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Shokabo-News No.285 2013/2/27
裳華房メールマガジン 2月号
https://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今回のご案内 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◇ 新刊
『基礎から学べる 線形代数』『理工系の数理 複素解析』
◇ 近刊(2013年4月刊行予定)
『超分子の化学』
◇ 松浦晋也の“読書ノート”(6)
科学のためなら、どこにでも行きます
◇ 裳華房の“古書”探訪 (11)
山岡 望著『化學史傅』(初版 昭和2年)
◇ 売上げランキング(数学分野,化学分野)
◇ 新春読者プレゼント 当選者発表
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Shokabo-News 会員の皆様 こんにちは m(_ _)m
Shokabo-News 2013年2月号(リニューアル第11号)をお届けいたします.
1月号の新春読者プレゼントに対して多数のご応募をいただき,誠にありが
とうございました.当選者の発表は本メールの末尾をご覧ください.
なお,今回のプレゼント賞品(裳華房オリジナル図書カード)は下記サイト
でご覧いただけます.
https://www.shokabo.co.jp/m_list/present.html
さて今号では,2月刊行の数学書2点と今春刊行予定の化学1点のご紹介の
ほか,2012年刊行書籍の一覧,また好評連載「松浦晋也の“読書ノート”」で
はアンドレア・ウルフ著『金星を追いかけて』を,「裳華房の“古書”探訪」
では山岡 望著『化學史傅』(昭和2年初版発行)をご紹介します.
ご意見・ご感想を m-list@shokabo.co.jp までお寄せいただければ幸いです.
(Twitterをお使いの方はアカウント @shokabo まで)
★ お知らせ ★
1.現在開催中の裳華房フェアの一覧
https://www.shokabo.co.jp/fair/
☆開催中:東京理科大学生協神楽坂店,東北大学生協理薬店
2.2013年度版の「裳華房 図書目録」(冊子版,PDF版)
https://www.shokabo.co.jp/catalogue/index.html
3.「大学・短大・高専用教科書のご案内」
https://www.shokabo.co.jp/text.html
4.数学系の編集者(中途採用・経験者)を募集しています.
https://www.shokabo.co.jp/recruitment2012.html
5.「裳華房 出版原稿受付窓口」
https://www.shokabo.co.jp/scripts.html
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【裳華房 新刊一覧】 https://www.shokabo.co.jp/book_news.html
【ご購入のご案内】 https://www.shokabo.co.jp/order.html
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★★★★★★★★★★★★★★ 新 刊 案 内 ★★★★★★★★★★★★★★★
◆ 『基礎から学べる 線形代数』
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1558-0.htm
船橋昭一・中馬悟朗 共著
A5判/272頁/定価2310円(税込み)/裳華房/ISBN978-4-7853-1558-0
線形代数の基本概念の指導に重点を置く学科向けに,重要事項を中心にまと
めた入門書.第1章では実空間のベクトルと図形の話題に限定し,続く第2,
3章で行列式と行列の基本的性質を述べることで,半期のみ必修になっている
講義方針にも対応できるように配慮した.後半の,数ベクトル空間や行列の対
角化などのやや進んだ話題を,低い次数の実例で示しながら解説.「問」「問
題」「演習問題」をできるだけ多く設け,演習や小テストの時間がある大学で
も使い勝手が良いようにしてある.
【主要目次】1.ベクトルと図形 2.行列式とその応用 3.行列と掃き出し
法 4.ベクトル空間と1次変換 5.行列の対角化
◆ 『理工系の数理 複素解析』
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1559-7.htm
谷口健二・時弘哲治 共著
A5判/228頁/定価2310円(税込み)/裳華房/ISBN978-4-7853-1559-7
応用の立場であっても,複素解析の知識を重視する学科向けに,計算技術の
習得だけでなく論理的理解も得られるように,できる限り証明を省略せずにき
ちんと解説した入門書.多くの大学での学習到達目標となっている留数解析ま
でにとどめず,平均的教科書では割愛されることの多い「解析接続」などのや
や進んだ理論的話題と,「複素変数の微分方程式」などの応用の紹介までを含
めたことで,時間に制約のある講義後にも役立つように配慮してある.
【主要目次】1.複素数 2.複素関数とその微分 3.正則関数の積分 4.べ
き級数 5.留数解析 6.等角写像とその応用 7.解析接続とリーマン面
8.複素変数の微分方程式
★★★★★★★★★★★★★★ 近 刊 案 内 ★★★★★★★★★★★★★★★
◆ 『化学の指針シリーズ 超分子の化学』 (4月刊行予定)
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3226-6.htm
菅原 正・木村榮一 共編/菅原 正・村田 滋・堀 顕子 執筆
A5判/予224頁/裳華房/ISBN978-4-7853-3226-6
超分子化学の基礎となる「分子間力」の原理を懇切丁寧に解説しながら,超
分子の概念とその驚異的な構造,およびそれぞれの超分子の物性と機能とその
用途,さらには最新の話題である生体機能の本質の理解に役立つ超分子までを,
豊富な具体例を元に概観.この分野の入門的参考書としてうってつけの快著.
【主要目次】1.超分子とは 2.水素結合による超分子構築 3.ファンデル
ワールス相互作用による超分子構築 4.電荷移動相互作用による超分子構築
5.配位結合による超分子構築 6.生体内で機能する超分子
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【裳華房 分野別書籍一覧】 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/0000.html
【正誤表などサポート情報】 https://www.shokabo.co.jp/support/
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★★★★★★ 【新連載】松浦晋也の“読書ノート” (第6回) ★★★★★★
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ノンフィクション・ライター/サイエンスライターの松浦晋也さんと鹿野司
さんに,お薦め書籍や思い出の1冊,新刊レビュー等をご執筆いただきます.
今月号のご担当は松浦晋也さんです.
・バックナンバーはこちら→ https://www.shokabo.co.jp/column/
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◇ 科学のためなら、どこにでも行きます ◇
◆『金星を追いかけて』(アンドレア・ウルフ 著,角川書店)
まずは個人的な話から。2012年5月21日に日本で見られた日食を、私は見損
ねた。見る気がなかったわけではない。随分と前から数種類の日食グラスを用
意して見る気満々だったのである。ところが前日夜遅くまで原稿書きにいそし
んで、ちょっと仮眠をと思って横になったのが運の尽き。起きたら昼過ぎで日
食は終わっていた。
2012年は、日本で二つも太陽に関するスペクタクルな天文現象を見ることが
できた年だった。日食は逃してしまったが、まだもう一つがある。6月6日の金
星の日面通過だ。当日、関東地方は曇りがちの天気だったが、雲間から時折の
ぞく太陽には、小さく、しかしくっきりと金星が入り込んでいた。じりじりと
日面を移動する金星の影を、私は息を詰めて眺めた。それはあり得ないような、
素晴らしい、まったくもって素晴らしい天体ショーだった。
金星の日面通過は、日食よりも稀な天体現象である。日食は場所を問わなけ
れば、毎年2回以上、場合によっては年3回も4回も起きる。皆既食も金環食
も世界全体で考えると決して稀ではない。例えば次の金環食は2013年5月9日に、
オーストラリア南西部から南太平洋にかけての一帯で見ることができるし、皆
既食は2015年3月20日に北海から北極海にかけての一帯で見ることができる。
出かけていくのが大変なだけで、チャンスはいくらでもある。
しかし金星の日面通過はそうではない。この現象は8年間隔で2回の対で起
きて、121.5年、または105.5年が空くという周期で巡ってくる。前回は8年前
の2004年6月8日だったので、次は105年と半年後の2117年12月11日になる。つ
まり我々は、今後不死テクノロジーでも実現しないかぎり、次の金星日面通過
を見ることはできない。今回、自分の住む日本で、朝ひょいっと起きたら金星
の日面通過を見ることができたというのは、実はとても幸運なことだったのだ。
だから、そんな天文現象に科学的に大きな意味があるとなると、科学者達は
躍起になって観測しようとする。科学的情熱に駆り立てられ、すべての困難を
はね飛ばして観測に向かおうとする。
18世紀、金星の日面通過がそのような科学的観測の情熱の対象となった。今
回取り上げる「金星を追いかけて」は、1761年と1769年の金星日面通過に、文
字通り命を賭けた科学者達を描いたノンフィクションである。
そもそもの火種を撒いたのは、ハレー彗星を見いだした天文学者であるエド
モンド・ハレー(1656〜1742)だった。1716年、彼は金星の日面通過を、地上
の2点で観測することで地球と太陽の距離を測定する方法を発見した。
ここでハレーの見いだした手法をもう少し詳しく説明してみよう。というの
も、本書はハレーの手法を“三角法を使って”としか解説していないのである。
ここが面白いところなのに!
まず、金星の日面通過がどういう条件で起きるかを考えてみよう。当然のこ
とながら太陽、金星、地球がこの順番に一直線に並んだ時に起きる。この順に
一直線に並ぶことを天文用語では内合という。
金星の軌道面は地球の軌道面、すなわち黄道面に対して3.4度傾いている。
金星は太陽を一周するごとに黄道面の北側(宇宙には上も下もないが、便宜的
に“上”と思っておけば良い)にいったり南側(“下”と思っておけば良い)
にいったりしているわけだ。南から北に黄道面を抜ける点を昇交点、逆に北か
ら南に抜ける点を降交点という。金星の日面通過は、金星が、昇交点または降
交点にいるときに内合になると起きるわけだ。
本稿は、メールマガジンなので図を付けることができない。というわけで、
ここからは自分で図を書いて考えてもらいたい。金星の日面通過とは、地球か
ら見て金星の影が太陽面というスクリーンに投影されることと同等だ。そして
太陽、金星、地球が一直線に並んだ状態を、地球を点ではなく大きさを持った
球として考えると、太陽と地球の中心を結んだ線上に金星が来ると考えること
ができる。日面通過とは金星が地球を追い越していくことに他ならない。つま
り、地上から太陽が真上に見える緯度の場所では、金星の影は丁度太陽の直径
部分を移動していくように見える。
では、その緯度よりも北側の地点ではどう見えるかといえば、金星の影は太
陽の南半球を横切っていくように見える。逆にその緯度より南側の地点からは、
太陽の北半球を横切っていくように見える。つまりそこに視差が生じる。地上
2点間での観測結果の視差と、2点間の距離が分かると、地球と金星の距離が
分かる。三角測量と同じ原理だ。ところで、18世紀の段階で、地球と金星の太
陽からの距離の比率は、公転周期を観測することでケプラーの惑星運動の法則
からかなり精密に計算することができた。金星までの距離と、金星と地球の太
陽までの距離の比率が分かれば、太陽と地球の距離を求めることができる。
実際には、観測を行う2点は緯度だけではなく経度もずれているだろう。そ
こでハレーはさらに具体的に、2地点において、金星が太陽の縁に接触して日
面に潜入する時刻と、逆に日面から縁を通って出て行く時刻とを1秒単位で計
測することで、視差を十分な精度で計算できることを示した。これは大変重要
な指摘だった。ハレーは地上から天体現象を観測することで、遠く離れた宇宙
の距離を測定できることを明らかにしたのである。
なお、この手法は金星だけではなく、水星の日面通過にも適用することがで
きる。水星は公転周期が短いので、日面通過は金星よりもずっと頻繁に起きる。
実際、水星の日面通過を使っての観測も試みられたが、当時の観測技術では十
分な精度の値を得ることができなかった。水星はあまりに太陽に近すぎたのだ。
1716年の時点で、次の観測機会は1761年と1769年だった。1761年にハレーは
105歳。当然そこまで生きることはできない。だから1716年の論文で、彼はく
どいぐらいに観測にあたってどのような注意を払うべきかを書き込んだ。観測
はなるべく沢山の地点から行うべきである。曇ってしまったら観測はできない
からだ。また精度の向上のためには観測地点はなるべく世界の各地にばらけて
いたほうがいい。「この一つの現象をお互いに遠く離れた場所で観察してほし
いと心から願う」――そう書いたハレーは1742年にこの世を去った。
しかし、18世紀という時代を考えると、ハレーの願いは法外なものであった。
マゼランの艦隊が世界一周航海を成し遂げてから200年、すでに欧州各国はア
フリカやアジアの各地に植民地を持ち、活発に争っていた。が、産業革命はま
だ起きていない。移動に使えるのは徒歩か馬車か帆船のみで、欧州からアジア
へは何ヶ月、運が悪ければ何年もかかった。長旅は危険に満ちていて、たとえ
途中で命を落としたとしても文句は言えない。しかも、ハレーが求める観測を
実施するためには、様々な観測機器を持って移動する必要がある。観測には多
額な投資を必要とし、なおかつ命を賭けた冒険旅行となることは明らかだった。
それでいて得られるものといえば、香辛料でも黄金でも、上等な毛皮でもない。
金星の日面への出没を示す一組の時刻データだけである。
にも関わらずハレーの意志は、後進に引き継がれた。時代思潮も彼らに味方
した。欧州は、上からの近代化を目指す啓蒙専制君主の時代に入っていたのだ。
科学者を援助し、科学的事業に資金を拠出することが国の威信をライバルに示
すことになり、ひいては国を富ませるという考えで、各国の君主は僻遠の地で
金星日面通過を観測する遠征隊に資金を拠出した。遠征に赴く天文学者達の学
問的野心には、当然ながら世俗的野心も塗り重ねられていた。地球と太陽の距
離を測定したとなるとその功績は大きく、天文学者として考え得る限りの富と
名声が得られるであろう。
イギリスは大西洋に浮かぶセントヘレナ島(後にナポレオン・ポナパルトの
流刑地となる)とアフリカ大陸南端の喜望峰に遠征隊を派遣した。フランスは
インド洋のロドリゲス島とシベリアでの観測を目指した。スウェーデンはフィ
ンランド北方で観測を行おうとした。イギリス植民地だったアメリカからは、
カナダのニューファンドランド島に天文学者が派遣された。
だが、その旅路はとんでもない苦難に満ちていた。船旅を、陸路を天候に阻
まれ、欧州列強の植民地獲得を巡る争いに翻弄された。観測隊は様々な国の植
民地の出先機関と敵対しつつ前進しなくてはならなかった。測定には観測地の
正確な緯度経度を知る必要があるが、正確な地図があるわけではない。現地で
天文観測を繰り返すことで、緯度と経度を自分で測定しなくてはならない。そ
して当日の天候が悪ければ、どんなに頑張っても観測はできない。このあたり
の冒険譚はぜひとも本書を読んでみてもらいたい。
ありとあらゆる辛酸をなめつつ迎えた1761年6月6日、なんと観測は、あまり
うまくいかなかった。遠征隊の持ち帰った時刻データを付き合わせても、十分
満足できる精度で地球と太陽との距離を測定することができなかったのである。
次のチャンスは8年後の1769年、それを逃せばその次の観測機会はさらに105
年後の1874年となってしまう。やらいでか――天文学者たちはますます執念を
燃やして再度世界各地へ散っていった。ちなみに2回目の観測には、あの探検
家ジェームズ・クック(1728〜1779)と彼の指揮する「エンデバー号」の乗組
員も参加している。彼らはタヒチで観測を行った。
結論を書くなら、1769年の観測もまたあまりうまくいかなかった。日面に入
り込む金星の影が、長く伸びて完全に日面に入り込む時刻、あるいは完全に出
た時刻を正確に計測できなかったのだ。計測した時刻にはどのタイミングで日
面に入り込んだと判断するかで、数十秒の誤差が生じてしまった。ブラックド
ロップ効果と呼ばれたこの現象は、当初金星に大気があるためではないかと推
定されたが、現在では地球大気の乱れによるものと分かっている。
本書の旅の記録は、インドで観測を行ったフランスの天文学者ギヨーム・ル
・ジャンティ(1725〜1792)の帰還で締めくくられている。「日面通過を観測
した天文学者のなかで、彼は最後にヨーロッパの地を踏んだ。金星を追いかけ
て11年。パリに帰国すると、相続人は彼の死を宣告し、アカデミー・デ・シア
ンスは彼を除籍していた。」(本書p.256)
人間を人間たらしめている理由の一つが「身を滅ぼすほどの好奇心」である
ということに、納得がいく一冊である。
◆『金星を追いかけて』
アンドレア・ウルフ 著/矢羽野 薫 訳
四六判/294頁/定価1785円(税込み)/2012年6月発行/角川書店/
ISBN978-4-04-110204-6
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201112000595
【松浦晋也さんのプロフィール】
ノンフィクション・ライター.1962年東京都出身.現在,PC Online に「人と
技術と情報の界面を探る」を連載中.主著に『われらの有人宇宙船』『増補
スペースシャトルの落日』『恐るべき旅路』『コダワリ人のおもちゃ箱』『の
りもの進化論』などがある.
ブログ「松浦晋也のL/D」 http://smatsu.air-nifty.com/
「松浦晋也の“読書ノート”」 Copyright(c) 松浦晋也,2013
次号は鹿野 司さんにご執筆いただきます.どうぞお楽しみに!
※本コラムは本メール配信約1か月後を目安に裳華房Webサイトに掲載します.
https://www.shokabo.co.jp/column/
★★★★★★ 【連載コラム】裳華房の“古書”探訪(第11回)★★★★★★★
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弊社の起源は,江戸時代,伊達藩の御用板所であった「仙台書林 裳華房」
に遡ります.ここでは,科学書の出版に力を入れ始めた大正時代から昭和時代
に刊行された書籍の中から毎回1冊ずつ取り上げて紹介いたします.
【バックナンバー】 https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/index.html
【裳華房の歴史】 https://www.shokabo.co.jp/history.html
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◆ 山岡 望著『化學史傅』(初版 1927年[昭和2年])
https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1927yamaoka-history.htm
今回ご紹介するのは,とくに化学史や化学教育分野で著名な山岡望先生ご執
筆の『化學史傅』(初版 昭和2年[1927年])です.
山岡望(やまおかのぞむ)先生(1892〜1978)は,旧制第一高等学校[*1],
東京帝国大学理科大学化学科で修学された後,大正5年(1916年)に(旧制)
第六高等学校(岡山県)に着任し,以後,昭和25年(1950年)に学制改革によ
って同校が廃校されるまでの三十数年にわたって化学教育に専念されました.
六高からは数多くの化学者が輩出しています.
その後東京に移り,日本獣医畜産大学.国際基督教大学,日本赤十字武蔵野
女子短期大学などの教授を歴任され,昭和52年(1977年)には,日本化学会か
ら第1回の化学教育賞を受賞されています.
山岡先生は,すでに中学時代より科学史に興味を持たれていたそうで[*2],
化学史の書籍としては最初期[*3]に刊行された本書『化學史傅』をはじめ,
『化学史談』(T〜[,別冊)『化学史窓』『化学史筆』『化学史塵』(以上
内田老鶴圃)など,数々の化学史に関する書物を著されました.
またご専門の有機化学では,昭和10年に,当時としては大変にユニークな教
科書『わが有機化学』(内田老鶴圃)[*4]を出版されています.
さて,その山岡先生の(初期の)代表作が『化學史傅』です.
本書の特徴の一つは,目次をご覧になればおわかりのように,古代から二十
世紀初頭までの化学史を,人物中心に記述していることです.
https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1927yamaoka-history/mokuji.pdf
具体的には,太古の元素観や錬金術(古代の化学)から始まり,近代化学の
祖としてのボイル,シェーレ(酵素の発見),ラヴォアジェ(定量化学),ベ
ルツェリウス(分析化学),リービッヒ(有機化学),ブンゼン(実験化学),
メンデレエフ(周期律),ファント・ホッフ(物理化学),フィッシャー(生
化学),ラムゼー(無機化学)に焦点を当て,その生涯と事績を中心に述べな
がら,ダルトン,アボガドロ,デービー,ファラデー,グレアム,パストゥー
ルなどの伝記と事績を加えて,約300年にわたる化学の発展史が説かれていま
す.
とくに,人間としても魅せられていたリービッヒについては,本書の約5分
の1にあたる100頁強を割いて記述しています.
https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1927yamaoka-history/chap6.pdf
また,各人の事績・業績も,単に成功した事例のみならず,失敗や過ち,ま
た失意や後悔などについて,繰り返し筆を重ねている点も本書の大きな特徴に
なっています.
さらに,化学の先達に対する愛情あふれる語り口で,全体が非常に流暢な名
文であることも大きな特徴といえましょう.旧字,旧仮名遣いに慣れていない
現代の目で見ても,ページを開くとすーっと抵抗なく読み進められます.
中でも,結語「煌く星々」の中で,本書で取り上げた化学の先達たちを,夜
空の星々に譬えて述べられている箇所は,一読の価値大かと思います.
北天の中心にはベルツェリウスの名を宿す北極星が儼然としてその座
を守ってゐます。琴,鷲,白鳥の諸座の諸星は既に西に傾きました。
此等は一體どの化學者を記念する星々でありませうか。ペガススはフ
ァン・ト・ホッフの馬に譬えられた星でありました。北斗七星は……
(以下続きます)
https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1927yamaoka-history/conclusive.pdf
本書は,修正版が昭和6年(1931年)に,増訂版が昭和16年(1941年)に
発行された後,長らく絶版となっていましたが,昭和43年(1968年)に,大
幅に脚注や文献を追加した『化学史傅(脚注版)』が内田老鶴圃から刊行さ
れましたので,化学史を専門とされる方の中には,こちらの脚注版をご覧に
なられた方も多いのではないでしょうか(現在は版元品切れ中).
http://www.rokakuho.co.jp/data/books/3131.html
なお,本書(裳華房発行)および脚注版(内田老鶴圃発行)は,いずれも
初版が国立国会図書館のデジタルアーカイブで公開されています(館内閲覧
のみ).
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1119412
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1382626
[脚注]
*1 山岡先生の最初の著作物としては,大正8年に山岡柏郎のペンネームで
執筆された,一高時代のさまざまな出来事を記した『向陵三年』(博文
館)があります.その中では,当時の校長であった新渡戸稲造氏に対す
る傾倒ぶりがうかがえます.
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/940446
*2 山岡望・林良重「温故知新 山岡望先生をお訪ねして」(1976)化学教
育24(6), 501-503.
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001824738
*3 本書発行の3年前(大正13年)に,中瀬古六郎著『世界化學史』(カニ
ヤ書房)が出版されています.
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/931342
*4 記述は最小限に抑え,余白を大きく取って,自ら観察し調べたことを自
由に書き込めるように工夫.国立国会図書館でデジタルアーカイブが公
開されています(館内閲覧のみ).
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1047547
◆『化學史傅』
山岡 望 著/菊判上製/544頁/初版 昭和2年(1927年)2月発行/
裳華房
※記述の誤りなど,お気づきの点がありましたら m-list@shokabo.co.jp まで
御連絡ください.
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◎ 研究所等の一般公開
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★★★★★ 裳華房 売上げランキング(2012年12月〜2013年1月) ★★★★★
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分野別の直近2か月の売上げランキングです(2分野ごとを隔月に掲載).
なお,採用品としての注文分は除いています.
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★ 数学分野 ★
1.『曲線と曲面の微分幾何(改訂版)』 小林昭七 著
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1091-2.htm
2.『数学選書4 ルベーグ積分入門』 伊藤清三 著
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1304-3.htm
3.『微分積分読本 −1変数−』 小林昭七 著
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1521-4.htm
4.『数学シリーズ 集合と位相』 内田伏一 著
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1401-9.htm
5.『続 微分積分読本 −多変数−』 小林昭七 著
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1526-9.htm
★ 化学分野 ★
1. 『メディカル化学 −医歯薬系のための基礎化学−』
齋藤勝裕・太田好次・山倉文幸・八代耕児・馬場 猛 共著
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3091-0.htm
2.『量子化学(上)』 原田義也 著
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3073-6.htm
3.『量子化学(下)』 原田義也 著
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3074-3.htm
4.『高分子合成化学(改訂版)』 井上祥平 著
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3087-3.htm
5.『化学熱力学(修訂版)』 原田義也 著
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3065-1.htm
次号では,物理学分野,生物学分野を掲載する予定です.
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★★★★★★★★★ 新春読者プレゼント 当選者発表 ★★★★★★★★★
Shokabo-News1月号で募集した新春読者プレゼントに対して,多数の方より
ご応募いただき,誠にありがとうございました.抽選の結果,下記の5名の方
に裳華房オリジナル図書カード(3000円分)をお送りいたします.
ご当選された皆様,おめでとうございました.
◆ 宮城県 近松様
◆ 東京都 横山様
◆ 神奈川県 陰山様
◆ 静岡県 新林様
◆ 兵庫県 青木様
なお,プレゼントの発送は3月上旬を予定しています.
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次号は2013年3月27日の配信予定です.どうぞお楽しみに! \\(^o^)//
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