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【裳華房】 メールマガジン「Shokabo-News」連載コラム 
裳華房 編集子の“私の本棚”

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第17回 記事「本を読もう――あたりまえのこと」と私

 読者のみなさん,こんにちは.
 数学の本を担当している新米編集者のπです.

 学生時代から大切にコピーを保管しているエッセイがあります.

・山田光太郎 著「本を読もう――あたりまえのこと」(『数学セミナー』, 日本評論社,2003年8月号)[ pp.10-13 ]

 このエッセイに出会ったのは,四国の片田舎にある高専生のときでした.授業で初めて微分積分を勉強したころなので,今から13年位前になります.図書館や学生寮の自室で数学の問題を解いたり,レポートを書いたり,好きな小説を読んだりしていて,今から思うとのんびりした時間を過ごしていました.

 当時,学校の図書館で月刊誌『数学セミナー』を読むのが好きでした.あのころはまだ数学的な内容はよく分からなかったけれど,数学者の書いた記事は奥深くて,どこか遠くの静謐な世界に繋がっているような気がしていたのです.

 夏休みになったばかりの7月に,『数学セミナー』の最新号が図書館の戸棚に展示されていたので,いつもどおり手に取りました.そのときの特集“エンピツ片手にテキストを読もう”の中にエッセイ「本を読もう」はありました.

 「本を読もう」には,数学書を自力で読むために,どのようなことに気をつければよいか書いてあります.数学の授業はとても面白かったのですが,「本を読もう」に書かれていたことはまだ見知らぬ別の世界でした.「数学の本って,本当はこんな風に読まれるものなのだ」と心を新たにしました.

 「本を読もう」は,数学の本を編集する今の仕事でも役に立っています.最初にざっと読むこと,字面通り読むこと,熟読すること,定義や定理の文章が何を主張しているかいえること,定理の証明の論理を追うこと,定理の主張をイメージできること.どれも大切な作業ですし,一筋縄にはいかないことも多いですが,日々奮闘しています.

 図書館では,雑誌の最新号は貸出できません.「本を読もう」をコピーしようと思って,女性の司書さんにお願いしました.いつもは事務的にコピーするはずなのに,このときに限って,しばし記事を一読.「すごくいいこと書いてあるから,コピー代はいいわよ.今回だけサービスね」と笑顔でいわれたことを今でも覚えています.今では黄ばんでしまった当時のコピーですが,そんな思い出とともに,職場のデスクの引き出しにお守りとして入れています.

 本稿で紹介した記事「本を読もう」(数学セミナー,2003年8月号)は,同著者によって書かれた記事「自主セミナーのすすめ」(1998年5月号)と合わせて「本を読もう―自立への第一歩」という題名で,『数学ガイダンスhyper』(日本評論社,2005年)という書籍に収録されています.


【今回ご紹介した書籍】 

数学ガイダンスhyper 
  数学セミナー編集部 編/A5判/276頁/定価2200円(本体2000円+税10%)
  2005年3月発行/日本評論社/ISBN 978-4-535-78427-7
  http://www.nippyo.co.jp/book/2546.html


「裳華房 編集子の“私の本棚”」 Copyright(c) 裳華房,2014
Shokabo-News No. 303(2014-9)に掲載 



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