(2002.12.2)京都の稲盛財団による「第18回 京都賞」の授賞式が,11月10日国立京都国際会館で行われました.この賞は,日本人だけを対象としたよくありがちな内輪的な賞ではなく,
として1985年から毎年「先端技術部門」,「基礎科学部門」,「思想・芸術部門」(1999年までは「精神科学・表現芸術部門」)の各部門で,優れた業績を挙げかつ幅広く多大な影響を与えている人に対して贈られてきたものです.
「人類の科学,文明の発展,また精神的な深化,高揚の面で
著しく貢献した人々の功績を讃え贈られる国際賞」今年の受賞者は,
「先端技術部門」
レロイ・エドワード・フッド博士(64) (バイオテクノロジーおよびメディカルテクノロジー)(業績)
「基礎科学部門」
ミハイル・レオニドヴィッチ・グロモフ教授(58) (数理科学)(業績)
「思想・芸術部門」
安藤忠雄 教授(61) (美術〔絵画・彫刻・工芸・建築〕)(業績)
でした.この「京都賞」の過去の受賞者を見ると,しっかりシブイところを押さえてあることが判ります.
「TeX」で我々出版業界とも少なからず縁のあるクヌース博士も1996年に受賞しておられますし,1985年の第一回にはなんとノーベル財団が特別賞を受賞しています.
また,「基礎科学部門」で数学者からも頻繁に受賞者が出ているところなど,「京都賞」が単に流行を追っているだけの浮ついた賞ではないことを表していると言えるのではないでしょうか.(と書きつつこのページを見てみると,基礎科学部門の委員には数学者がズラリと名を連ねておりました.)この京都賞が,「ノーベル賞」のような伝統ある賞とはまた一味違った視点からの権威ある世界的な賞として定着してくれるといいのですが,たとえば東京大学のトップページの「新着情報」では小柴昌俊名誉教授のノーベル賞受賞のことは書いてあっても安藤教授のことには触れていなかったりと,「賞」としてはまだ相当な“格”の開きのようです.
一般に浸透するのはこれからといったところでしょうか.受賞者の決定発表は毎年6月だそうですから,次まであと半年.さて今度はどんな人が受賞するのでしょうか.
●関連リンク
○システムズ生物学研究所(The Institute for Systems Biology)
(フッド博士が社長兼所長を勤める研究所)○フランス高等科学研究所(Institute des Hautes Etudes Scientifiques)
(グロモフ博士の所属する研究所)
・グロモフ博士のページ(Misha!)○東京大学
(安藤教授の所属する大学)
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