雑誌『生物の科学 遺伝

2005年7月号(59巻4号)
B5判/112頁/

【特集 I 食虫植物/長谷部光泰 企画】

食虫植物は誰もが知っているなんとも奇妙な生物である.しかし,どんな植物からどのように進化してきたのか,どのように種分化するのか,どんな分子メカニズムによって運動しているのか,消化液にはどんな消化酵素が含まれているのかなどなど多くの謎が残されている.近年,分子生物学を始めとした新しい技術を用いて食虫植物の謎にアプローチできるようになってきた.食虫植物研究の現状をまとめ,将来の展望を探る.

    ・特集にあたって(長谷部光泰)   →こちらから読めます
    ・食虫植物研究について(近藤勝彦) 
    ・食虫植物は普通の植物からどう進化したのか(長谷部光泰) 
    ・モウセンゴケの染色体進化(星 良和) 
    ・交雑起源種トウカイコモウセンゴケにみられる生活史戦略の多様性 
       (中野真理子・木下栄一郎・植田邦彦)
    ・ウツボカズラの捕虫葉はなぜ多様なのか?−種内分化の要因を探る 
       (倉田薫子・瀬戸口浩彰)
    ・ハエトリグサの捕虫運動に関与する化学物質(上田 実) 
    ・ウツボカズラの消化酵素−ネペンテシン(高橋健治) 

【特集 II 新しい動物園・水族館の展示手法/石田おさむ 企画】

 ここ数年来,来園者数が下降線をたどっているといわれ,現にいくつかの民間動物園が撤退し始めていたが,旭山動物園において入園者が急増し,ブレークするにいたり,再び動物園・水族館が注目を浴びている.旭山動物園の展示手法は,‘行動展示’と呼ばれているが,動物の行動を引き出すとともに,その行動をこれまでにない視点から見せることにあった.
 旭山のフィーバーぶりはいくつかの観点から注目に値するものである.展示手法については,1980年代の‘ランドスケープイマージョン’,1990年代の‘エンリッチメント’などアメリカから導入された手法と共通するところはあるものの,日本人のメンタリティに訴えている要素も垣間見られる.主要な来園者は,もはや子どもではなく観光に訪れた大人であり,マーケットリサーチに基づくエンターテインメント的な手法も用いられているし,水族館的な展示要素を動物園に導入したものともいえる.こうした展示の改革の成功は,他面では‘動物の潜在的な魅力’を引き出していく方向を示している.
 沈滞しているといわれた日本の動物園は,旭山の成功に刺激され,自ら変わっていくであろうと予測されるが,その可能性をいくつかの動物園・水族館の新しい展示の事例から迫ってみたい.

    ・変わる動物園展示 ─特集にあたって(石田おさむ)
    ・旭川市旭山動物園(坂東 元) 
    ・大阪市天王寺動物園−展示の変遷とZOO 21計画の目指すもの(宮下 実) 
    ・沖縄美ら海(ちゅらうみ)水族館−巨魚の風景(内田詮三) 

   

【トピックス】
    ・海底1万メートルに有孔虫の楽園を発見(北里 洋)
    ・花器官決定遺伝子の祖先遺伝子(伊藤元己) 
    ・中生代の哺乳類は小型のものばかりではない 
        −一部は恐竜の子どもを食べていた?(藤原慎一)
【今月の話題】
    ・アンデスの極限環境に生きる巨大な“草本植物”
       −100年を生きるプヤ・ライモンディの調査から(増沢武弘)
【連 載】
    表紙によせて/「ゾウ」(本橋英二)
    ウチの目玉収蔵品 紹介(24)/ 
      島根県立三瓶自然館(サヒメル)《三瓶小豆原埋没林》
      仙台市富沢遺跡保存館(地底の森ミュージアム)《埋没林》
    生き物の不思議(20)/ 
      オオミスジコウガイビルとその仲間たち(川勝正治・佐々木玄祐)
    野生動物はいま −人との軋轢の中で(2)/ 
      シカ −共生のジレンマ(三浦慎悟)
    研究室・研究所めぐり(57)/ 
      立教大学 理学部 生命理学科 細胞生物学研究室(黒岩常祥)
    がんばれ生物クラブ(20)/ 
      向上高等学校 −静かなる侵入者 外来種タイワンシジミ(園原哲司)
    実験・観察のページ(307)/ 
      簡単な麹の作製と麹を使った実習(長山隆男)
追悼文 松永 英先生を悼む(菊池康基)



         

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