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Shokabo-News No.287 2013/4/25
裳華房メールマガジン 4月号
https://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今回のご案内 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◇ 新刊
菅原 正・木村榮一 共編『超分子の化学』
◇ 最近の話題
現時点で最大の素数の発見
◇ 松浦晋也の“読書ノート”(7)
分かった気になる数学ノンフィクション
◇ 裳華房 編集子の“私の本棚”(1)
編集者という職業に導いてくれた宝物
◇ 裳華房の“古書”探訪 (13)
坂岡末太郎 著『最新鐵道工學講義』(全8巻)[明治45年〜大正4年]
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Shokabo-News 会員の皆様 こんにちは m(_ _)m
Shokabo-News 2013年4月号をお届けいたします.
昨年4月配信号から全面的にリニューアルしたShokabo-Newsですが,先月号
の「最近の話題」に引き続き,部分的刷新の第二弾として,新連載コラムを始
めます.
入社20年強のベテラン?から1年余りの若手まで,小社編集者の有志が月替
わりに,思い出の一冊やお薦めの書籍などを語る, 題して「裳華房 編集子の
“私の本棚”」.ご支援のほどよろしくお願いいたします.
その他,化学の新刊1点(大変にお待たせしました)の紹介をはじめ,好評
連載「松浦晋也の“読書ノート”」ではダービシャー著『素数に憑かれた人た
ち』,「裳華房の“古書”探訪」では坂岡末太郎著『最新鐵道工學講義』(全
8巻)を取り上げます.
ご意見・ご感想を m-list@shokabo.co.jp までお寄せいただければ幸いです.
(Twitterをお使いの方はアカウント @shokabo まで)
★ お知らせ ★
1.【採用情報】化学系の編集者(2014年新卒者および経験者)を募集します.
https://www.shokabo.co.jp/recruitment2013.html
2.第20回出版社共同企画 「謝恩価格本フェア」が開催中!(〜6/19)
裳華房もポピュラー・サイエンスシリーズの一部を出品しています.
http://www.bargainbook.jp/
3.4月刊行の花岡正樹著『年齢不問! サービス満点!! 1000%大学活用術』
(中公新書ラクレ)にて,小社の「研究所等の一般公開」サイトをご紹介
いただきました.大変にありがとうございます.
http://www.chuko.co.jp/laclef/2013/04/150452.html
4.『物理のための応用数学』(小野寺嘉孝著)の「問題解答の補充」を掲載.
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-2031-7.htm
5.訂正表・正誤表や新しい演習問題など「書籍のサポート情報」.
https://www.shokabo.co.jp/support/index.html
★★★★★★★★★★★★★★ 新 刊 案 内 ★★★★★★★★★★★★★★★
◆ 『化学の指針シリーズ 超分子の化学』
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3226-6.htm
菅原 正・木村榮一 共編/菅原 正・村田 滋・堀 顕子 執筆
A5判/226頁/定価2520円(税込)/裳華房/ISBN978-4-7853-3226-6
超分子化学の基礎となる「分子間力」の原理を懇切丁寧に解説しながら,超
分子の概念とその驚異的な構造,およびさまざまな超分子の物性と機能とその
用途,さらには最新の話題である生体機能の本質の理解に役立つ超分子までを,
豊富な具体例を元に概観.この分野の入門的参考書としてうってつけの快著.
【主要目次】1.超分子とは 2.水素結合による超分子構築 3.ファンデル
ワールス相互作用による超分子構築 4.電荷移動相互作用による超分子構築
5.配位結合による超分子構築 6.生体内で機能する超分子
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【裳華房 新刊一覧】 https://www.shokabo.co.jp/book_news.html
【ご購入のご案内】 https://www.shokabo.co.jp/order.html
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★★★★★★★★★★★★★★ 最近の話題 ★★★★★★★★★★★★★★★
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折々の科学的なトピックスや記念日,季節的なテーマなどについて,簡単な
解説と関連書籍,Webサイトなどを紹介します(不定期掲載).
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◆ 現時点で最大の素数の発見
今年2月,GIMPS(Great Internet Mersenne Prime Search)は,アメリカ・
セントラルミズーリ大学のCurtis Cooper教授を中心とする数学者グループに
よって,現時点で最大の素数(1742万5170桁)が発見されたと発表しました.
これまでは,同じ GIMPS計画によって2008年8月に発見された1297万8189桁
が最大の素数でしたが,一気に440万桁以上も更新したことになります.
◇GIMPSによるプレスリリース(英文)
http://mersenne.org/various/57885161.htm
GIMPS計画は,分散コンピューティング(ネットワーク上などの複数台のコ
ンピュータを同時並行的に用いて処理能力を向上させる情報処理手法)を利用
して,メルセンヌ素数の発見を目的とするプロジェクトで,すでに14のメルセ
ンヌ素数を発見しています.
2のべき乗よりも1小さい自然数をメルセンヌ数といい,そのなかで素数で
あるものがメルセンヌ素数です.今回見つけられたのは「2の5788万5161乗か
ら1を引いた」もので,48番目(番号は未確定)のメルセンヌ素数になります.
無限にある素数がどのように分布するのか(どのように出現するのか),そ
の規則性は解明されていません.今後も,GIMPS 計画によって,新たなメルセ
ンヌ素数(=最大の素数?)は発見されていくと思われますが,それが素数の
謎の解明に貢献するのか否か,注目していきたいと思います.
【関連書籍・Webサイト】
◎素数に関する書籍としては,少し古い(2004年刊)ですが,『素数大百科』
(共立出版)が素数の基礎知識を網羅的にまとめていて便利です.
http://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320017597
◇上記『素数大百科』のベースとなったWebサイト“The Prime Pages”
http://primes.utm.edu/
◇GIMPSのWebサイト
http://www.mersenne.org/
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【裳華房 分野別書籍一覧】 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/0000.html
【正誤表などサポート情報】 https://www.shokabo.co.jp/support/
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★★★★★ 【連載コラム】松浦晋也の“読書ノート” (第7回) ★★★★★
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ノンフィクション・ライター/サイエンスライターの松浦晋也さんと鹿野司
さんに,お薦め書籍や思い出の1冊,新刊レビュー等をご執筆いただきます.
今月号のご担当は松浦晋也さんです.
・バックナンバーはこちら→ https://www.shokabo.co.jp/column/
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◇ 分かった気になる数学ノンフィクション ◇
◆『素数に憑かれた人たち −リーマン予想への挑戦−』
(ジョン・ダービシャー著,日経BP社)
日本の出版の世界では、フィクションがノンフィクションよりも圧倒的に強
い。部数は出るし、発行点数も多い。しかも“少数派”のノンフィクションで
は、なにか事物を解説するものよりも、通称“人もの”と呼ばれる、ある特定
人物ないし集団に焦点を当てたものや、当事者が自らの体験を語ったものが多
数を占める。
このあたりの事情は大宅壮一ノンフィクション賞の受賞作リストを見るとか
なりはっきり現れている。2004年から2013年までの10年間の受賞作17作を分類
すると、特定人物を主題とした作品が7作、ある事物に関連する複数の人々を
主題とした作品が6作、自分の体験に基づく作品3作、社会や歴史の分析が1
作となっている(複数の傾向を持つ作品は、私の独断でどれか一つのカテゴリ
ーに分類した)。
この10年、科学技術ノンフィクションと分類しうる作品は受賞していない。
科学関連の受賞作品は、1999年受賞の阿部寿美代『ゆりかごの死−乳幼児突然
死症候群(SIDS)−』(新潮社)まで遡らねばならない。
ところが、これが欧米となると、科学や技術、つまり「人だけではなくもの」
を主題としたノンフィクションがぐっと増える。科学技術史関連から最新の動
向に至るまで、その分野の専門家から専業ライターに至るまでぶ厚い執筆陣が
存在していて、「人とものとの絡まり合い」を通じて読者の知的好奇心を満た
す書籍を年々生産している。
日本の場合、科学技術情報への欲求は、専門家が執筆する新書によって満た
されている。その中からは、福岡伸一『生物と無生物のあいだ』(講談社現代
新書)[*1]、村山斉『宇宙は何でできているのか』(幻冬舎新書)[*2]の
ようなベストセラーも生まれている。日本の読書の傾向として、科学技術に関
しては新書形態の本で手早く情報を身につけたいというニーズがあるようだ。
「ねっとりとした人間関係はそれに特化した主題のノンフィクションで楽しみ、
科学技術情報は手早く新書で読む」といったところだろうか。
そんな日本で、もっとも層が薄いノンフィクションの分野は、おそらくは数
学ノンフィクションだ。海外では、重要な予想が証明されたり、なにか大きな
前進があると、必ず関連ノンフィクションが出版される。そんな数学ノンフィ
クションは、テーマが抽象的なだけに、同時に証明に取り組む数学者の人生を
も活写したものになる。最近では、世紀を超えた難問とされてきたポアンカレ
予想がグレゴリー・ペレリマン(1966〜)によって証明され、ジョージ・G・
スピーロ『ポアンカレ予想』(早川書房)[*3]、ドナル・オシア『ポアンカ
レ予想を解いた数学者』(日経BP社)[*4]、マーシャ・ガッセン『完全なる
証明』(文藝春秋)[*5]などが世に出た。一方、日本ではどうかというと、
NHKの番組の書籍化[*6]があっただけだった。ポアンカレ予想でとにもか
くにも番組を作ったNHKはさすがだが、内容的にはポアンカレ予想の本当に
表面をなぞるところのみで留まっていた。
ところで、数学の世界には、「ミレニアム問題」という、未だ証明できない
7つの難問が存在する。正確にはポアンカレ予想が証明されたので、現在は6
つの難問だ。2000年にアメリカのクレイ数学研究所が7問を選定し、その解決
にそれぞれ 100万ドルの賞金をかけた。かつてドイツの数学者ダフィット・ヒ
ルベルト(1862〜1943)は、1900年に20世紀の数学を前進させるであろう23の
問題を選定して発表し、それらの研究は豊かな実りをもたらした。懸賞金とい
うのはなかなかにアメリカ的な手法と思えるが、「ミレニアム問題」はヒルベ
ルトの故事に習ったものといえるだろう。
ちなみにクレイ数学研究所は、ランドン・クレイという数学を趣味とする実
業家が私財を投じて設立した非営利組織であり、それ自体ノンフィクションの
主題にしたいぐらい面白いのだが、それはさておき…。「ミレニアム問題」の
6つの難問は以下の通りだ。
1)P≠NP予想
2)ホッジ予想
3)リーマン予想
4)ヤン-ミルズ方程式と質量ギャップ問題
5)ナビエ-ストークス方程式の解の存在と滑らかさ
6)バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想(BSD予想)
「知らない」「興味がない」から、「聞いたことある」「習った」「講談社
のブルーバックスで読んだ」、さらには「なぜゴールドバッハ予想が入ってい
ない」「ヒルベルトの第16問題は21世紀に持ち越したのではなかったか」とい
ったマニアックな反応まで、思うところは色々あろう。
これら選りすぐりの難問の中で、もっとも歴史が古く、歴代屈強の数学者の
挑戦をはねつけてきたのが、リーマン予想である。
1859年、ドイツの数学者ベルンハルト・リーマンはゼータ関数と呼ばれる無
限級数について、次のような予想を提案した。
ゼータ関数の自明でない零点は、全て実部が 1/2 の直線上に存在する。
これだけ読むと、なぜこんなものに 150年以上も数多の数学者が挑戦してき
たか、理解できないだろう。が、ゼータ関数というものが、そもそも18世紀の
大数学者レオンハルト・オイラー(1707〜1783)が、素数について研究する中
で見出したものであり、リーマン予想が成立するということは実数全体におけ
る素数の分布の謎が解けるということであるとなると、これはただことではな
いと、なんとなく思えるかも知れない。
しかも、リーマン予想は単に素数にのみ関係しているのではない。現代数学
の世界は数の概念を拡張し、様々な数学的実体を扱うに至っているが、その全
般について「素なるもの」が定義できると、その延長線上に「ゼータ関数的な
もの」が定義できる。すると、それら「ゼータなるもの」に対して、やはり
「リーマン予想と同等の予想」を設定することができるのである。どうやら、
リーマン予想は数学の世界において非常に普遍的なものであるようなのだ。そ
れだけではなく、純粋に数学的に考案されたはずのリーマン予想からは、原子
核物理学との関係を示唆するような類似も導き出されている。つまり「世界と
は、すなわち数」であり、その根幹にはリーマン予想がどっかりと存在してい
るのかも知れないのである。
……と、煽ると、俄然リーマン予想に興味を持つ方もおられるかも知れない。
解説書を読みたいと思う人もいるだろう。が、日本人の手による書籍は、その
ほとんどが本職の数学者によるそれなりに専門的なものだ。あなたが理工系の
素養があり、たまに雑誌「数学セミナー」を買ったことがあるレベルなら大丈
夫。それらの本を読んでみよう。しかし、「私、数学は指数、対数と三角関数
が出て来たところで諦めました」だったならどうしよう。
NHKは、2009年にNHKスペシャル「魔性の難問〜リーマン予想・天才た
ちの闘い〜」というドキュメンタリーを製作・放映している[*7]。これは、
映像の力をぎりぎりまで駆使してリーマン予想を解説した力作で、ずいぶんと
頑張っている (DVDになっていて、現在も入手可能[*8])のだが、それでも
視聴後の感想は「なんとなく、分かったような」というところに留まる。ちな
みに、ナッシュ均衡で知られるジョン・ナッシュ(1928〜)が統合失調症を患
ったことや、アラン・チューリング(1912〜1954)の死をリーマン予想に結び
つけるのは無理というものだろう。NHK、感動で盛り上げようとしてやり過
ぎ!
「“分かったような”、ではなく、せめて“分かった気分”ぐらいにはなり
たい!」と思うなら、それはもう翻訳ものの数学ノンフィクションの出番だ。
実は私もまた「分かった気分になりたい」と思って、リーマン予想に関する数
学ノンフィクションをかなり読んだのだが、その中でももっとも「分かった気
分にさせてくれた一冊」が、今回紹介する『素数に憑かれた人たち』だ。
『素数に憑かれた人たち』の特徴は、数式から逃げないことだ。一般向けに
平易にと考えると、いかに数式を使わずに説明するかというところに力を注ぐ
ことが多い。が、『素数に憑かれた人たち』は情け容赦なく数式を登場させる。
その一方で、登場させる数式は徹底的に説明する。それこそ四則演算で数学は
諦めましたという人にも理解できるまで、手を変え品を変え、説明していくの
だ。
本書最初のハイライトは、 136頁に始まるオイラーが見出した等式の証明だ
ろう。ゼータ関数は自然数に関する無限の項の和だ。これが、素数に関する無
限の項の積と等しいという等式である。著者はこの等式を、四則演算だけで証
明してみせる。
オイラーが見つけた等式は、自然数と素数とが密接に関係していることを示
している。これを理解するということは、素数と自然数の関連を実感すること
でもある。これこそは、リーマン予想理解の糸口であり、本書では「黄金の鍵」
と呼んでいる。「黄金の鍵」を突破口として、本書はリーマン予想の意味、そ
してリーマンが行おうとしていたことを、とにもかくにも最後まで解説してみ
せる。
辟易するほど懇切丁寧な数式の説明を緩和するのが、数学者達のエピソード
である。オイラー、フリードリヒ・ガウス(1777〜1855)、リーマン、ゴッド
フレイ・ハロルド・ハーディ(1877〜1947)、ジョン・リトルウッド(1885〜
1977)、ジョージ・ポリア(1887〜1985)、アトル・セルバーグ(1917〜2007)
などなど。「まあ、難儀な人達が難儀な問題に挑んできたものだ」と実感させ
てくれる。
ところで、冒頭に「日本の出版の世界では、フィクションがノンフィクショ
ンよりも圧倒的に強い」と書いた。実は日本では、数学小説と呼びうる作品が
ぽつぽつ書かれている。遠藤寛子『算法少女』(岩崎書店、1973年)あたりが
嚆矢であろうか。石原藤夫『宇宙船オロモルフ号の冒険』(1982年、早川書房)
は純粋数学ではなく、工学で使う応用数学を主題にした異色作だった。最近で
は、結城浩『数学ガール』(ソフトバンククリエイティブ、2007年)[*9]と
いうヒット作も出た。『数学ガール』はシリーズ化され、現在第5作まで刊行
されている。
では、リーマン予想を主題とした小説は、といえばこれがあるのだ。川端裕
人『算数宇宙の冒険』(実業之日本社、2009年)[*10] である。これがなか
なか甘酸っぱくも良質なジュブナイル小説で、東京郊外、桃山町という架空の
街を舞台に、小学生たちがリーマン予想に基づく数学ファンタジー世界の冒険
に巻き込まれていく。夏休み、転校生、夏祭りといった懐かしさを感じさせる
題材を、リーマン予想と組み合わせることで宇宙的な拡がりをもつ冒険譚に仕
上げた傑作である。
[本文中で紹介した書籍・番組等の紹介サイト(版元品切れ等を除く)]
*1 福岡伸一『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)
http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1498916
*2 村山 斉『宇宙は何でできているのか』(幻冬舎新書)
http://www.gentosha.co.jp/book/b5027.html
*3 ジョージ・G・スピーロ『ポアンカレ予想』(ハヤカワ文庫NF)
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/90373.html
*4 ドナル・オシア『ポアンカレ予想を解いた数学者』(日経BP社)
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/P83220.html
*5 マーシャ・ガッセン『完全なる証明』(文春文庫)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784167651817
*6 春日真人『100年の難問はなぜ解けたのか』(新潮文庫)
http://www.shinchosha.co.jp/book/135166/
*7 NHKスペシャル「魔性の難問」
http://www.nhk.or.jp/special/onair/091115.html
*8 DVD「リーマン予想・天才たちの150年の闘い」(NHKエンタープライズ)
http://www.nhk-ep.com/shop/commodity_param/ctc/+/shc/0/cmc/14625AA/
*9 結城浩『数学ガール』(ソフトバンククリエイティブ)
http://www.sbcr.jp/products/4797341379.html
*10 川端裕人『算数宇宙の冒険』(実業之日本社文庫)
http://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-55065-7
◆『素数に憑かれた人たち −リーマン予想への挑戦−』
ジョン・ダービシャー 著 松浦俊輔 訳/
四六判/482頁/定価2730円(税込み)/2004年8月発行/日経BP社/
ISBN978-4-8222-8204-2
http://bpstore.nikkeibp.co.jp/item/books/P82040.html
【松浦晋也さんのプロフィール】
ノンフィクション・ライター.1962年東京都出身.現在,PC Online に「人と
技術と情報の界面を探る」を連載中.主著に『われらの有人宇宙船』『増補
スペースシャトルの落日』『恐るべき旅路』『コダワリ人のおもちゃ箱』『の
りもの進化論』などがある.
ブログ「松浦晋也のL/D」 http://smatsu.air-nifty.com/
「松浦晋也の“読書ノート”」 Copyright(C) 松浦晋也,2013
次号は鹿野 司さんにご執筆いただきます.どうぞお楽しみに!
※本コラムは本メール配信約1か月後を目安に裳華房Webサイトに掲載します.
https://www.shokabo.co.jp/column/
───【裳華房のお役立ちサイト】───────────────────
◎ 研究所等の一般公開(4/23更新)
https://www.shokabo.co.jp/keyword/openday.html
◎ 学会主催 一般講演会・公開シンポジウム(4/24更新)
https://www.shokabo.co.jp/keyword/openlecture.html
◎ 若手 春・夏・秋・冬の学校(4/25更新)
https://www.shokabo.co.jp/keyword/wakateschool.html
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★★★★★★★ 【新連載】裳華房 編集子の“私の本棚” ★★★★★★★★
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編集部の有志が月替わりで,思い出の一冊やお薦めの書籍などを語ります.
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◇ 編集者という職業に導いてくれた宝物
◆『なるにはBOOKS41 編集者になるには』(植田康夫 著,ぺりかん社)
編集者のAです.私が編集者の道に進んだのは,ある一冊の本との出会いが
きっかけでした.
当時,大学で物理学を専攻していた私は,間もなく迎える就職活動を前に,
「将来,自分はいったい何になりたいのだろう,何がしたいのだろう」と,日
々悶々と悩んでいました.ただ,自分は地道にコツコツと進めていくような仕
事が性に合うだろうなぁということと,本が好きだということ,そして,物理
の知識を活かすことができる仕事がしたいなぁという漠然とした思いだけはあ
りました.でも,まだそのときは,「よし! 編集者になろう」なんて考えは
全くありませんでしたし,お恥ずかしながら,そもそも編集者という職種があ
ることすら,あまりよくわかっていませんでした.
そんなある日,地元の小さな図書館で一冊の本と運命的な出会いをしました.
それが,今の道に進むきっかけとなった,『編集者になるには』という本でし
た.当時は,まだ誰も借りた人がいなかったのか,手垢一つない,とてもきれ
いな本であったことを今でも鮮明に覚えています.
刊行が古いせいか,残念ながら現在では書店で手に入らないようですが、自
分の手元にある本を見ると,
T 企画と創造に生きる
U 編集者の世界
V 編集者になるには
という3つの構成からなっていて,小社のような学術系の出版社をはじめ,い
くつかの出版社を紹介しながら,実際にそこで働いている編集者の方々のイン
タビュー記事なども掲載し,出版社の業務や編集者の仕事について解説した内
容となっています.
私にとって特に参考になったことは,偶然にも,学術系の出版社の一つとし
て理工系の出版社が取り上げられ,学術書の編集者の仕事とやりがいについて
紹介されていたことでした.学術書の出版では時には一冊の本を刊行するまで
に10年単位の月日がかかることもあること,学術書の編集者は地道にコツコツ
と忍耐強く仕事を進めていくことが求められることなどが書かれていました.
そして,本書を読み終えたとき,正直言って,理工書の編集者という職種が存
在することにとても驚いたとともに,「これだ!」と,自分の進むべき道が見
つかったと思いました.
そんなわけで,物理の知識を活かしつつ,好きな本に創り手として携われる
仕事があるということを教えてくれた本書は,私にとって単に想い出の一冊と
いうことではなく,自分の将来をも決定づけるきっかけとなった,とても大切
な宝物となっています.
◆『なるにはBOOKS41 編集者になるには』
植田康夫 著/B6判/180頁/定価1121円(税込み)/1981年発行/
ぺりかん社/ISBN978-4-8315-0289-6(版元品切れ中)
http://www.perikansha.co.jp/Search.cgi?mode=SHOW&code=1000001240&word=%95%D2%8FW%8E%D2%82%C9%82%C8%82%E9%82%C9%82%CD
───【裳華房のお役立ちサイト】───────────────────
◎ 自然科学系の雑誌一覧 −最新号の特集等タイトルとリンク−
https://www.shokabo.co.jp/magazine/
◎ 大学・研究所・学協会の住所録とリンク
https://www.shokabo.co.jp/address.html
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★★★★★★ 【連載コラム】裳華房の“古書”探訪(第13回)★★★★★★★
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弊社の起源は,江戸時代,伊達藩の御用板所であった「仙台書林 裳華房」
に遡ります.ここでは,科学書の出版に力を入れ始めた大正時代から昭和時代
に刊行された書籍の中から毎回1冊ずつ取り上げて紹介いたします.
【バックナンバー】 https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/index.html
【裳華房の歴史】 https://www.shokabo.co.jp/history.html
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◆ 坂岡末太郎 著『最新鐵道工學講義』(全8巻)[明治45年〜大正4年]
https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1912sakaoka-raileng.htm
最近,鉄道に関する話題がニュース番組を賑わすことが多くなっています.
今回は,これまでご紹介した“古書”とは少し毛色の異なる,明治45年〜大正
4年に刊行された坂岡末太郎著『最新鐵道工學講義』(全8巻)を取り上げま
す.鉄道工学全般について体系的にまとめられた,たぶん日本で初めての著作
集です.
著者の坂岡末太郎は,“Boys, be ambitious”の言葉で広く知られるクラー
ク博士が初代教頭を勤めたことで有名な札幌農学校の出身です.
札幌農学校[*1]では,北海道の開拓に必要とされる人材を育成することを
目的に,農学を中心としながらも,測量や土木工学,機械工学なども教えられ
ていました(同校の工学科は後に東北帝国大学農学大学土木工学科に発展).
札幌農学校を明治27年(1894年)に卒業した坂岡は,北海道庁土木課の鉄道
技手・技師として北海道各地で鉄道建設に従事した後,明治32年から札幌農学
校の講師となり(明治35年からは専任の教授),鉄道工学の授業を受け持ちま
した.その講義ノートをまとめたのが『最新鐵道工學講義』です.
全8巻の総頁数が2200頁という大著ですが,各巻の構成を記しておきます.
第一巻 第一編 軌道論
第二巻 第二編 轉轍器及轍叉器論
第三編 隧道論
第四編 道床築造論
第三巻 第五編 水路論
第六編 線路測量論
第四巻 第七編 信號論
第五巻 第八編 停車場論
第六巻 第九編 車輛論
第十編 設備雑論
第七巻 第十一編 鐵道經濟論
第八巻 第十二編 鐵道力學論
鉄道建設という総合技術体系の中で,レールや枕木などの軌道に始まり,ト
ンネル施工技術や橋梁など水路への対処,測量,停車場や車両,また雪に対す
る防備から,果ては鉄道に関する経済まで,非常に広範囲にわたる分野が,平
易に執筆されています.また,必ずしも全頁を読破していないので断言できま
せんが,数式は必要最小限におさえ,けっして詳細な技術論に陥ることがない
ように,できるだけ実用に徹して書かれているようです.
また各所に欧米各国での鉄道の実例をあげて,世界の現状を紹介するととも
に,日本の法律や坂岡自身が実地の中で得た経験談が随所に挿入されています.
さらに,各巻の巻頭には,鉄道に関する欧米の詩句等と漢詩が掲載されてい
ます.とくに漢詩は,五巻と六巻を除き,すべて著者の自作! 当時の「教養
とは何か」の一端が垣間見える感じがします.
ご参考まで,第七巻の巻末に掲載された本書の宣伝文を載せておきます.
(原文に,一部振り仮名を挿入しています)
世界優勢國に、文明の象徴として、日一日攝ンせらるゝ鐵道に就て、
其技術の粋を抜き、之を未だ幼稚の域に在る、我鐵道界に投じ、以て
國家的經濟の基礎を鞏固(きょうこ)ならしめんとす。本書は著者が
曩(さき)に海外に於て研究せる深奥なる學理と多年實地に就て取得
せる經濟技術の蘊蓄を公表せんとする鐵道界唯一の好著也
札幌農学校で実際に教科書として用いられたほか,資料によれば,仙台工業
高等学校や名古屋工業高等学校,岩倉鉄道学校などの初等・中等土木教育機関
でも教科書として使われていたようです.
本著作集は国立国会図書館のデジタルアーカイブで全巻が公開されています
ので,鉄道に興味がある方は,現在の鉄道技術体系と比較する意味でもご覧に
なられてはいかがでしょうか.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000564774-00
[脚注]
*1 裳華房からは明治31年9月に,札幌農学校の沿革を記す『札幌農学校』
(札幌農学校学藝会 編纂)が出版されています.
https://www.shokabo.co.jp/history.html#sapo
※本稿執筆にあたり,坂岡氏の略歴などについて下記の文献等を参考にさせて
いただきました.記して感謝申し上げます.
・原口征人・日野 智・今 尚之・佐藤馨一(2001)明治期の北海道鉄道建設
と札幌農学校の鉄道技術教育,土木計画学研究,Vol.18 No.1,pp.25-32.
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00041/2001/18-0025.pdf
・今 尚之(2001)北海道帝国大学付嘱土木専門部文庫について
http://www.lib.muroran-it.ac.jp/kanpou/13/p_2.htm
◆『最新鐵道工學講義』(全八巻)
坂岡末太郎 著/菊判/平均270頁/裳華房
第1巻初版 明治45年[1912年]4月〜第8巻初版 大正4年[1915年]5月
【序言・緒言,目次,本文(1巻 抜粋11頁分)など】
https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1912sakaoka-raileng.htm
※記述の誤りなど,お気づきの点がありましたら m-list@shokabo.co.jp まで
御連絡ください.
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次号は2013年5月29日の配信予定です.どうぞお楽しみに! \\(^o^)//
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