宇宙に存在するプラズマ(電離ガス)は,自由電子 (原子核に束縛されていない電子)とイオン(電離原子)からなりますが, 熱運動のために,ともに激しく動き回っています. このような自由電子とイオンが出会うと, 負の電荷を持つ電子と正の電荷を持つイオンの間に働く電磁気力(クーロン力) によって,お互いに影響を及ぼし合います. その際,電子の質量よりイオンの質量の方がはるかに大きいために, イオンはほとんど動かずに,イオンのまわりで電子の軌道が曲げられます. このときに電子から光子が放出されるのです. これを,熱運動している電子がイオンのまわりでブレーキ(制動) をかけられて出す放射という意味で, 熱制動放射(bremsstrahlung)と呼びます. また電子がある自由軌道から別の自由軌道に遷移する際に出す放射という意味で, 自由−自由放射(free-free emission)とも呼びます. さらに熱運動している電子が出す放射なので, 広い意味では,熱放射(thermal emission)の一種です. | |
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もしこのような熱放射に対してプラズマが光学的に厚く不透明ならば,
放射された光子は別のイオンのまわりを運動している別の(自由)
電子に吸収されてしまいます.
その結果,プラズマと輻射は十分に相互作用を行い,
スペクトルは黒体輻射になります.
しかし,プラズマが光学的に薄く熱放射された光子に対して半透明ならば,
熱制動放射の生のスペクトルが見えることになります.
プラズマの光学的な厚みは振動数νによって異なります.
普通は,低振動数で光学的に厚いため,
そこではスペクトルは黒体輻射的になり,
光の強さは振動数の2乗に比例します(光の強さ∝ν2).
一方,高振動数では光学的に薄く,
スペクトルはのっぺりとした熱制動放射のものになります
(光の強さ∝ν-0.1). 左のグラフは,電離水素(HII)領域など高温プラズマガスの, 密度やサイズの指標である エミッションメジャーEM(emission measure) を変えたときの, 熱制動放射のスペクトルを表しています. エミッションメジャーが大きいほど, 濃密で巨大なHII領域であることを意味します. |