光源 (Lamp)

白熱電球

現在使われている白熱電球 (electric bulb)は, 不活性ガスを封入した電球の中にプラスとマイナスの電極を入れ, 電極の間を融点の高いタングステンフィラメントで結んだ構造になっています. フィラメントの電気抵抗が大きいので, 電球に電気を通すとフィラメントが加熱され, 高温になって光り輝きます. このとき,放射分布はほぼ黒体輻射になっています.

白熱電球は,消費電力も高く耐久性もありませんが即座に点灯するので, トイレや階段など,頻繁にかつ短時間だけ灯りが欲しい場所で利用されます.

家庭用電球(2001/06/19 福江 純 撮影)

電球(白熱灯)のスペクトルはのっぺりしていて,スペクトル線は何も見えません. それはタングステンのフィラメント(固体)が高温になって光っているからです.

電球のスペクトル(乗本祐慈 撮影)


蛍光灯

日常の照明器具として使われている蛍光灯 (fluorescent lamp)は, ガラス管の中に水銀のガスが封入されたもので, 放電管の一種です.
天井で使われるタイプには,細長い棒状のものや環状のものが多く, 四角いものはあまりありません. 卓上用でも棒状のものが一般的でしたが, 最近では蛍光管をグニャグニャと折り曲げたものもよく見られます. でも,蛍光管を手で折り曲げると折れます.

長時間・長期間にわたり灯りが必要な場所では, 消費電力の低い蛍光灯が使われます.

家庭用蛍光灯(2001/06/19 福江 純 撮影)

蛍光灯のスペクトルには輝線が見えます. 水銀ランプのスペクトルと比べると, スペクトル線の位置(波長)がぴったり一致しています. このことから,蛍光灯のガラス管の中には, 水銀のガスが含まれていることがわかります.

蛍光灯のスペクトル(乗本祐慈 撮影)

蛍光灯は,2段階のルミネッセンス(発光機構)を利用しています. 加熱されたフィラメントから放射された熱電子が, 蛍光管に封入された水銀粒子に衝突すると, 水銀は励起状態になって紫外線を発します. この紫外線が,蛍光管の内側に塗布された蛍光物質に当たると, 蛍光物質が励起して可視光が放出されます. 蛍光灯は白熱電球と比べて消費電力が少なく, 電気から光へのエネルギー変換効率は約25%です.
ちなみに,蛍光物質などが発光することを一般にルミネッセンスといいますが, 光を当てている間だけ別の波長の光を発して光る場合を, とくに蛍光(フルオレッセンス)と呼び, 光を当てるのをやめてもしばらくの間は光る場合は, 燐光(フォスフォレッセンス)と呼んで区別します.


ナトリウムランプ

高速道路などでよくみられる低圧ナトリウムランプは, 真空管の中にナトリウムの蒸気が封入されたもので, 放電させると特徴的なオレンジイエローの光を発します. ナトリウムランプの光は,波長590nmの単色光です.

ナトリウムランプは霧の中などでも視認性が高いために, 高速道路やトンネル内などで利用されています.

トンネル内のナトリウムランプ(2001/05/20 福江 純 撮影)

ナトリウムランプが使われたトンネルの中に入ると物がすべて黄色く見えますが, 低圧ナトリウムランプがほとんど橙黄色の輝線(589.0nm/589.6nm)だけで光っているからです.
左の写真は,対物グレーティングを用いて撮影した トンネル内のナトリウムランプで(左:遠景,右:入り口), いずれも左から-2次,-1次,0次のスペクトルが写っています.

トンネル内のナトリウムランプ (岡山県後月郡芳井町“芳井トンネル”にて 乗本祐慈 撮影)


ネオン

ネオンサインのネオン管(neon tube)は, 真空管の中にネオンガスを封入したもので, 放電させるとネオンのグロー放電によって, きれいな橙色の光を発します. 封入するガスの種類を変えれば,出てくる光の色も変わります.
 ・ネオン→赤橙
 ・アルゴン→赤紫
 ・アルゴン+水銀→青
 ・アルゴン+水銀+黄緑に着色したガラス管→黄
 ・アルゴン+水銀+黄に着色したガラス管→黄
 ・炭酸ガス→白

色とりどりのネオン(大阪道頓堀にて 2001/09/17 福江 純 撮影)

店内の蛍光灯と看板のネオンサインとではスペクトルが異なります. すなわち,店内の蛍光灯では連続光が強いのですが, 看板のネオンサインではネオンの輝線が強いのです. 人間の目には連続光のほうが自然に見え,刺激も少ないようです.

商店の照明 (左:直接像,右:対物グレーティングによるスペクトル 岡山県小田郡矢掛町にて 乗本祐慈撮影)


エレクトロ・ルミネッセンスEL


エレクトロ・ルミネッセンスEL (electro-luminescence) は, 蛍光体薄膜と絶縁体を組み合わせた発光素子で, 訳語はないですが,強いて訳せば, 電子蛍光発光体とでもなるでしょう.

蛍光体薄膜と絶縁層が接触している界面部分には電子が溜まりやすい性質があります. そこで蛍光体薄膜と絶縁層を組み合わせた素子に交流電圧を加えると, その界面部分に高い電圧が生じ,溜まっている電子が加速して蛍光物質に当たり, 蛍光物質の種類に応じて,緑・赤・青などの光を発するわけです.

エレクトロル・ミネッセンスは, 形状の自由度が高く,蛍光なので発熱も消費電力も少なく, また応答時間も短く,視認性がよく,耐久性や防水性も高いなど, さまざまな利点をもっています. そのため, 単純なON/OFF表示灯や指示灯や夜間のセキュリティ用の光源から, 装飾光源やイルミネーション, 光るファンシーグッズやインテリアグッズ, 携帯電話・パソコン・ゲーム機・時計などのバックライト, フォトスタンドや店頭POPやサインボード, さらに案内ボードや説明ボードなどディスプレー用まで, さまざまな用途に利用されています.

(2001/06/27 福江 純 撮影)


発光ダイオードLED




発光ダイオードLED (light emitting diode) は, 電流を流すと発光する半導体素子の一種です.

半導体の結晶中の電子には,エネルギーの高いレベルと低いレベルの2つの状態があり, 電流を流して電子を高いレベルに上げると, 電子が低いレベルに落ちるときに光を自然放出します. 発光ダイオードはその原理を応用した発光素子で, アノード(陽極)とカソード(陰極)の間に電圧をかけると, 約2ボルトの電圧で電流が流れ始め,半導体の種類によって, 赤・オレンジ・緑・青などの光を発するわけです.

発光ダイオードLEDは,白熱電球などに比べると, 発熱が小さく(冷光),小型で長寿命などの利点をもっています. そのため, 腕時計,電卓や計器の表示灯, スキャナの光源などに利用されています. また赤外領域の発光ダイオードは,光通信用の光源などに使われます.

(2001/06/27 福江 純 撮影)


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