今月の話題
(2000.3.1)ニュートンの没月
今月は,イギリスの科学者 アイザック・ニュートンが84歳(1727年没)で亡くなった月です.ニュートンといえば,リンゴの落下のお話も有名ですが,プリンキピア(自然哲学の数学的原理)の著作はあまりにも有名です.彼の残した業績は広範囲にわたっていますが,特にといえば,力学・光学の建設,微積分法の発見といえるのではないでしょうか.
ニュートンの力学は,現代においてもその役割は全く衰えておらず,というか,これがなくては現代科学は成り立ちません.物体の速度が光の速度に近い状態を考えるときには,相対論的効果を考えなくてはいけませんが,キャッチボールでのボールの運動,大きくはロケットの打ち上げ,惑星の運動などなど,われわれの身近に見られる運動は,どれもニュートンの力学で説明できるのです.これは本当にすごいことだと思います.
ニュートンが微積分の理論を体系的にまとめたことを上でふれましたが,微積分については同じ頃,ライプニッツも微積分の理論を発表し,特にライプニッツが使い良い記号を用いたことなどで,あとの影響力はニュートンより勝ったと言われています.
今回は,この1冊というわけにはいきませんが,ニュートンにちなんで
をご覧いただけたらと思います.
数学の日
3月14日は数学の日です,と言われても知らない人の方が多いかも? 実は編集担当者も知りませんでした(笑).円周率(π)は,と問われたら,多くの人は「小学校で習ったことがあり,その値は 3.14」と答えられることと思います.これが記念日とされた答にもなっています.
ところで,「円の周囲の長さはその直径に比例する」ことは紀元前から知られており,πの値も数学の歴史とともに歩んできました.この事を主題とした書籍として次のものがあります.
- 円の数学
小林昭七 著/定価1870円(本体1700円+税10%)
古代ギリシャ数学に始まった研究が近代数学に受け継がれ,解決されていった数学の歴史と進歩の様子を,その時代の研究者の人物像も交えて解説してあります.
さて,小学校では円周率を 3.14ではなく,3として計算するようになります.
例えば,直径 10cm の円の周囲の長さは,今までは 31.4cm ですが,これからは 30cm が「正解」になってしまいます.円盤の周囲を糸を用いて測ってみれば(どんなに不器用な子でも),1.4cm の違いはハッキリと確認できます.小学校での 「数学の日」 の復活はあるのでしょうか?
深海に挑む
昨年の11月15日,運輸多目的衛星を搭載した国産ロケットH-IIの8号機が種子島宇宙センターから打ち上げられましたが,第1段エンジンが燃焼の異常停止を起こし,予定の飛行経路から大きく外れ,打ち上げは失敗.ロケットは海の藻屑と化してしまいましたが,海洋科学技術センターは深海調査研究船「かいれい」を使用し,海に沈んだ第1段ロケット発見のための海底探査を行いました.
地上と違って,とくに目印があるわけではない海洋・海底を調査するには,最先端の測定技術,潜航技術,探査装置が必要になります.一般の方にはほとんど知られることのないその技術について,下記「深海に挑む」でやさしくご紹介いたします.
- 深海に挑む(ポピュラー・サイエンス 215)
堀田 宏 著/定価1760円(本体1600円+税10%)
撃沈された戦艦大和の海底調査でも知られたように,水深200m以上の太陽光がとどかない暗黒で冷たく,高圧の海,深海.そこにはいったいどんな世界が広がっているのでしょうか.日本が世界に誇る「しんかい6500」を始めとしたさまざまな最新鋭の潜水調査船が,この未知なる領域に挑みます.
- ラボマニュアル マリンバイオテクノロジー
宮地重遠 監修/嵯峨直恒・松永 是 編著/定価4950円(本体4500円+税10%)
マリンバイオテクノロジーは近年研究体制が急速に整いつつあり,今後の進展が期待される分野です.本書は,このような現状を踏まえてマリンバイオテクノロジーの総合的かつ,実践的な解説をすることを目的としています.
自然科学書出版 裳華房 SHOKABO Co., Ltd.