雑誌『生物の科学 遺伝』 1998年7月号(52巻7号)
B5判 112頁 (特大号)


【特集1 湿地生態系とその保全/樋口広芳 企画】
    長崎県の諫早湾,愛知県の藤前干潟の埋め立てなど,干潟の保全にかかわる問題が全国的に話題になっている.湿地はわれわれ人の暮らしと密接な関係をもち,また生物多様性をまもる上でもきわめて重要な生態系である一方,開発の波は止むことなく各地で進行している.湿地の大切さを理解し,その保全の重要性を見つめ直すため,この特集を企画した.

    特集にあたって(樋口広芳)
    湿地生態系とそのはたらき(角野康郎)
    ホタルと谷戸の保全(渋江桂子)
    カワウの移住作戦と湿地の保全(成末雅恵)
    霞ヶ浦における渡り鳥と環境変化(春日清一)
    水辺遊びにみる淡水生物相と遊び文化の変化(遊磨正秀・嘉田由紀子・藤岡康博)
【特集2 構造生物学−生体高分子の構造と働き/三浦謹一郎 企画】
    生体機能で中心的な役割を果たすタンパク質,核酸などの構造と働きを調べ,生物の機能を理解しようという立場を鮮明にするため「構造生物学」という言葉が生まれてからほぼ10年が経過した.構造生物学における主要な三つの柱−−X線回折,核磁気共鳴,電子顕微鏡−−の解説を通して,現在の構造生物学が何を可能にしたのか紹介する.

    構造生物学−特集に寄せて(三浦謹一郎)
    X線で見る−生体高分子から生物マシーナリーへ(三井幸雄・千田俊哉・野田孝昌)
    核磁気共鳴で見る−水溶液中のタンパク質とDNA(西村善文)
    電子顕微鏡で見る−タンパク質とその集合体(若林健之)
【今月の解説】
    ヘルペスウイルスの分子進化(梅根健一・坂岡 博)
    イネ種子の休眠性−インド型イネと日本型イネの比較(三吉一光・佐藤雅志)
【トピックス】
    絶対音感の遺伝学(中込弥男)
    テロメラーゼによるヒト細胞の長寿化(石川冬木)
【連 載】
    連載エッセイ・自然と私/昆虫文化−もと昆虫少年の立場から(塚谷裕一)
    諫早湾の生物−有明海特産種の宝庫・序/有明海特産種と諫早湾の現状(佐藤正典)
    植物文化史(臼井英治)/カラムシ―夏服爽やか
    実験・観察のページ/アリはなぜ闘うか−アリの種間関係(井上裕一)
    進化の支流と本流(石川 統)/ドゥーシャンツゥオ化石と多細胞動物の起源
    江戸東京の自然誌(唐沢孝一)/回向院の供養塔群
    海の向うのワンダーランド−海外調査こぼれ話/地球の裏側の植物たち−南米チリでのゴンドワナ植物調査(伊藤元己)
    研究室・研究所めぐり/横浜市立大学 木原生物学研究所(笹隈哲夫)
    季節の樹木誌/ズミ Malus sieboldii バラ科・リンゴ属(八田洋章)
    生物ライブラリー/『アマゾン河探検記』『植物のたどってきた道』『植物の多様性と系統』『生命と地球の歴史』『ヒトの分子遺伝学』



         

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