CP対称性の破れ
★ 小林・益川理論は正しかった!宇宙の初期では物質と反物質が同じ量だけ作られたと考えられていますが,現在の宇宙にはなぜか反物質の姿はなく,物質だけが存在しています.どうしてこのようなことが起こったのかという謎を解くカギと言われているのが,小林誠(現在,高エネルギー物理学研究機構=KEK)・益川敏英(現在,京大基礎研)の両氏が提唱した,「小林・益川理論」と呼ばれているものです.
自然界にはCP [C:charge (電荷), P:parity (空間反転に関する性質)] 対称性の破れと呼ばれる性質があって,この性質のために,現在の宇宙からは反物質が消えてしまい物質だけが残ったと考えられていますが,この破れを説明する「小林・益川理論」の検証に日米のグループ(日本ではKEK)が精力的に挑んでいました.そして7月6日に,アメリカのスタンフォード大学の線形加速器センター(通称SLAC)が99.997%の確率で破れの存在を確認と発表.そして23日には,KEKを中心とする国際グループが,99.999%の確率で,この理論の通り,CP対称性が破れているとの実験結果を発表しました.
理論が提唱されてから,およそ30年.多くの人たちによる地道な努力,そして高度で精密な実験によって,ついに理論の正しさが証明されました.人間の飽くなき探究心とそれを支える最先端の科学技術が,自然界に潜んでいた法則をまた一つ捕まえることに成功した素晴らしい成果です.
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高エネルギー加速器研究機構 (KEK)
BELLE ホームページスタンフォード大学線形加速器センター(SLAC)
◎ 関連書籍
・『クォーク・レプトン核の世界』 (江尻宏泰 著,裳華房)
・『消えた反物質』 (小林 誠 著,講談社ブルーバックス)
・『いま、もう一つの素粒子論入門』 (益川敏英 著,丸善)
※注 ここに取り上げたものは関連書籍のごく一部です.
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