ポアンカレの誕生日
(2002年4月1日)
4月29日は,ポアンカレ(Jules Henri Poincaré)の誕生日です.最後の万能学者と言われたこのフランスの学者の名は,だれでも一度は聞いたことがあるでしょう.
ポアンカレは1854年4月29日,フランスのナンシーで生まれました.
1862年にナンシーの Lycée(その学校は現在彼の名で呼ばれているそうです!)に入ります.ここですでに数学で頭角を現していたポアンカレは,1873年に Ecole Polytechnique に入学,1875年に卒業後,1879年までパリの鉱山学校で研究を続けます.エルミートに師事し,1879年に微分方程式の研究でパリ大学から数学の博士号を取得しました.
1879〜1881年までカーン大学で,1881〜1885年までパリ大学で解析学,1886年からは数理物理学と確率論,1895年からは天体力学を,1912年に58歳で亡くなるまで教えました.業績は,解析学やその理論物理学への応用を中心にして数学の広い分野にわたります.
ことに有名なものに,クレイ数学研究所のミレニアム懸賞問題にも挙げられた「ポアンカレ予想」があります.これは
単連結な3次元閉多様体は3次元球面と同相であろう
というもので,位相幾何学の発展の大きな原動力となりました.
これを一般化した,いわゆる一般ポアンカレ予想,すなわち
コンパクトn 次元多様体M がn 次元球面S と同じホモトピークラスをもてば,
M とS は同相であろう
は,n ≧4の場合に証明されています(スメール 1960:n >4の場合,フリードマン 1984:n =4の場合).またポアンカレは,数学の発見過程における意識の働きについて,自身を題材にして講義をしています.
「ずっと考えていた問題の重要なヒントを,馬車のステップに足をかけた瞬間,思いついた」といったエピソードも有名ですね.
関連リンク ●ミレニアム懸賞問題 「ポアンカレ予想」(クレイ数学研究所)
●ジョン・ミルナー氏による「ポアンカレ予想」についての数学的解説[pdfファイル]
(東京大学 数理科学研究科による和訳.原著はクレイ数学研究所のサイト参照[pdfファイル])●特集:ポアンカレ予想への道(数学セミナー 2001年11月号)
ポアンカレの著書 (邦訳) ●『現代数学の系譜6 ポアンカレ 常微分方程式』(Les Méthodes Nouvelles de la Mécanique Céleste)
福原満洲雄・浦 太郎 訳/共立出版●『数学史叢書 ポアンカレ トポロジー』
斎藤利弥 訳/朝倉書店●『改訳 科学と方法』
吉田 洋一 訳/岩波書店
関 連 書 ●『数学における発明の心理』
ジャック・アダマール 著/伏見康治 訳/みすず書房(品切れ)
ポアンカレに関するエピソードなどを収録.
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