裳華房 今月の話題
ガラパゴス諸島沖 油流出事故
(2001.2.1)今年1月16日,希少海洋動物の生息で知られるガラパゴス諸島(エクアドル)のサン・クリストバル島沖で,タンカー「ジェシカ」が座礁,積載していた燃料油が流出し,深刻な海洋汚染を引き起こしました.
エクアドル政府によると,積載していたディーゼル油と重油のうち約70万リットルが流出,一部はサンタフェ島に漂着して,アシカのコロニーや,少数のアオアシカツオドリとペリカン等が影響を受けました.これら生物に対する直接的な被害のほか,長期的な生態系への影響も心配されています.エクアドル政府は,国際協力やボランティアの活動なども得て,油のクリーンアップなど被害の拡大防止に努めています.幸いなことに,強い海流が島とは反対側の外洋に油を運び去っており,また強い日差しがディーゼル油の蒸発を促進しているようです.今後の風と海流によって影響は大きく変わるものと思われます.
ただし,影響を緩和する措置や生態学的な調査,災害の防止,不慮の事故への対応計画などが必要とされ,またすでに起きている被害に対して必要とされる資金は大きく不足していると言います.ガラパゴス諸島には約5000種の生物が生息しており,そのうちの約40%が固有種や固有属(ガラパゴス諸島にのみ生息する種や属)で,有名なところでは,ガラパゴスゾウガメやウミイグアナなどがいます.
また,ゾウガメの甲羅やダーウィンフィンチの嘴(くちばし)のように,島によって形が大きく異なる例も数多く知られ(適応放散),ダーウィンの進化論に大きな影響を与えたと言われています.
ガラパゴス諸島はまた,国際連合の専門機関である ユネスコ によって「世界遺産」に登録されています.
WWF(世界自然保護基金)では今回の事故をうけて,現在,各国政府に,ガラパゴス諸島付近の海域を「特別脆弱海域」※に指定することを呼びかけています.※生態学的・経済的・文化的・科学的な重要性と,船舶の航行による影響に対する脆弱性から,
特別な保護が必要であるとされ,IMO(国際海事機関)によって定められた海域.
●油流出の衛星写真
・SeaWiFS Project(NASA)
・地球観測衛星RADARSAT(リモート・センシング技術センター)●ガラパゴスに関するサイト等
・チャールズ・ダーウィン財団(Charles Darwin Foundation)
・エクアドル大使館
・ガラパゴスの生物(浜島書店)
・Virtual Galapagos
・ガラパゴス・フォトギャラリー(一部)
鳥羽水族館 Fumiyuki Kubota氏 藤原幸一氏 高野凱夫氏
Iguana-don&江口芳夫氏 TerraQuest●海洋汚染に関するサイト等
・油濁損害賠償Q&A(国土交通省)
・海上災害防止センター
・国立環境研究所 海洋研究チーム
・日本海洋データセンター
・日本海洋学会
・船舶技術研究所(国土交通省)
・環境goo●参考書籍(一部)
書名からリンクされていない書籍の詳細については,各オンライン書店などをご利用ください.【海洋汚染】
・『海の働きと海洋汚染』(ポピュラー・サイエンス162)
国立環境研究所 原島 省・功刀正行 共著/定価1650円(本体1500円+税10%)/裳華房・雑誌『生物の科学 遺伝』 1997年5月号
特集:バイオテクノロジーによる環境浄化※オンライン書店における 「海洋汚染」 書籍リスト
|bk1 |旭屋書店| Jbook |YAHOO!BOOKS|【ガラパゴス】
・『ガラパゴス大百科』(水口博也 著,TBSブリタニカ)
・『ガラパゴス諸島 −「進化論」のふるさと−(新版)』(伊藤秀三 著,中公新書690)
・『動物百科 ガラパゴス −時を忘れた生き物たち−』(藤原幸一 著,データハウス)
・『孤島の生物たち −ガラパゴスと小笠原−』(小野幹雄 著,岩波新書) (品切れ)
・『ガラパゴス −太古を伝える野生−』(中村征夫 著,集英社)・雑誌『生物の科学 遺伝』 1999年11月号
連載「海の向こうのワンダーランド(30) ガラパゴスの島々にミミズを求めて」
・雑誌『生物の科学 遺伝』 1995年6月号(品切れ)
特集:島にみる生物進化※オンライン書店における 「ガラパゴス」 書籍リスト
|bk1 |旭屋書店 |Jbook |YAHOO!BOOKS|【ダーウィン著作物】
・『ダーウィン著作集』(文一総合出版)
・『ヴィーグル号航海記(上中下)』(ダーウィン 著,岩波文庫) (品切れ)
・『種の起原(上下)』(ダーウィン 著,岩波書店)
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