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裳華房メールマガジン (Shokabo-News)
バックナンバー(No.300;2014年6月号)

禁無断転載 ※価格表記は配信当時のままです。
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆   Shokabo-News No.300                2014/6/3   裳華房メールマガジン 2014年6月号   https://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今回のご案内 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆  ◇ 2014年上半期の刊行書籍  ◇ 近刊    久保健雄・奥山輝大・上川内あづさ・竹内秀明 共著      『新・生命科学シリーズ 動物行動の分子生物学』    佐藤直樹 著『しくみと原理で解き明かす植物生理学』  ◇ 鹿野 司の“読書ノート”(12)    小林雅一 著『クラウドからAIへ』(朝日新聞出版)  ◇ 裳華房の“古書”探訪 (20)    日本鳥学会誌『鳥』2〜21号[大正4〜15年]  ◇ 裳華房 編集子の“私の本棚”(14)    アルバート&ベネット 共著『メジャーリーグの数理科学 上・下』     (丸善出版) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ Shokabo-News 会員の皆様  弊社のある東京周辺では、梅雨を通り越して真夏が来たような日が続いてい ます.皆様も熱中症などには十分にお気を付けください.  Shokabo-News 2014年6月号をお届けいたします.  おかげさまで、1998年10月15日に第1号を配信してから今号で通算300号にな りました.当初は,雑誌を刊行していたこともあり,月2回〜3回配信してい ましたので,15年強という期間でここまで積み上げることができました.ご登 録・ご購読いただいている皆様,大変ありがとうございます.  さて,今号では本年刊行した書籍の一覧,7月の近刊のほか,連載12回目と なる「鹿野司の読書ノート」では『クラウドからAIへ』(小林雅一著,朝日 新聞出版)を,「裳華房の“古書”探訪」では日本鳥学会の学会誌『鳥』(2 〜21号)を,「裳華房編集子の“私の本棚”」では『メジャーリーグの数理科 学』(アルバート&ベネット共著,丸善出版 )をご紹介します.  ご意見・ご感想を m-list@shokabo.co.jp までお寄せいただければ幸いです. (Twitterをお使いの方はアカウント @shokabo まで)  ※書籍の価格は,定価(税込)ではなく本体価格表示にしています.  ★ お知らせ ★ 1.「大学・短大・高専用教科書のご案内」   https://www.shokabo.co.jp/text.html 2.【講義担当の先生方へ】講義用 教授資料のご案内   https://www.shokabo.co.jp/textbook/text-tm.html 3.訂正表・正誤表や新しい演習問題など「書籍のサポート情報」.   https://www.shokabo.co.jp/support/index.html 4.工学書協会フェアを開催中!  ・京都産業大学 紀伊國屋書店BC(5/6〜6/30)  ・大阪大学生協 工学部店(6/1〜6/30)  ・大阪大学生協 豊中店(6/1〜6/30) ─────────────────────────────────── 【裳華房 新刊一覧】 https://www.shokabo.co.jp/book_news.html 【ご購入のご案内】  https://www.shokabo.co.jp/order.html ─────────────────────────────────── ★★★★★★★★★★★ 2014年上半期の刊行書籍一覧 ★★★★★★★★★★ 【化学分野】 ◆『結晶化学 −基礎から最先端まで−』(大橋裕二 著) https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3099-6.htm ◆『最新の有機化学演習 −有機化学の復習と大学院合格に向けて−』  (東郷秀雄 著) https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3100-9.htm ◆『少しはやる気がある人のための 自学自修用 有機化学問題集』  (粟野一志・瀬川 透 共編) https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3501-4.htm ◆『環境分析化学』(中村栄子 ほか共著) https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3098-9.htm ◆『窒素固定の科学 −化学と生物学からの挑戦−』(干鯛眞信 著) https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3502-1.htm 【生物学分野】 ◆『ベーシック生物学』(武村政春 著) https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5228-8.htm ◆『イチョウの自然誌と文化史』(長田敏行 著) https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5857-0.htm ─────────────────────────────────── 【裳華房 分野別書籍一覧】 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/0000.html 【正誤表などサポート情報】 https://www.shokabo.co.jp/support/ ─────────────────────────────────── ★★★★★★★★★★ 近 刊 案 内 (7月刊行予定) ★★★★★★★★★★ ◆ 『新・生命科学シリーズ 動物行動の分子生物学』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5858-7.htm 久保健雄・奥山輝大・上川内あづさ・竹内秀明 共著/ A5判/192頁/定価(本体2400円+税)/2014年7月刊行予定/ 裳華房/ISBN978-4-7853-5858-7 線虫,ショウジョウバエ,小型魚類,マウス,ミツバチを取り上げ,それぞれの 動物の行動を生み出す脳や神経系のはたらきについて,そこではたらく分子(遺 伝子やRNA,タンパク質)が調べられた研究成果に焦点を当てて解説. ◆ 『しくみと原理で解き明かす 植物生理学』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5229-5.htm 佐藤直樹 著/B5判/202頁/定価(本体2700円+税)/2014年7月刊行予定/ 裳華房/ISBN978-4-7853-5229-5 実際に動いているシステムとして植物の活動を理解するために,生きている植物 という基本に立ち返り,「なぜ」「どのように」という質問に答えることを目指 した.また,重要な項目について自習するための問題と,読者自身が手を動かし 実際の体験を通じて理解するための課題を設け,学習の一助とした. ※詳細は次号のShokabo-Newsでご紹介します. ★★★★★ 【連載コラム】鹿野司の“読書ノート” (第12回) ★★★★★ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  ノンフィクション・ライター/サイエンスライターの松浦晋也さんと鹿野司 さんに,お薦め書籍や思い出の1冊,新刊レビュー等をご執筆いただきます. 今月号のご担当は鹿野司さんです.  ・バックナンバーはこちら→ https://www.shokabo.co.jp/column/ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ◇ AI開発の現状と,未来の可能性に迫る? ◇ ◆ 小林雅一 著『クラウドからAIへ』(朝日新聞出版)  世界は今や、第三次AIブームらしい。  『クラウドからAIへ』を読んで、なるほどそういう事だったのかと気づか された。  AIはかつて、「死んだ」と揶揄された分野だ。それは、1980年代の第五世 代コンピュータ・プロジェクトが、結局実用的な応用に繋がらなかったことに 由来する。しかし21世紀に入ってから、アメリカの産業界主導でAIは日常の 中に浸透し、その成功が熱狂的なムーブメントを巻き起こしている。  日常の中のAIとは、たとえばグーグルの検索に使われたり、アマゾンのお 奨め、iPhoneのsiriなどの技術のことだ。  音声認識は、ほんの10年くらい前までは、雑音のない静かな場所で、大人の 声なら、なんとか認識するという程度だった。ところが、google音声アシスタ ントやsiriは、年齢性別を問わず誰の声も、かなりの雑音の中でさえ、高い精 度で認識できる。  この驚きの性能向上を可能にしたのは、かつては困難だった莫大な音声デー タを、ネットを介して収集できるようになったこと、つまりビッグ・データの 活用が可能になったことが大きい。また、以前の人工知能では、知的なルール を人間が考えて作り込むのが普通だったのだが、それを統計的な関係から導い たり、機械学習で創り出す手法が、想像以上に効果的なことがわかって、AI への期待を大きく膨らませている。  ビッグデータを制するものが、AI利用ビジネスを制するという思惑からの 巨大IT企業の動きや、どういう種類の技術に注目が集まっているか、さらに は今は付加価値のあるかなり知的な労働さえも、遠からずAIに取って代わら れるという予測など、この本には今のアメリカでの雰囲気が、様々な角度から 紹介されていて面白い。  今は夢が膨らんでいる状態のようだが、その背景には、2020年代にはAIが 人間の知能を超える「シンギュラリティ」がくると唱えるレイ・カーツワイル がグーグルにいることも大きいのだろう。  実際のAI技術の成功を見れば、アメリカでのこういった熱狂はなるほど理 解できる。しかし、それでもこの新しいAIがシンギュラリティに直結するか といえば、個人的にはそうはならないだろうと思う。  もちろん、これによって従来では考えられなかった優れた技術や意外な応用 が、いくつも登場するだろう。顔画像の認識は、すでに人間のレベルを超えて いるし、我々の日常をアシストしてくれる技術も、たくさん登場するはずだ。 また、アマゾンという特殊な企業だから可能なロングテール・ビジネスのよう な、莫大なデータが集まる所での最適化、効率化などにも有効だとは思う。  しかし、機械学習は莫大なデータを放り込めば、何でも答えてくれる魔法の 箱ではなくて、そこには限界がある。  ただ、その限界を熱狂の中で認識できなかったり、知っていてもあえて無視 して投機的な動きをするのも人間の営みだ。そういったある意味で混乱を伴っ た活発な動きがどう転がっていくかは、なかなか楽しげで興味深い。 【今回紹介した書籍】 ◆ 小林雅一 著『クラウドからAIへ         −アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場』   新書判/248頁/定価(本体780円+税)/2013年7月発行/   朝日新聞出版(朝日新書)/ISBN 978-4-02-273515-7   http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=15094 【鹿野 司さんのプロフィール】 サイエンスライター.1959年愛知県出身.「SFマガジン」等でコラムを連載中. 主著に『サはサイエンスのサ』(早川書房),『巨大ロボット誕生』(秀和シ ステム),『教養』(小松左京・高千穂遙と共著,徳間書店)などがある. ブログ「くねくね科学探検日記」 http://blog.blwisdom.com/shikano/       「鹿野 司の“読書ノート”」 Copyright(c) 鹿野 司,2014  次号は松浦晋也さんにご執筆いただきます.どうぞお楽しみに! ※本コラムは本メール配信約1か月後を目安に裳華房Webサイトに掲載します. https://www.shokabo.co.jp/column/ ───【裳華房のお役立ちサイト】─────────────────── ◎ 研究所等の一般公開(6/3更新) https://www.shokabo.co.jp/keyword/openday.html ◎ 学会主催 一般講演会・公開シンポジウム(6/3更新) https://www.shokabo.co.jp/keyword/openlecture.html ◎ 若手 春・夏・秋・冬の学校(6/3更新) https://www.shokabo.co.jp/keyword/wakateschool.html ─────────────────────────────────── ★★★★★★ 【連載コラム】裳華房の“古書”探訪(第20回)★★★★★★★ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  弊社の起源は,江戸時代,伊達藩の御用板所であった「仙台書林 裳華房」 に遡ります.ここでは,科学書の出版に力を入れ始めた明治時代後期代から昭 和時代に刊行された書籍の中から毎回1冊ずつ取り上げて紹介いたします. 【バックナンバー】 https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/index.html 【裳華房の歴史】  https://www.shokabo.co.jp/history.html 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ◆ 日本鳥学会誌『鳥』2号〜21号[大正4年〜大正15年]  今回は、書籍(単行本)ではなく雑誌(学会誌)をご紹介します。日本鳥学 会の学会誌『鳥』です。  筆者が、創刊当時の学会誌『鳥』が裳華房から発売されていたことを最初に 知ったのは、2001年秋に翌年刊行予定であった『これからの鳥類学』の打ち合 わせのために、当時京都大学教授であった山岸哲先生の研究室にお伺いした際 でした。  この『これからの鳥類学』は、2002年に日本鳥学会創立90周年記念出版とし て刊行されましたので(現在品切れ中)、学会との古い縁があったことにビッ クリしました。  日本における鳥類分野の唯一の学会である日本鳥学会は、明治45年(1912) 5月3日、東京・神田の学士会館に参集した7名によって創立されました。初 代会頭(現在の会長)は東京帝国大学理科大学(現在の東京大学理学部)動物 学教室の飯島魁教授。  3年後の大正4年(1915)5月26日に、会誌『鳥(Tori)』が創刊されまし た。誌名の『鳥』は飯島会頭が自ら決められたとのこと。初代の編集長は幹事 の内田清之助氏、2代目の編集長は黒田長礼氏。  発行は当然ながら「日本鳥學會」ですが、発売所は1号が丸善書店と東京堂 書店、2号より裳華房と東京堂書店、5号より裳華房のみが発売所となり、大 正15年5月発行の21号まで続きました(22号より発行・発売ともに日本鳥学会)。  裳華房が発売所になった経緯などは不明ですが、学会創立と同じ年にあたる 大正元年に、裳華房からは、内田清之助氏が所属していた農商務省農務局編 『海産保護鳥類圖説』や、黒田長礼著『世界の鴨』『世界の雁と鵠』(いずれ も日本鳥類学会臨時刊行物)などを刊行していますので、その縁によるものか もしれません。  大正6年には第2代会頭の鷹司信輔著『飼ひ鳥』、また内田清之助著『鳥類 講話』なども出版。大正11年には、学会創立10周年を記念して出版された『日 本鳥類目録』(上製100部、並製300部の限定出版)も裳華房から販売されまし た。  『鳥』の1号から1986年の第34巻4号(次号より『日本鳥学会誌』と改名) までの全号は、日本鳥学会のWebサイトにてPDFとして公開されているため、 http://ornithology.jp/cgi-bin/osj/jjo/content.cgi#tori_top ここでは特に創刊当時の記事の紹介などはしませんが、本文は縦書きで組まれ (昭和5年の30号まで)、また当初は種名を平仮名で表記していたことなどが 大きな特徴といえるかと思います。  1994年には、第二次世界大戦前に発行された1号から55号(1〜11巻)まで がアテネ書房より復刻版(「復刻『鳥』」全11巻・別巻1)として刊行されま した。(今回の執筆にあたり、奥付などの確認はこの復刻版を参照しています)  復刻版刊行に尽力された山岸哲日本鳥学会会長(当時)は、別巻に収められ た「『鳥』の復刻にあたって」の中で、次のように述べています。   先に述べた日本鳥学会発足時の中心人物3氏(引用者注:内田清之助、   鷹司信輔、黒田長礼)の興味は、少しずつ異なっていたようで、これが   その後のわが国の鳥学をバランスよく発展させていったひとつの要因で   はなかったろうか。   すなわち、その後、内田氏は農林省で経済的利用保護の分野で業績をあ   げたのに対し、鷹司氏は鳥の飼育に特別の興味を示し、(中略)黒田長   礼氏は、まさに鳥学の本道である科学的研究(主に分類学や生態学)に   半生を捧げ、今回の復刻版にみるように、「鳥」に膨大な数の論文を投   稿し、日本の鳥学の牽引車となった。  裳華房は、学会誌『鳥』の発売だけでなく、ここに述べられた3氏の著書も (上述したように)数多く刊行しておりますので、(初期の)日本の鳥学の発 展にいささかなりとも寄与しえたのではないかと思います。  なお、明治時代後期には、裳華房からは日本動物学会『動物學雑誌』および 日本植物学会『植物學雑誌』も発売しておりましたので、これらも機会があれ ばご紹介したいと思います。  ◆『鳥』 2号(大正4年12月)〜21号(大正15年5月)   日本鳥学会 発行/裳華房 発売/菊判 ※本稿を執筆するにあたり、日本鳥学会のWebサイト、および「復刻『鳥』」  等を参考にさせていただきました。誠にありがとうございました。 ※記述の誤りなど、お気づきの点がありましたら m-list@shokabo.co.jp まで  御連絡ください。 ───【裳華房のお役立ちサイト】─────────────────── ◎ 自然科学系の雑誌一覧 −最新号の特集等タイトルとリンク−(5/22更新) https://www.shokabo.co.jp/magazine/ ◎ 大学・研究所・学協会の住所録とリンク https://www.shokabo.co.jp/address.html ─────────────────────────────────── ★★★★【連載コラム】裳華房 編集子の“私の本棚”(第14回) ★★★★★ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  編集部の有志が月替わりで,思い出の一冊やお薦めの書籍などを語ります. 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ◇ 右手にビール,左手に電卓!? 統計学的見地から野球を観るススメ ◆『メジャーリーグの数理科学 上・下』     (アルバート&ベネット共著,丸善出版)  日本のプロ野球ではセ・パ交流戦真っ只中.普段打席に立たないパシフィッ クリーグの投手が打撃を行ったり,普段は控えのセントラルリーグの打者が指 名打者としてスタメンに名を連ねたりと,ファンにとっては見所があり楽しみ ですよね!  おっと,失礼いたしました.前口上が長くなってしまいました.編集者のC です.今回は,統計学の啓蒙書をご紹介します.そのテーマは“セイバーメト リクス”に関する内容です.  本書は,“シュプリンガー数学リーディングス”のシリーズの一環として刊 行されたもので,本シリーズの本書以外の書籍を見ると,数学者の黒川重信先 生,砂田利一先生等が執筆を担当されています.その中で異彩を放つこの2冊 は,訳者が慶應大学野球部で主将を務めた方,監修者が元野球日本代表監督で, 現在,社会人野球・西濃運輸の監督を務めている等,野球色の濃い本となって います.多分,日本で“セイバーメトリクス”が紹介された最初期のものでし ょう.  セイバーメトリクスとは,現在まで蓄積された膨大なデータ(いわゆるビッ グデータの範疇に入ると思います)を基に,さまざまな指標で数値化して統計 学的に解析することで,選手やチームの評価や戦略を考える分析です.これら は,ドラフトやトレードといったチーム編成等に活かされます.例えば,トレ ードをしたところ,部外者からは「相手チームから獲得した選手は,自チーム から放出した選手よりも打率が低くて失敗した」と評価されていても,上記の 解析によって四死球をも含んだ出塁率は上であったので,実は,こちら側が得 をしていた,というような見方があります(多少,単純化しすぎてしまいまし たが).  さらに言えば,実際のさまざまな戦況に応じた最適な戦術も提供してくれま す.無死1塁で走者を盗塁させるときに,得点数を最大にさせる場合(試合序 盤〜中盤において,相手よりも多くの点を取って試合を有利に進めたいときに 相当するでしょう)と,得点機会を最大にしたい場合(試合終盤で,なんとし ても1点を取り同点やサヨナラゲームとしたいときに相当します)では,起用 するべき選手の盗塁成功率の下限に違いが出てくるため,単に俊足だけではな く,盗塁成功率も考慮して起用しなくてはなりません.  という具合に,野球を観戦する上で全く違った新たな視点を与えてくれます. ただ,残念なことに,本書に出てくるデータはすべてメジャーリーグのもので, そのまま数値をプロ野球に当てはめることはできませんが,大まかな考え方は 同じです.ですので,データ好きの野球ファンの琴線に触れることは確実です.  さて,日本で初めて組織的に“セイバーメトリクス”を導入した球団といえ ば,私が記憶する限りでは北海道日本ハムファイターズではないでしょうか? 確か2005年頃ですから,本拠地を札幌に改めて,監督にトレイ・ヒルマン氏, GMに高田繁氏の布陣の頃です.その結果,2006,2007,2009,2012年のリー グ制覇(2006年は日本一も達成)に繋がったとも考えられます.エースピッチ ャー,四番打者集めができる資金力豊富な球団は限られていますし,この経済 情勢も鑑みると,限られた資金力で効率よく戦力を整えやすく,なおかつ確率 の高い作戦が立てやすいデータ解析法は,日本球界でもじわじわと広まってい く感じがします.  本書は,数学が全くの不得手の方には多少厳しい面は否めませんが,本文中 に出てくるメジャーの名選手の簡単な経歴を側注に掲載,下巻冒頭の長嶋茂雄 氏によるスペシャルコラム,下巻巻末には,日本が生んだ不世出の2大スター であるイチロー選手と松井秀喜選手をセイバーメトリクスから見比べてみる等, 一度は読んでみたい内容が盛り込まれています.  なお本書は,元々はシュプリンガー・ジャパン株式会社より出版されていま したが,発行元の和書撤退によって,現在は丸善出版から刊行されています. ◆『シュプリンガー数学リーディングス第2巻 メジャーリーグの数理科学 上』   J.アルバート,J.ベネット 共著/加藤貴昭 訳/後藤寿彦 監修/   248頁/定価(本体2700円+税)/2004年8月発行/丸善出版/   ISBN978-4-621-06310-1   http://pub.maruzen.co.jp/book_magazine/book_data/search/9784621063101.html ◆『シュプリンガー数学リーディングス第3巻 メジャーリーグの数理科学 下』   J.アルバート,J.ベネット 共著/加藤貴昭 訳/後藤寿彦 監修/   241頁/定価(本体2700円+税)/2004年9月発行/丸善出版   ISBN978-4-621-06216-6   http://pub.maruzen.co.jp/book_magazine/book_data/search/9784621062166.html ─────────────────────────────────── 次号は2014年7月2日の配信予定です.どうぞお楽しみに! \\(^o^)// ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ★ Shokabo-Newsの配信停止・アドレス変更は下記URLよりお願いします ★ https://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html メールマガジンのご意見・ご感想はm-list@shokabo.co.jp まで. ─────────────────────────────────── 自然科学書出版 (株)裳華房 〒102-0081 東京都千代田区四番町8-1 Tel:03-3262-9166 Fax:03-3262-9130 電子メール:info@shokabo.co.jp URL:https://www.shokabo.co.jp/  Twitterアカウント:@shokabo 【個人情報の取り扱い】 https://www.shokabo.co.jp/policy.html ─────────────────────────────────── Copyright(c) 裳華房,2014      無断転載を禁じます.



         

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