雑誌『生物の科学 遺伝』 1998年1月号(52巻1号)
B5判 112頁 



【特集 I がんと遺伝―発がんしやすい素質の科学/武部 啓 企画】
     がんは,「遺伝子の病気」である.しかし,「遺伝するがん」は少ない.遺伝子を調べた結果発がんリスクが大きいことがわかっても,生活態度を改めることによって発がんを防ぐ,あるいは遅らせることは可能だし,定期的に検診を受けてがんを早期発見できればそれだけ治療も容易になる.そのためには,いたずらにがんを恐れず,発がん機構や遺伝子診断についての正しい知識をもつことが必要である.

    がんと遺伝―暗いイメージから明るい話題へ(武部 啓)
    がん遺伝子・がん抑制遺伝子(河野隆志・横田 淳)
    がんの遺伝と遺伝子の不活性化―クヌドソン理論を中心に(樋野興夫)
    発がん抑制機構としてのDNA修復のはたらき(八木孝司・武部 啓)
    発がんしやすい遺伝的素質を遺伝子診断するときの倫理的問題(恒松由記子)
【特集 II 地衣類―小さな共生世界/山本好和 企画】
     地面や岩の上,樹木の幹などにはりついて,ひっそりと暮らしている地衣類.ふだんは見過ごしてしまうようなこの小さな生物は,菌類と藻類の共生によってなりたつというきわめてユニークな存在であり,人の暮らしとも密接なかかわりをもっている.ルーペを手に,身近な地衣類をもう一度見直してみれば,きっと新たな発見があるに違いない.

    地衣類とはどんな生物か(柏谷博之)
    地衣類と人の暮らし(山本好和)
    教材としての地衣類(近 芳明)
    環境指標としての地衣類(中川吉弘)
    関西地衣類観察会の「こけ」ウォッチング(山本好和)
【今月の解説】
    「利己的な遺伝子」にプログラムされる死(半田直史・小林一三)
    ゲノム刷込みの進化:コンフリクト説ではどこまで説明できるのか?(巖佐 庸)
    エル・ニーニョと生物(小野幹雄)
【トピックス】
    ヒト遺伝子を組み込んだクローン羊作出(今井 裕)
    筋肉の新しいモデル(杉 晴夫)
    生物教材研究文献のデータベースをインターネット検索(川上昭吾)
    ダウン症の原因遺伝子?(中込弥男)
【連 載】
    連載エッセイ・自然と私/実験材料雑感(三村徹郎)
    江戸東京の自然誌/シルクの輝き(唐沢孝一)
    植物文化史(臼井英治)/ニラ―薬用野菜
    実験・観察のページ/血管標本の作製(富山雅之)
    進化の支流と本流(石川 統)/ボルバキア―進化のヒッチハイカーを追う
    海の向うのワンダーランド−海外調査こぼれ話/野生イネを求めてアマゾン河の船旅(島本義也)
    実験生物ものがたり/麹菌とコウジカビ(杉山純多)
    樹木の季節誌(八田洋章)/クロマツ Pinus thunbergii マツ科・マツ属
    私のメモ/
    新装間近なダーウィンのダウンハウス(矢島道子)
    なみのはな(鍛冶秀雄)
    生物ライブラリー/『酒造りの不思議』『恐竜の再生法教えます』『スズメバチの科学』『ネオ生物学シリーズ 1.ゲノム生物学 2.ゲノム情報を読む』



         

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