雑誌『生物の科学 遺伝

2002年9月号(56巻5号)
B5判/112頁/
2002年8月23日発売

【特集 I 三宅島の自然は いま/樋口広芳 企画】
     火山島である三宅島は,有史以来十数回の噴火を経験し,その度にその豊かな自然を回復してきました.しかし,2000年7月に始まったこの度の噴火は,規模が大きく,これまでとは様相の異なる火山活動が長期に続いています.全島民避難の事態が続いていますが,島に残る動植物の世界には多大な影響が及んでいると考えられます.
     本特集では,2001年2月以降に行われている調査結果の中から,主に植生・鳥類への影響を述べ,今回の噴火の特徴と人間社会への影響も示します.また,今後の生態系のゆくえを考えるうえで重要なさまざまな話題を取りあげた短報も収録しています.
    特集にあたって樋口広芳
    三宅島2000年大噴火の植生への影響(上條隆志
    三宅島2000年大噴火の鳥類への影響(加藤和弘・樋口広芳)
    三宅島2000年大噴火の特徴と人間社会への影響(濱田隆士)
    火山灰堆積層中の微生物相(太田寛行
    沼沢地の珪藻への影響(加藤和弘
    イタチ放獣と噴火の両生爬虫類への影響(長谷川雅美
    遺伝子汚染に配慮した緑化への取組み(津村義彦
【特集 II 地理情報システム:GIS −生態系保全への新しいアプローチ/田中和博 企画】
     現在,世界中で,さまざまな環境問題が起こっています.しかしながら,多くの場合,その有効な改善策は見いだされていません.従来の原因究明型の研究で解決を図ろうとしても,環境劣化のスピードは,それを待ってはくれない状況 に来ています.そこで,劣化の進む前に,保全策を講じていくような問題解決型の研究が求められます.
     本特集では,生態系保全のための「先行型」の処方箋を見いだしていくアプローチとして,GIS(地理情報システム)を用いた研究例を紹介します.
【トピックス】
    微小管がねじれを引き起こす
      −植物の左巻きねじれの原因タンパク質を発見橋本 隆
    脊椎動物の顎はどうやってできたのか?(倉谷 滋
    完全復元された最古の被子植物(西田治文)
    ツメガエル初期胚を用いた試験管内での眼の形成と幼生への移植
       (後原綾子・浅島 誠
    ワニは顔の皮膚で獲物を見つける(中込弥男)
【一般記事】
    雌ヘテロ型性染色体の表記について 
      −高校「生物」教科書における混乱(池内達郎・西郷 孝・布山喜章)
    ありし日のスティーブ・グールド博士(速水 格)
【私のメモ】
    ネジバナの巻き方はいかに決まるか(夏野義啓・夏野多永)

【連 載】
    表紙によせて/海中の紅葉(今泉真也)
    ウチの目玉収蔵品 紹介(8)/
      国立科学博物館「100年以上前のユキフリソデウオの標本」
                「ユノハナガニの標本」
    生き物の不思議(5)/
      セイタカアワダチソウ −旺盛なクローン繁殖と種子繁殖による完璧な生活史戦略鷲谷いづみ
    かたちと遺伝子(5)/似た形の作り方(長谷部光泰
    環境保全の現状(28)/
      ダム事業におけるイヌワシ・クマタカの保全(尾澤卓思
    がんばれ生物クラブ(7)
      北海道札幌拓北高等学校 −トンボの飛び交う身近な自然の保護を目指して綿路昌史
    研究室・研究所めぐり(41)/
      京都大学大学院・理学研究科・附属瀬戸臨海実験所(久保田 信
    生物ライブラリー/
      『ちょっと待ってケナフ! これでいいのビオトープ?』
      『絵でわかる進化論』
      『DNAでたどるオサムシの系統と進化』



         

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