E 型 肝 炎
(2002年8月1日)
新聞(朝日新聞,毎日新聞,産経新聞)などの報道によれば,日本で初めてE型肝炎による死亡者が出ていたことが確認されました.
E型肝炎は,ウイルスによって引き起こされる肝炎(Hepatitis)の一種で,経口伝播型非A非B型肝炎とも呼ばれています.
E型肝炎ウイルス(HEV)が病原体で,おもにインドや東南アジアなどの赤道周辺で発症の報告が多く,感染者や水,家畜の便などに含まれるウイルスが口を経由して感染・発症します.とくに飲料水から感染する例が多いようです.感染すると,約6週間の潜伏期間を経て,腹痛や強い黄疸などの症状が出て,ときに劇症肝炎になる場合もあります.E型肝炎による死亡率はA型肝炎の10倍といわれており,妊婦では実に20%に達することもあります.
ただし,感染しても発症しない不顕性感染も多いようです.E型肝炎の治療としては,ほかの急性肝炎と同様に対症療法のみしかありません.劇症肝炎に至った場合は,血漿交換などによる治療が必要となります.
一般的な予防としては,A型肝炎と同様に,汚染地域と考えられる地域に旅行する場合には,飲料水や食べ物に注意し,基本的には加熱したもののみを摂取するように心がけることが大事となります.ワクチンはまだ開発されていません. (国立感染症研究所 感染症の話「E型肝炎」より)これまで日本では,海外渡航者しか発症例は報告されていませんでしたが,渡航歴のない北海道と岩手県の患者3人がE型肝炎で死亡していたことが確認されました.
これらはいずれも過去の発見であって,新たな感染の拡大はないようですが,感染ルートは特定できておらず,国内に感染源がある可能性が疑われています.一報,国立感染症研究所の全国調査によれば,日本の国民20人に1人がE型肝炎に感染しているとのことで(血液中の抗体の検査による),感染者本人が気づかないうちにE型肝炎の感染が広がる恐れもあり,厚生労働省と国立感染症研究所では,関係者に広く注意を促しています.
● 『したたかなウイルスたち』(ポピュラー・サイエンス 224)
大阪大学微生物病研究所教授 生田和良 著
四六判/184頁/定価1650円(本体1500円+税10%)/裳華房
ウイルスは,人や動物にさまざまな病気を起こします.ときに死に至る症状を引き起こすものから,生後すぐに感染してから死ぬまで離れないものまで,さまざまなウイルスがあります.エイズや肝炎,がん,エボラ出血熱などを引き起こすウイルスの素顔に迫ります.
肝炎ウイルスについても1章を割いて解説しています.
●肝炎の関連サイト
○ 肝炎情報センター
○ 日本消化器病学会
○ 厚生労働省
○ 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 (HiroServer)
【海外のサイト】 ○ Viral Hepatitis (CDC:Centers for Disease Control and Prevention)
自然科学書出版 裳華房 SHOKABO Co., Ltd.