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【裳華房】 メールマガジン「Shokabo-News」連載コラム 
裳華房の“古書”探訪(9)

禁無断転載  → 裳華房メールマガジン「Shokabo-News」   → 「“古書”探訪」一覧

久末啓一郎 著『初等ベクトル解析』(初版 1932年[昭和7年])

 今回ご紹介するのは,力学,電磁気学,流体力学をはじめとする物理学や工学など様々な分野に用いられているベクトル解析について,日本でほぼ最初期に刊行されたものの1冊です[*1].

 本書をはじめ久末先生のご著書には(調べられた範囲で)「著者略歴」に類するものがないため,東京工業大学,後に武蔵大学に勤められていた以外の具体的なご経歴ははっきりとしませんが,他の著作物(『一般の力学』『物理数学』)等から,久末先生は物理を専門としていた方と思われます[*2].
 このため,本書も応用を目的にした読者向けに書き下ろしたものとなっています.

 本書の主要目次は
  第1章 ベクトルの加減乗除法
  第2章 ベクトルの微分積分法
  第3章 ベクトルと曲線坐表
  http://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1932hisasue-vector/mokuji.pdf
から構成されており,現在刊行されている「ベクトル解析」の教科書・参考書とほぼ同じです.

 80年前に書かれたものですから,当然,現在の用語とは異なるものが見られます.例えば,「基本ベクトル」が「基礎ベクトル」と表記されています.

 しかし,もっとも特徴的な違いは,現在の教科書などで扱われていない“ベクトルの除法”について述べられていることです.
 著者は,「除法がベクトル解析の書籍で解説されていないことは、不可能であるという意味ではなく、不定性が含まれるため、その扱いが繁雑になる難点があるためによる。(抜粋要約)」という理由説明のもとに,9ページほどを割いて解説しています.
 この他,直交曲線座標の具体的例を多く示していることも,本書の特徴と思われます.

 理工系大学の図書館でも蔵書として残っているかどうかわかりませんが,国立国会図書館ではデジタル資料化されていますので(閲覧は館内のみ),興味のある方に一読をお薦めします.


[脚注]

 *1 国立国会図書館の蔵書によれば,ベクトル解析については,1928年に内田老鶴圃より『ベクトルとテンソル』(山田光雄著),1929年に岩波書店より『ベクトル解析』(伊藤徳之助著),1933年に共立出版より『ヴェクトル解析学』(河口商次著)等が刊行されています.

 *2 裳華房から1949年に刊行した久末啓一郎著『一般の力学』の序文には「東京工業大學に於て二十年間力学の講義を擔當」とあります.また,6月に配信したShokabo-Newsの「裳華房の“古書”探訪」第3回でご紹介したプランク著『理論物理學汎論 一般力學』を,寺澤寛一先生と共訳されています.
   http://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1926Planck-mecha.htm


『初等ベクトル解析』    久末啓一郎 著/四六判変形/156頁/初版 昭和7年(1932年)11月発行/裳華房

【扉・序文・奥付】
  http://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1932hisasue-vector/intro.pdf

【本文(抜粋24頁分)】
  http://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1932hisasue-vector/sample.pdf

☆記述の誤りなど,お気づきの点がありましたら m-list@shokabo.co.jp まで御連絡ください.


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