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今月の話題

進化研究の新潮流

(2000.10.1)

 10月7日(木)〜9日(土),東京大学駒場キャンパスにおいて,第2回日本進化学会大会が開催されました.日本進化学会は昨年10月に発足,第1回大会が開かれましたが,その際は設立総会と記念シンポジウムが中心だったので,会員が一同に会する大会としては今回が初めてであり,実質的には今年が第1回目と言ってもよいでしょう.そしてこの動きは,進化研究の新しい大きなうねりを端的に表していると言えるのではないでしょうか.
 進化は生物のもっとも大きな特徴の一つであり,進化の理解はあらゆる生物科学における究極的な課題です.従来化石の解析を代表とするマクロな研究を中心に進められていた進化学は,分子生物学の発展と普及によって,大きく変貌しました.形態形成を支配する遺伝子の研究がさかんに行われるようになり,こうした遺伝子を手がかりに形態レベルの進化を分子レベルから理解しようという研究が始まっています.また,地球科学者と生命科学者の共同研究による地球と生命の共進化の解析,ヒトの行動や心を進化の産物としてとらえる進化心理学の台頭など,日本の進化研究は一大転換期を迎えていると言っても過言ではないかもしれません.21世紀に向けての大いなる進展に期待しましょう.


<進化学関連サイトなど>

日本進化学会

日本進化学会のサイト.第2回大会の詳しいプログラムも掲載されています.

進化学研究会

国立遺伝学研究所進化遺伝研究部門の斎藤成也氏が主宰する研究会のサイト.進化学の研究を推進することを目的とする研究会のため,議論はやや専門的.BBS上では,会員をはじめ「進化」に興味のある者たちが自由に情報交換や議論ができます.研究会では,進化に関するテーマについて討論する例会を,年に数回開催しています.

人間行動進化学研究会

長谷川寿一(東京大学)・長谷川眞理子(早稲田大学)ご夫妻他の方々が世話人をつとめる研究会のサイト.人間の行動,心理,文化などをさまざまな角度から追究している研究者たちの横断的つながりの構築を目指しています.会員になるとメーリングリストにも参加できます.

EVOLVE:進化研究メーリングリスト (入会案内)

農業環境技術研究所の三中信宏氏がオーナーをつとめるMLです.議論されている内容はときにかなり高度かつハードで,専門家でないとついていけないことも多いのですが,腕に自信のある方,ROMでも良いから知的刺激を受けたい,という方にはうってつけと言えましょう.

日本の生態学者・進化生物学者のHP:リンク集

日本で生態学・進化学を研究している研究者・研究室のリンク集.全国のおもな研究室をくまなく網羅!とまではいきませんが,拡張準備中とのことですので,これからさらに充実するものと思われます.

<裳華房の進化学関連書籍>

『進化の風景 −魅せる研究と生物たち−』
石川 統 著  定価2420円(本体2200円+税10%)
 『生物の科学 遺伝』1998年1月号から2年間にわたって連載され好評を博した「進化の支流と本流」に最新情報を加え,新たな章を書き起こしてまとめたもの.研究の楽しさ,生物の不思議さを存分に味わえるサイエンス・エッセイ集です.

『生物の科学 遺伝』別冊12号「地球の進化・生命の進化」
北里 洋・大野照文・大路樹生 編  定価2860円(本体2600円+税10%)
 地球科学者と生命科学者のホットなセッションにより,地球と生命が共に影響を及ぼしあって進化してきた道筋が見えてきた! 最新情報に大胆な仮説を交え,地球と生命の歴史を検証します.

『生物の科学 遺伝』別冊11号「脳・心・進化」
渡邊正孝・長谷川寿一 編  定価2640円(本体2400円+税10%)
 ヒトの「心」はどうやって獲得されたのか.認知神経科学,精神医学,行動遺伝学,そしてこの分野の新しい潮流「進化心理学」などなどの最新成果をもとに,“脳と心” およびその進化の本質に迫ります.

『マダガスカルの動物 −その華麗なる適応放散−』
山岸 哲 編  定価4620円(本体4200円+税10%)
 「進化の実験室」マダガスカルには,どのような動物が生息し,どのように華麗に適応放散しているのかを,環境保全の現状とともに解説します.

『生物の科学 遺伝』連載「進化研究のコンセプトを語る」
 生物の進化にはさまざまな側面があり,生物科学の各分野からそれぞれの手法でのアプローチが試みられています.各分野の研究者は進化の「どんな側面を」「どんな手法で」明らかにしようとしているのか,そのエッセンスを語っていただく,ただいま連載中のシリーズです.
2000年(54巻)
 6月号(1回目)「集団遺伝学の立場から」(太田朋子)
 7月号「植物の集団生物学の立場から−最近の研究動向と成果」(河野昭一)
 8月号「動物進化生態学の立場から−適応の素晴らしさを探る」(長谷川眞理子)
 9月号「進化発生生物学の立場から」(佐藤剛毅・佐藤矩行)
 10月号「古生物学の立場から」(小澤智生)
 11月号「数理生物学の立場から−適応戦略:最適化モデルとゲーム」(巖佐 庸)
 (11月号は10月25日配本;以下続く)




         

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