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【裳華房】 メールマガジン「Shokabo-News」連載コラム 
裳華房の“古書”探訪(3)

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プランク 著,寺澤寛一・久末啓一郎 共訳
『理論物理學汎論 一般力學』(初版 大正15年)

 本書は,プランク定数としてその名を残し,量子論の偉大な創始者の一人である,あのマックス・プランク(Max Planck)が執筆した“Einfuhrung in die Theoretische Physik”の中の1冊である“Einfuhrung in die Allgemeine Mechanik(初版は1916年刊行)の日本語版です.

 肝心な本書の内容の方ですが,旧仮名使いのために読むのに一苦労するのは仕方ありません.本文だけで320ページもあり,昨今の日本の『力学』の教科書と比べるとかなり大部と言えるかもしれませんが,記述は非常に丁寧で,(もちろん数式もそれなりにありますが)文章の量が多いことに気が付きます.また,索引が日本語・英語・獨逸語と三つの言語で併記されています.

 プランクの『理論物理學汎論』は,

  第一巻 一般力學
  第二巻 變形する物体の力學
  第三巻 理論電氣磁氣學
  第四巻 理論光學
  第五巻 理論熱學

の全5巻から成り,裳華房では1926年(大正15年)〜1932年(昭和7年)の間に全5巻の日本語版を揃え,出版していたようです.

 出版記録を見ますと,今回ご紹介する『一般力學』について言えば,昭和24年(1949年)の時点で第13版となっていることから,それなりの部数を発行していたのではないかと思われます.

 この『一般力學』ですが,本を開き,書名・著者名・訳者名などが書かれた扉を捲ると,プランクの右向き上半身の写真(スーツ姿)が入っています.

   https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1926Planck-mecha/tobira.pdf
   ※見本は修正第7版(昭和7年発行)のもの(以下同様).

そして,その次のページには,本書を翻訳した一人の寺澤寛一先生の次のような言葉が入っています.

譯者は輓近の偉人プランク教授の圓熟せる筆に成れる理論物理學汎論を本邦に紹介するの機を得たるを欣ぶ.これによつて我國の若き學者が物理學の眞髓を窺ふことを得ば我我の最も滿足する所である.唯この拙譯が名著の權威に副はないのを恐れる.
https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1926Planck-mecha/intro2.pdf

 これを読むと,寺澤先生の謙虚なお気持ちが表れていると感じます.裳華房では,寺澤先生は『初等力學』(初版 昭和7年)などの著書をご執筆いただいておりましたので,また機会を改めて寺澤先生のご紹介をさせていただきたいと思います.

 プランクは,序文の冒頭に,

予が長い間教職にあつての經驗に依れば,理論物理學を初めて學ばんとする學生が最も困難とする所は,多くその數學的の式ではなく,寧ろ提供された考程の物理的内容に存する.即ち方程式の計算にあらで,却つて其の構成並びに説明に彼等は最も悩むのである.
https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1926Planck-mecha/intro.pdf

と書いています.(本コラムを書いている,物理学科出身の私は)自分の学生時代をふと思い出し,「なるほど,確かにそうだ.さすがプランク先生!」と思う反面,「いや待てよ.私は数式にも同じくらい悩まされたのだけど……」と,本書の序文を読んで,いかに自分が凡人であるかを改めて悟った次第です.

 余談ですが,基礎物理学や力学,量子力学などの教科書・参考書等で著名な原島鮮(あきら)先生は,『基礎物理学選書1 質点の力学(改訂版)』(裳華房)の序文の一節に,

昔話をすると,大正の終り,著者がまだ一高の学生時代,裳華房から寺澤寛一先生・久末啓一郎先生訳のプランクの名著“一般力学”が出版されたが,これを本屋で購入し読みふけったときの感激はいまも忘れられない. そのようなこともあったためか,著者は一生力学と関係を持ってしまった.
https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1926Planck-mecha/harashima.pdf

と書かれており,原島先生も若かりし時に本書に大きな影響を受けたようです.

 なお,以下のサイトで,Einfuhrung in die Allgemeine Mechanik の電子版を見ることができます.
   http://archive.org/details/einfhrungindiea01plangoog

『理論物理學汎論 一般力學』
  プランク 著/寺澤寛一・久末啓一郎 共訳
  菊判/360頁/大正15年(1926年)2月発行/裳華房

【目次】
一般力學緒言/第一篇 質點の力學(直線上の運動/空間内の運動/中心のある力及びポテンシアル/運動方程式の積分/相對運動/拘束運動)/ 第二篇 質點系の力學(剛體の靜力學/質點系の靜力學/質點系の動力學/剛體の動力學)
   https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1926Planck-mecha/mokuji.pdf

【本文(抜粋38頁分)・索引・奥付の内容見本】
   https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1926Planck-mecha/sample.pdf

☆記述の誤りなど,お気づきの点がありましたら m-list@shokabo.co.jp まで御連絡ください.


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