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根井正利博士,第18回国際生物学賞を受賞

(2002.12.24更新)

 あまり聞き慣れないかもしれませんが,「国際生物学賞」は昭和天皇の在位60周年を記念して“生物学の奨励”のために設けられた賞で,言うなれば生物学分野のノーベル賞のような存在の賞です.
 日本学術振興会に設置された委員会により,毎年度選定される受賞分野において,世界的に優れた業績をあげたと認められた研究者1名が選出されます(ちなみに賞金は1000万円).

日本学術振興会の国際生物学賞のサイト

歴代受賞者一覧

 18回を数える今回は,『進化生物学分野』より,「根井の遺伝距離」の開発等で世界的に著名である,ペンシルバニア州立大学教授の根井正利博士(71歳)が受賞されました.
 根井博士は,京都大学にて農学博士号を取得の後,京都大学助手,放射線医学総合研究所研究員などを経て,1969年ブラウン大学,1972年テキサス大学,1990年ペンシルバニア大学と研究の場を移されています.現在は,ペンシルバニア州立大学(ユニバーシティ パーク校)分子進化遺伝学研究所の所長の職に就いておられます.
 このたびの受賞は,実験的・定量的な検証の難しかった進化生物学の分野にさまざまな統計的手法を導入し,分子データから理論的に進化を研究する手法を確立したことに対して,評価を受けたものです.
 博士の先駆的研究により,集団間の遺伝的多様性を定量的に明らかにすることが可能となり,分子進化を追跡することもできるようになりました.これらをはじめとするさまざまな成果により,「分子進化生物学」が誕生・確立・発展したといえます.
 博士がこれまでに築きあげてきた業績の詳細については,以下のサイトをご覧ください.

根井博士の業績について

 小社の雑誌『生物の科学 遺伝2003年1月号(2002年12月25日発売)のトピックスでは,テキサス大学時代の根井博士のもとで大学院生活を送られた舘野義男博士(国立遺伝学研究所)に寄稿していただいています.

生物の科学 遺伝2003年1月号12月24日発売


●関連書籍

○『分子進化遺伝学』 根井正利 著・監訳/五條堀 孝・斎藤成也 訳(培風館,1987年)

○『分子進化学入門』木村資生 編(培風館,1984年)

○『続・分子進化学入門』今堀宏三・木村資生・和田敬四郎 共編(培風館,1986年)

○『分子進化の中立説』木村資生 著・監訳/向井輝美・日下部真一 訳(紀伊國屋書店,1986年)

○『分子進化学入門』J.ニニオ 著/長野 敬 訳(紀伊國屋書店,1984年)

○『分子系統学』長谷川政美・岸野洋久 著(岩波書店,1996年)



         

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