第45回 試行錯誤とエビデンス
宗田哲男 著『ケトン体が人類を救う』(光文社)
下村吉治 著『サプリメントのほんととウソ』(ナップ)
編集者のπです.個人的な事情があってときどきダイエットにチャレンジすることがあるのですが,氾濫するまことしやかな情報に迷わされることがあります.私の場合は,試行錯誤でためしながら自分に一番あう方法を探りつつ,同時並行で文献などからエビデンスを得ていくようにしています.その方が納得しながら進められるため心が折れにくく,選択肢もおのずと収束していくので結果が出やすいように感じています.
今回は栄養や健康に関して新たな視点を提供してくれるものとして,2冊の書籍をご紹介いたします.
◇『ケトン体が人類を救う』
通常の栄養学の書籍を読んでからこの本を読むと,目から鱗です.冒頭で下記のような6つの説(神話)が挙げられ,これらは必ずしも正しくないという指摘がなされます.この部分を一読するだけでも,栄養に関する新しいものの見方に触れることができます.
1.カロリー神話
2.バランス神話
3.コレステロール神話
4.脂肪悪玉説(肉・動物性食品悪玉説)
5.炭水化物善玉説(野菜・植物性食品善玉説)
6.ケトン体危険説
書名にある「ケトン体」とは,脂肪酸ならびにアミノ酸の代謝産物です.従来,人間の主なエネルギー源は白米などから得られる「ブドウ糖」と思われてきましたが,実は「ケトン体」も有用なエネルギー源になるという解説がされています.データによる検証もきちんとされており,一理あると感じます.糖質制限によって摂取する糖質の量をコントロールし,身体がケトン体をエネルギー源として多く使う状態を意図的につくりだす――本書は妊婦糖尿病を事例として進みますが,ダイエットという視点から見ても,本書の投げかけは重要なのではないかと強く感じています.
◇『サプリメントのほんととウソ』
食事では摂取し切れない栄養素を補完するため,サプリメント(栄養補助食品および健康補助食品)があります.ダイエットのみならず,普段から健康を気遣ってサプリメントを摂取される方は多いようです.事実,ドラッグストアでは数多くのサプリメントが並んでいます.しかし,どんなものをどのようにとれば効果があるのでしょうか.
本書は,科学的な根拠(エビデンス)に基づいた正しい情報を提供してくれます.過剰摂取による弊害や副作用,有用性が疑わしいものまで,文献とともに解説されています.こちらも一読の価値ありです.
最後に,Shokabo-Newsをお読みいただいている皆様のご健康を祈念して,筆をおきたいと思います.
【今回ご紹介した書籍】
『ケトン体が人類を救う』
宗田哲男著/新書判/352頁/定価1012円(本体920円+税10%)/2015年11月発行/
光文社(光文社新書)/ISBN 978-4-334-03889-2
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334038892
『サプリメントのほんととウソ』
下村吉治 編/B5判/168頁/定価2200円(本体2000円+税10%)/2013年5月発行/
ナップ/978-4-905168-24-9
http://www.nap-ltd.co.jp/book/124/
「裳華房 編集子の“私の本棚”」 Copyright(c) 裳華房,2017
Shokabo-News No. 333(2017-3)に掲載
※「裳華房 編集子の“私の本棚”」は,裳華房のメールマガジン「Shokabo-News」にて連載しています.Webサイトにはメールマガジン配信の約1か月後に掲載します.是非メールマガジンにご登録ください.
→ Shokabo-Newsの登録・停止・アドレス変更
|