藤 清 著,岩波書店) 【5】裳華房の分野別売上げランキング(2016年下半期) 【6】お知らせ&編集後記 ─────────────────────────────────── 【謹賀新年】本年もどうぞよろしくお願いいたします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【1】新刊案内(2016年12月刊行) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●『ゲノム編集入門 −ZFN・TALEN・CRISPR-Cas9−』 http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5866-2.htm 山本 卓 編/A5判/240頁/3色刷/定価(本体3300円+税) 2016年12月発行/裳華房/ISBN978-4-7853-5866-2 C3045  人工DNA切断酵素の作製が煩雑で難しかったため限られた研究での利用に とどまっていたゲノム編集は,新しい編集ツールであるCRISPR-Cas9の出現に よって,誰もが簡便に効率よく広範囲に利用できるものへと大きく変わった.  有用物質を作る微生物の作製,植物や動物の品種改良や創薬に必要な疾患モ デルの細胞や動物の作製,さらにはがんを含む病気の治療への利用など,ゲノ ム編集は,基礎研究の分野のみならず,産業や医療での分野においても世界中 で研究が進められている.  本書は,「ゲノム編集の基礎を勉強したい」「さまざまな生物でこの技術を 使うメリットがどこにあるのかを知りたい」「産業や医療における有用性を知 りたい」と考える初心者を対象にした,国内初のゲノム編集の入門書である. 微生物から植物,さまざまな動物でゲノム編集技術を開発してきた国内の研究 者が,従来の改変技術とゲノム編集の技術を紹介し,ゲノム編集の可能性につ いてわかりやすく解説する. 【主要目次】 ゲノム編集の基本原理/CRISPR の発見から実用化までの歴史/微生物でのゲ ノム編集の利用と拡大技術/昆虫でのゲノム編集の利用/海産無脊椎動物での ゲノム編集の利用/小型魚類におけるゲノム編集の利用/両生類でのゲノム編 集の利用/哺乳類でのゲノム編集の利用/植物でのゲノム編集の利用/医学分 野でのゲノム編集の利用/ゲノム編集研究を行う上で注意すること 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【裳華房 新刊一覧】 http://www.shokabo.co.jp/book_news.html 【ご購入のご案内】  http://www.shokabo.co.jp/order.html 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2】近刊案内(2017年2月刊行予定) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ※詳細は次号でご案内します。 ●『健康寿命を延ばそう!機能性脂肪酸入門     −アルツハイマー症、がん、糖尿病、記憶力回復への効果−』 彼谷邦光 著/A5判/168頁/定価(本体2300円+税)/ 2017年2月発行予定/裳華房/ISBN978-4-7853-3512-0 C3043 ●『新しい教養のための 生物学』 http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5234-9.htm 赤坂甲治 著/B5判/168頁/3色刷/定価(本体2400円+税)/ 2017年2月発行予定/裳華房/ISBN 978-4-7853-5234-9 C3045 ●『これからの爬虫類学』 松井正文 編/A5判上製/294頁/定価(本体4500円+税)/ 2017年2月発行予定/裳華房/ISBN978-4-7853-5867-9 C3045 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【裳華房 分野別書籍一覧】 http://www.shokabo.co.jp/mybooks/0000.html 【正誤表などサポート情報】 http://www.shokabo.co.jp/support/ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【3】[連載コラム]松浦晋也の“読書ノート” (第27回) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ノンフィクション・ライター/サイエンスライターの松浦晋也さんと鹿野司 さんに,お薦め書籍や思い出の1冊,新刊レビュー等をご執筆いただきます. 今月号のご担当は松浦晋也さんです.  ・バックナンバーはこちら→ http://www.shokabo.co.jp/column/ ─────────────────────────────────── ◆ 日本陸軍のために存在した商社と阿片ビジネス ◆ ● 山本常雄 著『阿片と大砲 −陸軍昭和通商の7年−』(PMC出版)  星一から始めた阿片関連の読書がすっかり面白くなってしまい、図書館から 本を借りてはああだこうだと読み進めている。  阿片は習慣性と毒性とで消費者を地獄に叩き込み、社会を衰弱させる一方で、 その習慣性故に供給者には確実な利益を約束する。「確実な破滅を供給しつつ 確実な利益を約束する」のだから、阿片ビジネスはその時々の人間社会の倫理 のありようを反映することになる。  阿片を商うということは、「他人を踏みつけにして良い理屈を、その組織や 社会が持っている」ことを意味する。第二次世界大戦の敗戦を迎えるまでの日 本は、政府機関が裏金のために阿片を商っていたのだから、おせじにも時代を 超えた倫理性を備えた組織・社会であるとはいえない。つまり阿片を調べてい くと、「とても格好悪くて、倫理的とは言えない昔の日本」が見えてくる。  ただし、立派ではない倫理感覚が通用した背景には、その時代の社会状況が 横たわっていることも忘れてはいけないだろう。  山本常雄著『阿片と大砲』は、タイトルに「阿片」と入っているというだけ で読んだのだが、阿片に限らず、自分にとっては非常に衝撃的な本だった。  本書の副題は「陸軍昭和通商の7年」という。昭和通商とは何か。  多くの人は軍隊の本質は破壊力だと思っているが、実際は違う。軍隊の本質 は情報と輸送であり、その2つを支えるのは科学技術である。  情報を集めて的確に判断し必要な物資を必要な場所に運ぶという意味では、 軍隊と宅配便は同じだ。ただ、最後の最後に起きる事象が、受取人のサインか、 破壊か、というところだけが異なる。  そう考えると、軍が専門の商社を持つというのは必然とも言えるだろう。昭 和通商は、昭和14年に、三井物産、大倉商事、三菱商事の出資で設立された 「日本陸軍のために活動する商社」だった。陸軍の命を受け、陸軍が必要とす る物資を世界中から調達する機能を持つ。調達にあたっては、出先に駐留する 陸軍から可能な限りの便宜を図ってもらえるという権限を持たされていた。ア ルミニウム、タングステン、ニッケルなどの戦略物資から、食料、さらには陸 軍が必要とする労働力を現地住民から手配するなど、陸軍が必要とするすべて のものを、昭和通商は調達した。  自分の無知さを恥じるしかない。こんな会社がかつて存在したことを、私は 知らなかった。  著者は昭和17年9月に、戦時半年繰り上げで早稲田大学を卒業し、体に不具 合があったので徴兵されずに昭和通商に入社。新人の3年間を昭和通商社員と して数奇な体験をする。戦後、自分の働いた昭和通商とはどんな会社だったの かという疑問を持ち、かつての同僚、先輩などの証言を得て、本書を上梓した。  まずは歴史的経緯をまとめよう。  日露戦争で、日本の軍需産業は一気に発達した。その結果、日露戦争後、日 本は兵器の在庫過剰、生産能力過剰に陥った。次に起きるのは何か。  兵器の輸出だ。せっかく投資したのだから、輸出で儲けねば話にならない。 ではどんな組織が、どこに輸出するべきか。  「商社が専門の組合を作って、主に中国の軍閥に輸出すればいい」とアイデ アを出したのは、東京砲兵工廠製造所の所長を務めていた南部麒次郎(1869〜 1949)だった。南部大型自動拳銃に代表される国産銃火器開発に功績があった 人である。その名前は今も警察などが使用するニューナンブピストルに残って いる。  かくして三井物産、大倉商事、高田商会の出資で、明治41年に泰平組合とい う組合組織が結成される。国策といって良いレベルで、日本は日露戦争後の中 国に兵器を押し込み販売していたのだ。  大正の末には、高田商会が経営破綻して脱落。その後、高田商会に代わって 三菱商事が入り、昭和14年に設立されたのが昭和通商だ。  昭和通商は、対米戦を想定して、泰平組合よりも緊密に陸軍と連携する商社 だった。同社設立のシナリオを書き、主導したのは陸軍省軍事課長だった岩畔 豪雄(いわくろ・ひでお:1897〜1970)である。岩畔は日本陸軍の諜報活動を 束ねた大立者で、諜報関係者を養成する陸軍中野学校や、風船爆弾や細菌兵器 の研究開発を行った登戸研究所の設立者でもある。一言で説明すれば、日本陸 軍のインテリジェンスの親玉というべき人物だ。  ここで驚くべきは、岩畔は単なるスパイの親分ではなく、昭和通商のような 物流を司る組織と、登戸研究所のような軍事技術開発拠点を立ち上げたことで ある。戦争遂行の勘所が、情報と物資輸送の2つにあり、その基礎は科学技術 にあると、彼にははっきりと分かっていた。  昭和通商は、物資の調達だけではなく、情報収集にも便利な組織だった。現 在も世界を股に掛ける商社は優秀な情報収集機能を持っているが、昭和通商も 同様だった。昭和通商には軍人や役人だけではなく、民間の商社員、ジャーナ リスト、さらには科学者、人文科学研究者までもが関係しており、昭和通商を 使ってそれぞれに情報収集を行った。陸軍から最大限の便宜を図ってもらえる ので、ジャーナリストや研究者にとっても昭和通商は便利な存在だったのであ る。  本書は、昭和17年から20年にかけて、昭和通商で働くということが具体的に どのようなものであったのかを、当事者の証言を通じて詳細に記述していく。 現地の陸軍部隊の中には、昭和通商を知らない者もいた。「民間人が軍人に指 図するとは何事か」という声を、「昭和通商だ」の一言でぶっちりぎりながら 社員は仕事を遂行していく。敗色が濃くなると、戦闘に巻き込まれて死亡する 社員も出てくる。本書にフィリピンにおける敗戦の中で社員がどのように行動 し、あるいは生き残りあるいは死んだかを記述している。  さて、本書に記載されているアヘン関連の話題は主に2つだ。  まず、昭和51年4月25日付け読売新聞スクープの引用として、児玉誉士夫が 昭和通商の依頼を受けて昭和15年と16年の2回にわたってそれぞれ70〜80万円 相当のヘロインを買い付けたという話。このヘロインは昭和通商によって物々 交換でタングステン買い付けに使われたとのこと。著者はこの記事によって、 かつて自分が在籍していた昭和通商が麻薬商売もしていたことを知った。昭和 通商の阿片ビジネスは、会社内でも一部の者のみが知る秘密だったのである。  もう一つは著者が集めた元昭和通商社員の阿片流通に関する具体的な証言だ。  吉林など満州の数カ所に陸軍直轄(!)の阿片ケシ栽培所があったこと。ひ ょっとすると前回取り上げた『戦争と日本阿片史 阿片王 二反長音蔵の生涯』 の主人公の二長反音蔵が、ケシ栽培の指導に訪れた満州の村というのは、陸軍 直轄だったのかも知れない。  阿片は主に、物々交換による戦略物資入手と、現地住民の宣撫用、そして医 療用に使われたこと。  精製は住友系の大日本製薬という会社が行い、それとは別に流通には参天製 薬も参加していたこと(そう、精製の利得を享受したのは、先行して技術開発 を行った星製薬ではなかった。ちなみに大日本製薬は、戦中から戦後にかけて 疲労回復薬「ヒロポン」も生産していた。言わずと知れた覚醒剤である)。  日本陸軍は当初賭博による闇資金調達を画策したが、さすがに軍が賭場を開 くわけにいかず、阿片に手を出したこと――賭場の開帳まで考えていたという 陸軍の没義道振りには恐れいる。  阿片を使った物資調達や宣撫は、「高貴薬工作」と称されていたこと。ほと んどの場合、阿片は未精製のものを石油缶に詰めて取引されたこと。  「当時はクーリーには塩と阿片が不可欠だった」というような生々しい証言 も出てくる。中国大陸においては塩と阿片がなければ、労働力を集めることは できなかったのだ。  さらに、戦後の怪談に近いような話も飛び出す。元昭和通商・海老沢秀行氏 が証言する、「持ち帰られた阿片8トン」の話だ。  昭和20年8月9日のソ連参戦後、満州にあった阿片12トンを国内に持ち帰る 計画が動き、敗戦後の9月2日に8トンの阿片が唐津に水揚げされた。目減り した4トンは阿片流通の過程における地方有力者への“心付け”に使われたら しい。出荷者は関東軍、受取人は厚生省が指定されていたが、敗戦後の混乱で 厚生省への問い合わせには返事がない。米軍が進駐してくる中、阿片は厄介者 扱いされ、神戸へたらい回しとなる。神戸港も阿片の水揚げを拒否し、船は和 歌山港に向かう。和歌山で阿片の存在が酔いつぶれた船員経由で朝日新聞記者 に漏れて記事になり、進駐軍の手が入って関係者は逮捕され、海老沢氏をはじ めとした全員が実刑となった。  ここで問題なのは、阿片の行方。和歌山でトラックに積みかえられた阿片8 トンは進駐軍の待つ東京へと輸送されたが、途中トラックごと消えた。後に箱 根山中で乗り捨てられたトラックが発見されたが、阿片はなかった。運転手も、 監視役として乗り込んでいたはずの米軍兵士も消え失せた。  敗戦後の混乱の中で、何者かが強奪したのである。おそらくは計画的に。  8トンの阿片には莫大な価値があったことは間違いない。この阿片を誰が手 に入れ、どこで換金し、どのようにその金を使ったか。これは戦後秘史に関係 する重大事だと思うが、本書にはその後についての情報は記載されていない。  本書のしめくくりは、著者がたどった戦後の過酷な引き揚げの状況だ。著者 は昭和20年5月に帰国して結婚。そのまま日本にいろ、いずれ日本は負けるか ら、という周囲の声を振り切り、新妻を連れて満州に戻ってしまったのだ。仕 事への責任感からだった。ここでも「いずれ日本は負けるから」という声があ ったことから、昭和通商の持っていた情報網の確かさがうかがい知れる。  そこからの過酷な引き揚げの状況は本当に涙が出る。その過程で妻は体を壊 し、帰国後に死んでしまう。ラストは墓前で呆然とする著者の姿で終わる。  阿片ビジネスのみならず、軍隊とは何か、日本の戦争遂行の体制はどんなも のだったのかをうかがい知ることができる、大変貴重な本である。 【今回紹介した書籍】 ● 『阿片と大砲 −陸軍昭和通商の7年−』 山本常雄 著/四六判上製/270頁/価格(本体1700円+税)/1985年8月刊行/ PMC出版(品切れ中) 【松浦晋也さんのプロフィール】 ノンフィクション・ライター.1962年東京都出身.現在,PC Online で「人と 技術と情報の界面を探る」,日経トレンディネットで「“アレ”って何? 読 めばわかる研究所」,日経テクノロジーで「小惑星探査機はやぶさ2の挑戦」 を連載中.主著に『小惑星探査機「はやぶさ2」の挑戦』『はやぶさ2の真実』 『飛べ!「はやぶさ」』『われらの有人宇宙船』『増補 スペースシャトルの 落日』『恐るべき旅路』『のりもの進化論』などがある. Twitterアカウント https://twitter.com/ShinyaMatsuura       「松浦晋也の“読書ノート”」 Copyright(C) 松浦晋也,2017  次号は鹿野司さんにご執筆いただきます.どうぞお楽しみに! ※本コラムは本メール配信約1か月後を目安に裳華房Webサイトに掲載します. http://www.shokabo.co.jp/column/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【4】[連載コラム]裳華房 編集子の“私の本棚”(第44回) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  編集部の有志が月替わりで,思い出の一冊やお薦めの書籍などを語ります. ─────────────────────────────────── ◆ 確率解析の創始者、伊藤清先生のエッセイ集 ◆ ●伊藤 清 著『確率論と私』(岩波書店)  編集者のAです。私が伊藤清先生のお名前を初めて聞いたのは、もうずいぶ ん前のことになりますが、新聞やビジネス誌などで「金融工学」という分野の 解説記事をよく目にするようになったときでした。そこには必ずといってよい ほど「伊藤の公式」という式が紹介されていました。物理出身の私には、「金 融工学というのは、伊藤先生という方が見出した式が基礎にあるのか」くらい にしか思っていなかったのですが、ここ数年の間に、この伊藤先生の研究室の ご出身である小林道正先生に『経済・経営のための数学教室』と『経済・経営 のための統計教室』という2冊の本をご執筆いただく中で、打ち合わせの際に 伊藤先生のお名前を聞くことが度々あり、私の中で、伊藤先生についてもっと 知りたいという思いが起こり、本書を手にしました。  この本は、「確率解析」という分野を創始した世界的な数学者である伊藤清 先生が、1978年〜2006年までの28年間に執筆したエッセイを収録したものです。 伊藤先生のお名前を知る方なら誰もが知りたいと思うであろう、後に「確率解 析」と呼ばれる分野に繋がることになる「確率微分方程式」を考えるに至った 背景や、その当時、先生が考えていたこと、取り組んでいたこと、そして、物 理学と数学の違いや、数学という分野に対する先生なりの捉え方などが書かれ ており、数学者としての伊藤先生を知る(感じる)ことができる一冊になって います。  本書の主要目次は、   1 忘れられない言葉   2 数学の二つの柱   3 数学の楽しみ   4 確率論とは何だろうか   5 確率論と歩いた六十年   6 思い出 というもので(章番号はローマ数字を算用数字に置き換えています)、各章は、 それぞれ4つくらいのエッセイから構成されています。  この本の中で私が特に印象に残った部分を1つだけ書かせていただくと、そ れは、「確率論と歩いた六十年」の中で、伊藤先生が確率論という分野に進ん だ経緯について書かれている部分です。  伊藤先生は旧制第八高等学校時代に、自然現象が数学的に明快に説明できる 力学に興味を持ち、大学では力学を勉強したいと思っていたとのことです。そ して、大学に入ってからは、純粋数学の構造美に魅了されつつ、統計力学をや るために「大数の法則」や「中心極限定理」などを勉強していく中で、次第に 「統計力学」から「確率論」に近づいていったと書かれています。  ただ、その当時は、確率論を専門に研究している数学者がいなかったことと、 伊藤先生自身も、確率論が厳密な意味で数学と言えるかどうか疑問に持ってい たとのことです。しかし、そんな伊藤先生が、最初の興味につながる一筋の道 を歩み続け、「確率論」の分野の発展に何らかの貢献をすることができたのは、 恩師の彌永昌吉先生からいただいた暖かい励ましのお蔭に他ならない、と書か れています。  力学に対する興味をきっかけに、統計力学、そして、確率論へと進んでいっ たという伊藤先生。物理出身の私には、もし、伊藤先生が統計力学の分野に進 んでいたならば、その後の物理学の発展にどんな影響を与えていただろうかと 思うと同時に、良き師との出会いというものが、その人の人生にいかに大きな 影響を与えるかということを改めて感じた次第です。  それぞれのエッセイはどれも興味深く、大変魅力に満ちたものとなっていま す。ここで一つ一つご紹介したいところですが、続きは、ぜひ本書を手に取っ てお読みいただければと思います。 【今回紹介した書籍】 ●『確率論と私』 伊藤 清 著/四六判上製/206頁/定価(本体1800円+税)/2010年1月発行/ 岩波書店/ISBN 978-4-00-005208-5 https://www.iwanami.co.jp/book/b263049.html 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【オンデマンド出版書籍】 http://www.shokabo.co.jp/mybooks/d-pub.html 【電子書籍のご案内】  http://www.shokabo.co.jp/ebooks/index.html 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【5】裳華房の分野別売上げランキング(2016年下半期) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  2016年下半期(7〜12月)における裳華房の主要4分野の売上げランキング です.各分野とも10位まで記しています.なお,大学等での採用品(教科書) としての注文分は除きました. http://www.shokabo.co.jp/m_list/ranking2016-2.html ───────────────────────────────────  ※各書籍の内容等は分野名の下に記載したリンク先からご参照ください※  ◆【数学分野】◆  http://www.shokabo.co.jp/m_list/ranking2016-2.html#math 1.『本質から理解する 数学的手法』 荒木 修・齋藤智彦 共著 2.『曲線と曲面の微分幾何(改訂版)』 小林昭七 著 3.『数学選書1 線型代数学(新装版)』 佐武一郎 著 4.『数学シリーズ 集合と位相』 内田伏一 著 5. 『数学シリーズ 数理統計学(改訂版)』 稲垣宣生 著 6.『数学選書4 ルベーグ積分入門』 伊藤清三 著 7. 『基礎数学選書23 テンソル解析』 田代嘉宏 著 8.『曲線と曲面(改訂版)−微分幾何的アプローチ−』     梅原雅顕・山田光太郎 共著 9.『数学シリーズ 微分積分学』 難波 誠 著 10.『手を動かしてまなぶ 線形代数』 藤岡 敦 著  ◆【物理学分野】◆  http://www.shokabo.co.jp/m_list/ranking2016-2.html#phys 1. 『量子力学選書 多粒子系の量子論』 藪 博之 著 2.『大学演習 熱学・統計力学(修訂版)』 久保亮五 編 3. 『基礎物理学選書5A 量子力学T(改訂版)』 小出昭一郎 著 4. 『テキストシリーズ 振動・波動』 小形正男 著 5. 『量子力学選書 場の量子論 −不変性と自由場を中心にして−』     坂本眞人 著 6. 『力学(三訂版)』 原島 鮮 著 7.『熱力学』 三宅 哲 著 8. 『マクスウェル方程式から始める 電磁気学』     小宮山 進・竹川 敦 共著 9. 『基礎からの 物理学』 山本貴博 著 10.『裳華房フィジックスライブラリー 解析力学』 久保謙一 著  ◆【化学分野】◆  http://www.shokabo.co.jp/m_list/ranking2016-2.html#chem 1. 『化学ギライにささげる 化学のミニマムエッセンス』 車田研一 著 2. 『化学の指針シリーズ 高分子化学』     西 敏夫・讃井浩平・東 千秋・高田十志和 共著 3. 『一般化学(四訂版)』 長島弘三・富田 功 共著 4. 『量子化学(上)』 原田義也 著 5. 『高分子合成化学(改訂版)』 井上祥平 著 6. 『演習で学ぶ 化学熱力学 −基本の理解から大学院入試まで−』     中田宗隆 著 7. 『量子化学(下)』 原田義也 著 8. 『理科教育力を高める 基礎化学』 長谷川 正・國仙久雄・吉永裕介 共著 9. 『あなたと化学 −くらしを支える化学15講−』 齋藤勝裕 著 10.『最新の有機化学演習 −有機化学の復習と大学院合格に向けて− 』     東郷秀雄 著  ◆【生物学分野】◆  http://www.shokabo.co.jp/m_list/ranking2016-2.html#bio 1. 『ゲノム編集入門 −ZFN・TALEN・CRISPR-Cas9−』 山本 卓 編 2. 『新・生命科学シリーズ エピジェネティクス』     大山 ?・東中川 徹 共著 3. 『しくみと原理で解き明かす 植物生理学』 佐藤直樹 著 4. 『ホルモンから見た生命現象と進化シリーズ Y.回遊・渡り −巡−』     安東宏徳・浦野明央 共編 5. 『新・生命科学シリーズ 植物の生態 −生理機能を中心に−』     寺島一郎 著 6. 『ホルモンから見た生命現象と進化シリーズ Z.生体防御・社会性 −守−』     水澤寛太・矢田 崇 共編 7. 『新・生命科学シリーズ 植物の系統と進化』 伊藤元己 著 8. 『微生物学 −地球と健康を守る−』 坂本順司 著 9. 『医療・看護系のための 生物学(改訂版)』 田村隆明 著 10.『新・生命科学シリーズ 遺伝子操作の基本原理』     赤坂甲治・大山義彦 共著 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【6】お知らせ&編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇お知らせ ─────────────────────────────────── 1.訂正表・正誤表や新しい演習問題など「書籍のサポート情報」.   http://www.shokabo.co.jp/support/index.html 2.2016年度版 裳華房 総合図書目録(2017年版は4月発行予定です)   http://www.shokabo.co.jp/mokuroku.html ─────────────────────────────────── ◇編集後記 ───────────────────────────────────  少し時間が経ってしまいましたが,新年明けましておめでとうございます.  よき新春をお迎えのこととお慶び申しあげます.  本年も引き続きご愛読のほど宜しくお願い申し上げます.<(_ _)>                                (TK) ─────────────────────────────────── 次号は2017年2月10日の配信予定です.どうぞお楽しみに! \\(^o^)// ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★ Shokabo-Newsの配信停止・アドレス変更は下記URLよりお願いします ★ http://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html メールマガジンのご意見・ご感想は m-list@shokabo.co.jp まで. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 自然科学書出版 (株)裳華房 〒102-0081 東京都千代田区四番町8-1 Tel:03-3262-9166 Fax:03-3262-9130 電子メール:info@shokabo.co.jp URL:http://www.shokabo.co.jp/  Twitterアカウント:@shokabo 【個人情報の取り扱い】 http://www.shokabo.co.jp/policy.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(c) 裳華房,2017      無断転載を禁じます.



         

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