この広い宇宙に知的生命はわれわれしかいないのかどうかを突き止めることは, 宇宙がどのように生まれそして進化してきたかという問題と並んで, 天文学の究極の目標の1つです. もちろん,発見された場合には, 全人類にとってかつてないほどの文化的文明的影響を与えることでしょう. |
宇宙文明方程式の答えはまだわかりません.
しかし,要素に分解することによって,
いったい何がどこまでわかっているかが分かりやすくなります.
実際,上のような評価がある程度でもできるようになったのは,
少なくとも天文学的な部分については,ごく最近のことなのです.
たとえば,観測技術の進歩によって,
太陽系のような惑星系がごくありふれたものだ,
ということがわかってきたのは,この数年のことです.
文明の寿命にしても,いまは皆目わかりませんが,
社会学や文明論が発展すればわかるようになるかもしれません.
少なくとも,がんばって地球文明を長続きさせれば,
宇宙人と出会うチャンスは増えるでしょう.
SETIの問題を突き詰めて考えていくと,結局, いま現在のわれわれ自身の生き方へと還ってくるようです. SETIや天文学を考えることは, われわれはどこからきたのか,われわれはどこへいくのか, そして,いま何をしているのか何をすべきなのか,という, 過去,未来,そして現在の生き方の問題に行き着くのです. いまをいかに生きるべきなのか. この問いに答えることこそ, 天文学やSETIの目標なのかも知れません. 宇宙人がいるにせよ,いないにせよ, SETIは,私たちの根本的な生き方や存在理由と関わってくる重要なテーマなのです. セーガン『コンタクト』から, セーガンの気持ちを代弁している天文学者の言葉を引用して締めくくりにしましょう. 「われわれはいま,未會有の時代に生きているんだ. 地球外知的生物を捜すなどということが可能になったのは,いまが初めてなんだからね. …探査が成功するか否かは,たしかに,だれも保証はできない. しかし,いま,SETIよりも重要な問題を,なにか一つでも考えつくかね? はるかな星に住む連中が,けんめいにわれわれにメッセージを送っているのに, この地上のだれ一人として耳を傾けていない,という図を想像してみたまえ. そいつはとんでもない醜態,茶番だと思わないか? 耳を傾ける能力はあるのに,それを実行する勇気を持ち合わせないとしたら, きみはそういう文明の一員であることを恥ずかしいと思わないか?」 (カール・セーガン『コンタクト』新潮社1986年) |
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