今月の話題
革命前夜!?の素粒子物理学
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ニュートリノに質量 !?
現在の素粒子物理学では,ニュートリノは電荷がゼロで,質量がない粒子とされています.
しかし,スーパーカミオカンデの実験グループは,スーパーカミオカンデによる大気ニュートリノの観測によって,ニュートリノ振動の強い証拠を見つけることに成功しました.ニュートリノ振動が見つかることは,ニュートリノが質量をもっていることを意味します.
さらに,現在進められている「K2K(KEK-神岡間)長基線ニュートリノ振動実験」では,スーパーカミオカンデにおいて最初のニュートリノ事象を観測しました.
これらの実験を通してニュートリノに質量があることが実証されると,現在の素粒子の標準理論は見直しを必要とされ,素粒子物理学・宇宙物理学などに大きな変革を迫ることになると言われています.
(なお,KEKとは文部省 高エネルギー加速器研究機構の略称です.)
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小林・益川理論の検証進む!
宇宙の初期では物質と反物質が同じ量だけ作られたと考えられていますが,現在の宇宙にはなぜか反物質の姿はなく,物質だけが存在しています.どうしてこのようなことが起こったのかという謎を解くカギと言われているのが,小林
誠(現在,KEK)・益川敏英(現在,京大基礎研)の両氏が提唱した,「小林・益川理論」と呼ばれているものです.
自然界にはCP対称性の破れと呼ばれる性質があって,この性質のために,現在の宇宙からは反物質が消えてしまい物質だけが残ったと考えられていますが,この破れを説明する「小林・益川理論」の検証に日米のグループ(日本ではKEK)が当り,この理論の通り,CP対称性が破れていることを示す実験結果を得たと発表しました.
今後さらなる実験によって,「小林・益川理論」のより精密な検証が進み,CP対称性の破れの解明が進むものと期待されています.
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最新の情報は,まずこちらから!
高エネルギー加速器研究機構
(KEK)
東京大学宇宙線研究所(ICRR)
なお,高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)では,9月15日(金,敬老の日)に
一般公開※
が行われる予定です.(AM9:00〜PM4:30)
※研究所の一般公開については,今月の話題
「秋の研究所等の一般公開」
のページもご参照ください.
◎ 関連書籍
・啓蒙的な本
『クォーク・レプトン核の世界』 (江尻宏泰 著,裳華房)
『ニュートリノと重力波』 (日本物理学会 編,裳華房)
『消えた反物質』 (小林 誠 著,講談社ブルーバックス)
『いま、もう一つの素粒子論入門』 (益川敏英 著,丸善)
・きちんと勉強するための本
『基礎物理学選書25 素粒子』 (武田 暁 著,裳華房)
『物理学基礎シリーズ10 素粒子物理学』 (坂井典佑 著,培風館)
『朝倉物理学大系3 素粒子物理学の基礎 I』 (長島順清 著,朝倉書店)
『朝倉物理学大系4 素粒子物理学の基礎 II』 (長島順清 著,朝倉書店)
『パリティ物理学コース 素粒子物理』 (牧 二郎・林 浩一 著,丸善)
※注 ここに取り上げたものは関連書籍のごく一部です.この他にも多くの書が刊行されています.
自然科学書出版 裳華房 SHOKABO Co., Ltd.