新たな超伝導物質の発見
(2001.4.1)
新聞各紙を大きく飾ったので,すでに皆さんご存じのことと思いますが,青山学院大学理工学部物理学科教授の秋光 純先生が,臨界温度(超伝導状態になる温度のこと)39K(−234℃)で超伝導を起こす金属化合物を発見しました.
その物質とは二ホウ化マグネシウム(MgB2)です.これまでは,1980年代後半に見つかった酸化物系材料(セラミック系材料)で多くの研究がなされ成果が上がっていましたが,壊れやすく加工にも難点がありました.
そういう意味からも,安価で手に入りやすく,また加工しやすい金属系の超伝導物質は産業界からの期待も大きく,秋光先生の発見を機に,新たな超伝導物質の探究・その製品化に向けての研究がますます加速するものと思われます.くわしい報告については,秋光先生の研究室の解説を見ていただくのがなんといっても一番でしょう.下記のホームページで,今回の発見についてのくわしい解説がご覧になれます.
なお,超伝導関係のリンク集は,下記のサイトが参考になります.
・超伝導関係のページ
(東京大学先端科学技術研究センター 情報デバイス分野 岡部研究室)●超伝導発見の歴史について
ヘリウムの液化に成功したカマリン・オンネスは,極低温の物性の研究を始めて間もない1911年に,極低温で水銀の電気抵抗が完全にゼロになっているのを発見しました.
そしてこの現象は,水銀に限らず,スズ,インジウムのような金属でも起こることを発見しました.同時に,電気抵抗がゼロになる固有の温度が,各金属特有のものであることも明らかにしました.また1933年にはマイスナーが,超伝導体内には磁場が入れないというマイスナー効果を発見しました.
この超伝導という不可思議な現象を理論的に説明しようと多くの人たちが挑みました.なかでもフレーリッヒ,ピパード,シャフロスは,そのヒントとなる重要な考えを提出しました.そしてこれら多くのヒントをもとに,バーディーン,クーパー,シュリーファーの3人はBCS理論を提唱し,超伝導の重要な特徴を説明することに成功しました.
ただ現在では,このBCS理論の枠内では説明しきれない現象が多数見つかり,そのため,BCS理論を超えた新たな理論の構築・新物質の発見が精力的に進められています.
●裳華房 超伝導関連書籍のご紹介
・『固体物理 ― 磁性・超伝導 ―(修訂版)』
作道恒太郎 著/定価2860円(本体2600円+税10%)・『高温超伝導の科学』
立木 昌・藤田敏三 共編/定価8250円(本体7500円+税10%)・『遍歴電子系の磁性と超伝導』
川畑有郷・安岡弘志 編/定価4730円(本体4300円+税10%)・『重い電子系の物理』 (物理学選書23)
上田和夫・大貫惇睦 共著/定価5720円(本体5200円+税10%)・『低次元導体 ― 有機導体の多彩な物理と密度波 ―(改訂改題)』 (物性科学選書)
鹿児島誠一 編著/定価5940円(本体5400円+税10%)・『電気伝導性酸化物(改訂版)』 (物性科学選書)
津田・那須・藤森・白鳥 共著/定価8250円(本体7500円+税10%)・『強誘電性と高温超電導 ― ペロブスカイト型材料 ―』 (先端材料シリーズ)
日本材料科学会 編/定価5390円(本体4900円+税10%)
自然科学書出版 裳華房 SHOKABO Co., Ltd.