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第47回 ハーバー・ボッシュ法の光と影を知るヘイガー著『大気を変える錬金術』(みすず書房)
書名となっている「大気を変える錬金術」とは、無尽蔵にある空気から、生命が生きていく上で欠かせないアンモニアをつくる方法“ハーバー・ボッシュ法”のことです。20世紀の初めに開発されたこの合成法は、人々を食糧危機から救いました。現代に生きる私たちもこの技術の恩恵を受けています。まさに錬金術のような発明ではありましたが、その一方で戦争にも利用され多くの命を奪いました。
ハーバーとボッシュの名前は高校の教科書にも載っていますが、それこそ教科書程度の知識しか持っていなかった私にとって、彼らの波乱万丈な人生は衝撃的でした。著者はとくに、戦争という時代の中で重要な選択を迫られていくボッシュを丁寧に描いています。ボッシュはナチスに強く抗いながらも、経営者としての自身の立場や、一人のエンジニアとしての欲望を優先させたとき、抗いきれません。結局はずるずると加担していってしまう様には、ぞっとするような恐怖を覚えました。これは科学と軍事が結びついた歴史の一つでもあるのです。
科学の軍事研究への在り方が話題となる現代において、成果がもたらす二面性がよく見える本書は、読む価値のある一冊だと思います。残念ながら品切れ中のようですので、図書館等でご覧いただければ幸いです。
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