第46回 児童啓蒙書による科学との出会い
「学研まんがひみつシリーズ」(学習研究社)
編集者のCです.
読者のみなさんは,いつ頃からどういったきっかけで“科学”に興味をもたれたでしょうか? 幼稚園や小学校といった幼少の頃に科学の面白さの虜となり,そのまま理系の道に進んだ方もいれば,中学校や高校で目覚めたという方もいらっしゃるでしょう.人それぞれと思いますが,私に限れば,小学校の学級文庫の本を読んだ,という経験が大きく影響しています.
学級文庫というのは,皆さんもご記憶があると思いますが,教室の後ろにあるロッカーの隅(または教室の前にある黒板の横)に本棚を置いて,そこに担任の先生やクラスの友達が無償で本を置いてくれていた,あれです.今回は,その学級文庫の中にあった「学研まんがひみつシリーズ」(学習研究社)をご紹介します.
背表紙の,赤箔に白抜きゴチの文字が映えるこのシリーズは,小学生を読者対象に,あるテーマについてマンガで分かりやすく,かつ親しみやすく解説されていました.テーマの多くは科学の分野から選ばれていたようで,ページ数もそんなに多くはなく,無理なく読み終えられるボリュームでした.一冊を読み終えたとき,当時の私は相当な物知りになった気分でした.
本シリーズの生い立ちを改めて調べてみると,いまから40年以上も前の1972年に刊行を開始.その年に
『宇宙のひみつ』(漫画:あいかわ一誠)
『恐竜のひみつ』(漫画:川崎てつお)
『からだのひみつ』(漫画:藤木輝美)
『コロ助の科学質問箱』(漫画:内山安二)
を刊行しています.途中装丁が変わる(新訂版化)などしながら,以後,そのラインナップは70巻を超え,2000年まで脈々と続くロングシリーズでした.最終刊は『チューインガムのひみつ』(漫画:ながいのりあき)です.
このシリーズで多くの作品を描いてきた内山先生によると,モノをちゃんと理解できないと描けないとのことで,取材ルポを月に2〜3回,それを十数年続けられたそうです.曰く「ふつうの漫画家とちがうところはわたしのバアイ足でかく」(『コミックゴン!第2号』(ミリオン出版)所載“学研ひみつシリーズのひみつ”より).当然かもしれませんが,綿密な取材のうえで描いていらっしゃったんですね.
先に「2000年まで」と書きましたが,その多くは1970〜1980年代を中心に刊行されていましたので,その時代に小学生だった現在30歳代後半〜50歳代前半の方にとっては,大変に馴染み深いシリーズではないかと思います.小学校の図書室や学級文庫などに常備され,休み時間や放課後に読まれた方も多いでしょう.
いま振り返ってみると,科学への興味・関心を子供の頃からもたせるという意味では,こういった類の児童書の果たす役割は大きいと思います.また,そういった児童書と子供たちとの橋渡し役としての学級文庫の存在も重要ではないか,と思う今日この頃です.
残念ながら,本シリーズの多くが品切れ状態となっており,図書館などで検索して探していただければ幸いです.
学研からは現在,「学研まんが新ひみつシリーズ」などが後継のシリーズとして刊行されています.
「学研まんが新ひみつシリーズ」
https://hon.gakken.jp/series/学研まんが新ひみつ
「裳華房 編集子の“私の本棚”」 Copyright(c) 裳華房,2017
Shokabo-News No. 334(2017-4)に掲載
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