井口洋夫先生の業績
−文化勲章受章を記念して−(2001年12月28日)
小社 「基礎化学選書」 「化学選書」 の編集委員である井口洋夫先生が,平成13年度の文化勲章を受章されました.
井口先生のご研究のうち,「有機半導体の発見とその概念の確立」はもっとも広く知られたもののひとつでしょう.これは1950年代,それまで絶縁体と思われていた有機化合物の中に電気伝導性を示す「有機半導体」を発見.やがて,有機物固体の電気物性という新しい研究分野を開拓するにいたったお仕事です.
ところで 「有機化合物」 「電気伝導性」 ときいて,ふと思い当たる方もあるかも知れません.昨年,ノーベル化学賞を受賞した白川英樹先生の偉業「導電性高分子の発見と発展」です.
「井口先生が,電気伝導性を示す低分子有機化合物を発見.そして白川先生が,導電性を持った高分子を開発」――ふたつの研究をこんなふうに眺めることもできるでしょう.
また,井口先生の人材育成への熱意はつとに知られるところです.さらに赤松秀雄先生,長倉三郎先生らとともに分子科学研究所の設立に力を尽くされたことも忘れてはならない大きなお仕事といえるでしょう.
下記に,井口先生のご著書をいくつか取り上げました.
○ 『元素と周期律 (改訂版)』 (基礎化学選書 1)
井口洋夫 著/定価3630円(本体3300円+税10%)/裳華房
周期表の重要さを述べるとともに,とかく敬遠されがちな元素個々の性質を,新しい知見を加え,物性化学の立場からまとめあげた.「化学の面白さ」を引き出す一書.○ 『物理化学実験法 (増補版)』
鮫島實三郎 著/赤松秀雄・井口洋夫 ほか増補執筆/定価4730円(本体4300円+税10%)/裳華房
初版以来70年を越え,今なおゆるがない評価は名著の証であろう.絶対の信頼で,教育・研究に必携の書.○ 『宇宙環境利用のサイエンス』
井口洋夫 監修/定価2530円(本体2300円+税10%)/裳華房
国際宇宙ステーションが本格的に稼働を始める21世紀の宇宙新時代に向けて,宇宙環境利用のビジョンと必要な基礎的な知識を紹介する入門書.(井口先生は現在,宇宙開発事業団 宇宙環境利用研究システム長)○ 『金属の話 (改訂版)』 (化学の話シリーズ 2)
井口洋夫 監修/定価1430円(本体1300円+税10%)/培風館
金属の特徴である電気や熱の伝導性,光沢,展性・延性というマクロな性質を,ミクロな立場から追究.さびや有機金属,はては未来の金属までを平明に解説.○ 『化学者のための液体論及び固体論』 (化学の話シリーズ 2)
中垣正幸・井口洋夫 共著/南江堂 (品切れ)
○ 『化学者のための物性論入門』(共立全書)
井口洋夫 著/共立出版 (品切れ)
○ 『金属表面物性』 (金属表面工業全書 1)
井口洋夫 著/槙書店 (品切れ)
○ 『有機半導体』 (新物理学進歩シリーズ 9)
井口洋夫 著/槙書店 (品切れ)【品切れの書籍はこちらで】
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