最近の惑星系の探索では， 親星に近い軌道を持つ巨大ガス惑星や楕円軌道を描いている惑星など， さまざまな惑星系が見つかってきていますが， 一方で，太陽系のような外側の巨大ガス惑星を有するシステムは， まだほとんど見つかっていません． このような惑星系における巨大ガス惑星の配置は， 初期の塵とガスの量によって変わってくるという説があります． また，巨大ガス惑星の配置は， 地球型惑星における生命の発生にも関係するという話もあります．

惑星系形成時における塵とガスの量	形成される惑星	巨大ガス惑星の軌道	生命の発生
少ない	地球型惑星が多数できる． 木星型巨大ガス惑星は形成されない．	なし	オールト雲から内部領域へ向かって飛来する彗星は， すべてが内部領域に到達してしまう． したがって，太陽系の場合と比べて， 地球には何百倍も何千倍も多くの彗星衝突が起こる． その結果，生命自体は発生できても， 知的生命への進化は難しくなる．
ほどほど	内側に地球型惑星が数個， 外側に木星型巨大ガス惑星が1〜2個できる．	初期の配置や質量にもよるが， 巨大ガス惑星の数が1から2個程度なら， 巨大ガス惑星どうしの重力相互作用による軌道の擾乱（じょうらん）は小さく， 巨大ガス惑星は初期の配置と円軌道を何億年も維持できる．	オールト雲から内部領域へ向かって飛来する彗星は， 外側の巨大ガス惑星の重力によって軌道を逸らされ， 内部領域に到達する数がかなり減少する． 地球には数千万年に一度ぐらいの頻度で彗星衝突が起こったが， 知的生命への進化する時間はあった．
多い	内側に地球型惑星が数個， 外側に木星型巨大ガス惑星が多くできる．	初期の配置や質量にもよるが， 巨大ガス惑星が3個とか4個とかできると， 巨大ガス惑星どうしの重力相互作用によって， ガス惑星の軌道は乱され次第に初期の円軌道からずれてしまい， 惑星系を離脱してしまったり， 楕円軌道になってしまったりする． 最近発見された楕円軌道を持つ巨大ガス惑星は， こうして形成されたのかもしれない．	巨大ガス惑星の軌道が内部領域まで入り込む楕円軌道になってしまうと， 内部領域に地球型惑星があったとしても， 巨大ガス惑星の重力によって， 弾き飛ばされたり太陽に落ちてしまったりするだろう． したがって，このようなシステムでは， 生命の存在できる地球型惑星はない可能性が高い．
多い	内側に地球型惑星が数個， 外側に木星型巨大ガス惑星が数個できる．	仮に外側に形成された巨大ガス惑星が1個の場合でも， 惑星形成時のガスの量が多かったりして， 惑星形成後にも大量に残っていると， ガスによって巨大ガス惑星の運動はブレーキを受け， その軌道は次第に小さくなって， ついには親星のすぐ近くの軌道にまで収縮するだろう． 最近発見された親星のすぐそばを公転している巨大ガス惑星は， こうして形成されたのかもしれない．	巨大ガス惑星の軌道が内側に移っていく過程で， 仮に地球型惑星が存在していたとしても， 巨大ガス惑星の重力によって， 弾き飛ばされたり太陽に落ちてしまったりするだろう． したがって，このようなシステムでは， 生命の存在できる地球型惑星はない可能性が高い．