第2回 二人の偉人を対比して描きだしたユニークな解説書
『ニュートンとアインシュタイン』（石原藤夫 著，ハヤカワ文庫）
→ 『ニュートンとアインシュタイン』の目次
編集者のＢです．
タイトルとなっている二人については，それこそ数多の解説本が出版されていますが，本書のユニークな点は，ニュートンとアインシュタインを様々な観点から対比させながら解説している点です．
もともと石原先生の科学解説書の文章は，『ＳＦ相対論入門』（講談社ブルーバックス）など，一語一語かみくだくように丁寧にわかりやすく書かれていることで定評がありますが，人物や業績などを対比することで，ニュートンの理論の意味とアインシュタインの理論のすごさが自然とより明確に浮かび上がってきます．
ご参考まで，章タイトルを引用しておきます．
第 I 部 神とニュートン
第１章 神は言った「ニュートン現われよ」−登場−
第２章 そして、すべてが明らかになった−完成−
第３章 ニュートンが拓いた世界−意義−
第４章 ニュートン物理学への挑戦−批判−
第５章 ニュートンってどんな人？−人柄−
第 II 部 悪魔とアインシュタイン
第６章 悪魔がわめく「アインシュタイン現われよ」−登場−
第７章 ふたたび、すべては闇につつまれた−完成−
第８章 アインシュタインが拓いた世界−意義−
第９章 アインシュタイン物理学への挑戦−批判−
第10章 アインシュタインってどんな人？−人柄−
＃本書の特徴は，章の中の各項目のタイトルをあげた方がわかりやすいと思いますので，以下のサイトにまとめました．
https://www.shokabo.co.jp/column/mylibrary201305.html
各項目は（多数収録された１頁大のイラストを含めて）２〜４頁でまとめられていますので，とくにニュートンとアインシュタインの名前は知っているけど…という方や相対性理論の初心者？の方にはぴったりの入門書ではないかと思います．
私自身は大学２年のときに本書を読んで，その分かりやすい文章とユニークな構成に感銘を受けました．実際，裳華房に入社して科学解説書の企画・編集も手がけることになったとき，本書は参考にすべき一つの原点として，折ある毎に読み直してきた，思い入れのある一冊です．
長らく版元品切れ中となっているのが大変に残念ですが，古書店などで見つかることもあると思いますので，機会がありましたら是非ご覧ください．
【今回ご紹介した書籍】
『ニュートンとアインシュタイン』（ハヤカワ文庫JA169）
石原藤夫 著／文庫判／334頁／1983年発行（版元品切れ中）
早川書房／ISBN978-4-15-030169-9
「裳華房 編集子の“私の本棚”」 Copyright(c) 裳華房，2013
Shokabo-News No. 288（2013-5）に掲載
第 I 部 神とニュートン
第１章 神は言った「ニュートン現われよ」−登場−
1 創造的休暇の謎／ペストの大流行
2 それまでの世界観の謎／古代ギリシアの哲学
3 それまでの世界観の謎／アリストテレス学派の権威
4 先駆者アリスタルコスの謎／ギリシアの地動説派
5 先駆者コペルニクスの謎／世紀のワースト・セラー
6 先駆者ティコ・ブラーエの謎／天動と地動のあいのこ
7 先駆者ケプラーの謎／天体運動の三原則
8 先駆者ガリレオの謎／それでも地球は動く……
9 先駆者デカルトの謎／ルネサンスの天才たち
10 反射望遠鏡の謎／ガラス職人ニュートン
11 王立学会の謎／ニュートンの初舞台
12 ルカス教授職の謎／ニュートンの光学講義
第２章 そして、すべてが明らかになった−完成−
1 落ちたリンゴの謎／天界と地上の統一
2 ニュートン力学の謎／第一の法則（慣性の法則）
3 ニュートン力学の謎／第二の法則（力と加速度の関係）
4 ニュートン力学の謎／第三の法則（作用・反作用の法則）
5 万有引力の謎／中心力の問題
6 万有引力の謎／逆二乗の法則
7 力学世界の謎／ロケットへの応用
8 力学世界の謎／地球を脱出する
9 力学世界の謎／彗星の発見
10 ニュートン宇宙の謎／プリンシピアの完成
11 ニュートン宇宙の謎／おそるべき精神集中
12 ニュートン宇宙の謎／理神論の告白
第３章 ニュートンが拓いた世界−意義−
1 質量の謎／それは定義されるのか？
2 絶対時間と絶対空間の謎／バケツの実験への道
3 絶対運動の謎／バークリー僧正の哲学
4 方程式の謎／ニュートンの微分表現
5 近代科学の方法／ニュートンの四つの規則
6 ケプラーの法則の完全なる説明／万有引力の法則！
7 引力の正体／私は仮説をつくらない
8 ニュートンは宇宙を支配する／重力の原因はわからない
第４章 ニュートン物理学への挑戦−批判−
1 十七世紀の科学と哲学／進歩的だったイギリス
2 フックの批判の謎／逆二乗則の発見者
3 ニュートン反批判の謎／光の二面性
4 ライプニッツの批判の謎／微積分法の発明者
5 ゲーテの批判の謎／ロマン主義社の軽べつ
6 アインシュタインへの道／エネルギーと場と確率
第５章 ニュートンってどんな人？−人柄−
1 少年時代のニュートン／おばあさんっ子
2 ニュートンとアン・ストーリー／本と科学とお嬢さん
3 農夫としてのニュートン／嵐と研究のはじまり
4 学生時代のニュートン／恩師バロー教授
5 教授としてのニュートン／だれにもわからなかった講義内容
6 天才的に器用だったニュートン／アン・ストーリーの机の脚
7 発明家としてのニュートン／ジェット推進車の発明
8 錬金術者としてニュートン／水銀がしみこんだ頭髪
9 神学者としてのニュートン／古代年代学の大論文
10 ニュートンの顔の上と下／一時的なノイローゼ
11 晩年のニュートン／ライオンは爪でわかる！
12 ニュートンの生涯／年表
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第 II 部 悪魔とアインシュタイン
第６章 悪魔がわめく「アインシュタイン現われよ」−登場−
1 創造的余暇の謎／特許局時代
2 先駆者ファラデーの謎／力線が見える！
3 先駆者マクスウェルの謎／場の発見
4 先駆者マッハの謎／絶対運動への反逆
5 先駆者ボルツマンの謎／熱死する宇宙
6 先駆者マイケルソン──モーリーの謎／光速は不変だった！
7 先駆者ローレンツの謎／モノサシの短縮の生みの親
8 先駆者ポアンカレの謎／あと一歩にせまった大秀才
9 先駆者プランクの謎／アインシュタインの発見者
10 モールス信号の謎／電波と特殊相対論
11 私立学会の謎／アカデミー・オリンピア
12 ベルン私講師の謎／一般相対論への挑戦
第７章 ふたたび、すべては闇につつまれた−完成−
1 アインシュタインの幾何学の謎／時間と空間と質量とエネルギーの統一
2 特殊相対性理論、発想の謎／少年の日の夢
3 特殊相対性理論の謎／ローレンツ短縮
4 特殊相対性理論の謎／ウラシマ効果
5 E ＝mc2の謎／質量とエネルギーは同じものか？
6 一般相対性理論、発想の謎／一般相対性とはなにか？
7 一般相対性理論、発想の謎／等価原理とはなにか？
8 一般相対性理論の謎／リーマン幾何学と生命
9 一般相対性理論の謎／二つの方程式
10 アインシュタイン宇宙の謎／光線の彎曲
11 アインシュタイン宇宙の謎／宇宙は曲がっているか？
12 アインシュタイン宇宙の謎／汎神論の告白
第８章 アインシュタインが拓いた世界−意義−
1 質量の謎／それは空間と同じものか？
2 相対時間と相対空間の謎／双子のパラドックス
3 相対運動の謎／パラドックスの解答
4 方程式の謎／アインシュタインの微分表現
5 新しい地上界／ふくらみ・赤方偏移・メスバウエル
6 新しい天上界／新しい波"重力波"
7 新しい天上界／水星の軌道の奇妙な変化
8 アインシュタインは宇宙を支配する／二百億年の世界
第９章 アインシュタイン物理学への挑戦−批判−
1 二十世紀の科学と哲学／ベルグソンの反論
2 ナチの批判の謎／暗殺計画は存在したか？
3 エジソンの批判の謎／アメリカ人の熱中
4 ボーアの批判の謎／量子力学の建設
5 原爆の批判の謎／平和主義者の軽べつ
6 二十一世紀への道／ブラックホールの解明
第10章 アインシュタインってどんな人？−人柄−
1 少年時代のアインシュタイン／無口な子ども時代
2 ギムナジウムのアインシュタイン／学校ぎらいのはじまり
3 学生時代のアインシュタイン／大学入試の大失敗
4 アインシュタインとミレーヴァ／生涯の友人たち
5 教授としてのアインシュタイン／ベルンからプリンストンへ
6 天才的に不器用だったアインシュタイン／特許局の机の脚
7 発明家としてのアインシュタイン／冷蔵庫の発明
8 アインシュタイン的成功の方程式／ユーモアと家庭生活
9 思想家としてのアインシュタイン／マッハの哲学との離反
10 アインシュタインの顔の上と下／顔の座標系
11 晩年のアインシュタイン／生きながら伝説の人に……
12 アインシュタインの生涯／年表
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