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裳華房メールマガジン (Shokabo-News)
バックナンバー(No.338;2017年9月号 新刊4点ほか)

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆   Shokabo-News No.338                2017/9/27   裳華房メールマガジン 2017年9月号   https://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ★目次★ ─────────────────────────────────── 【1】新刊案内    『エッセンシャル 統計力学』『微分積分リアル入門』『反応速度論』    『現代の化学環境学』 【2】連載コラム 松浦晋也の“読書ノート”(31):    『未完のファシズム』(片山杜秀 著,新潮選書) 【3】連載コラム 裳華房 編集子の“私の本棚”(49):    『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』(文春新書) 【4】連載コラム「数学者的思考回路 −夢と妄想のはざま−」最終回のご案内 【5】お知らせ&編集後記 ─────────────────────────────────── ※配信が遅れましたことをお詫び申し上げます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【1】新刊案内(2017年8〜9月刊行) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●『エッセンシャル 統計力学』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-2255-7.htm 小田垣 孝 著/A5判/218頁/定価(本体2500円+税)/2017年8月発行/ 裳華房/ISBN978-4-7853-2255-7 C3042  初めて統計力学を学ぶ人のために,統計力学の基本的な考え方を体系的に解 説した.そのため,取り上げるテーマを精選し,初心者がスモールステップで 学べるように各章の順序も工夫を施した.  統計力学では,微視的状態の数を求めるというなじみの薄い手続きが必要と なるため,物理学を専攻する学生にとっても取りかかりにくい科目となってい る.そこで本書では,基本公式の導出をできるだけ簡明に行い,またバーチャ ルラボラトリー(Webを用いたシミュレーション)とも連係させて直観的な理 解を助けるようにした. 【主要目次】 プロローグ/熱力学から統計力学へ/ミクロカノニカルアンサンブル/カノニ カルアンサンブル/いろいろなアンサンブル/ボース粒子とフェルミ粒子/理 想ボース気体/理想フェルミ気体/相転移の統計力学 ●『微分積分リアル入門 −イメージから理論へ−』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1572-6.htm 高橋秀慈 著/A5判/256頁/定価(本体2700円+税)/2017年9月発行/ 裳華房/ISBN978-4-7853-1572-6 C3041  本書では微分積分学について「どうしてそのようなことを考えるのか」とい う動機から始め,数式や定理のもつ意味合いや具体例までを述べ,一方,今日 完成された理論のなかでは必ずしも必要とならないような事柄も説明すること によって,ひとつの数学理論が出来上がっていく過程や背景を追跡した.  ε−δ論法のような難解とされる数学表現も「言葉」で解説し,直観的イメ ージを伝えながら,数式や定理の意義,重要性を述べた.  これまでにない,微分積分学の「超」入門書! 【主要目次】 第I部 基礎と準備(不定形と無限小/微積分での論理/ε-δ論法) 第II部 本論(実数/連続関数/微分/リーマン積分/連続関数の定積分/  広義積分/級数/テーラー展開) ●『物理化学入門シリーズ 反応速度論』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3420-8.htm 真船文驕E廣川 淳 著/A5判/236頁/定価(本体2600円+税)/ 2017年9月発行/裳華房/ISBN978-4-7853-3420-8 C3043  反応速度論の基礎から反応速度の解析法,固体表面反応,液体反応,光化学 反応など,幅広い話題を丁寧に解説した反応速度論の新たなるスタンダード. 付録では発展的内容も扱っており,初学者から大学院生まで,反応速度論を学 ぶ礎となる一冊. 【主要目次】 反応速度と速度式/素反応と複合反応/定常状態近似とその応用/触媒反応/ 反応速度の解析法/衝突と反応/固体表面での反応/溶液中の反応/光化学反 応  付録 ●『現代の化学環境学 −環境の理解と改善のために−』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3513-7.htm 御園生 誠 著/A5判/246頁/定価(本体2300円+税)/2017年9月発行/ 裳華房/ISBN978-4-7853-3513-7 C3043  有限な地球という制約条件のなかで,豊かな社会をいかに維持発展できるか. 科学的に信頼のおけるデータだけをもとに,地球環境の現状を理解し,環境問 題を解決するための具体的な方策を提言する.  『化学の指針シリーズ 化学環境学』(2007年)の刊行から10年.本書は, 同書をベースにしつつもできうる限り最新のデータを組み込み,大幅に再編・ 改訂・加筆したもので,化学者,化学技術者の立場から地球環境問題と真摯に 取り組み,具体的提言を続けてきた著者の,集大成ともいえる一冊である. 【主要目次】 第1部 現代の環境問題と化学環境学(現代の環境問題の特徴/環境問題の背景 /環境問題の考え方) 第2部 自然環境の現状と課題(大気/土地・水・生物 /生活圏とその課題) 第3部 エネルギー資源と材料資源(エネルギー資源/ 材料資源) 第4部 環境の維持・改善のための技術−化学技術を中心に−(グ リーンサステイナブルケミストリー(GSC)/化学物質のリスク評価と管理/ 廃棄物処理とリサイクルの化学技術/環境触媒/地球温暖化対策) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【裳華房 新刊一覧】 https://www.shokabo.co.jp/book_news.html 【ご購入のご案内】  https://www.shokabo.co.jp/order.html 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2】[連載コラム]松浦晋也の“読書ノート” (第31回) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ノンフィクション・ライター/サイエンスライターの松浦晋也さんと鹿野司 さんに,お薦め書籍や思い出の1冊,新刊レビュー等をご執筆いただきます. 今月号のご担当は松浦晋也さんです.  ・バックナンバーはこちら→ https://www.shokabo.co.jp/column/ ─────────────────────────────────── ◆ この上ない正気と理性が導き出す、最悪の狂気 ◆ ● 片山杜秀 著『未完のファシズム』(新潮選書)  日清戦争(1894〜1895)と日露戦争(1904〜1905)を戦った明治の日本は、 客観的かつ合理的に思考していた――この認識は司馬遼太郎が『坂の上の雲』 を執筆したことで、一般的になった。では、その正気と理性が、なぜ40年後に 戦陣訓の「生きて虜囚の辱を受けず」の一節、あるいは玉砕や特攻のような行 為に見ることができる狂気へと崩れ落ちていったのか。司馬遼太郎は1939年に 起きたノモンハン事件を描くことで狂気の源流へと迫ろうとして、取材を繰り 返したが、ついに執筆することはできなかった。  実際、この上なく合理的で正気の戦争を戦った経験を持つ国が、たったの40 年で狂気としか思えない戦争をするというのは、大変奇妙な話だ。  『未完のファシズム』この問題に迫る大変優れた論考だ。著者は、ファシズ ム史の研究を専攻する政治学者。一般にはむしろ、NHK-FMのクラシック音楽番 組「音楽の迷宮」などで膨大な知識を独特の語り口で披露する、音楽評論家と して有名だろう。音楽面でも著者の興味は、明治の洋楽の受容から始まった日 本人の音楽作品に集中している。様々なコンサートやCDをプロデュースし、 大澤壽人(1906〜1953)や須賀田礒太郎(1907〜1952)などの“忘れられた作 曲家”を発掘し、作品を甦演するといった仕事もしている。  本書は、まず第一次世界大戦(1914〜1918)に対する当時の日本の知識人の 反応から始まる。作家の小川未明(1882〜1961)は、海の向こうでかつてない 大戦争が起きているということを、周囲の人々が全く実感していないことに懊 悩する。一方、ジャーナリストの徳富蘇峰(1863〜1957)は、1920年になって 『大戦後の世界と日本』という大著を世に問うて、大戦争によって欧米列強に は強烈な競争原理が働いて発展しつつあると指摘し、日本はそこから脱落して いると警告した。世界を巻き込む大規模な戦争に対して、知識人たちは何かが 変化する兆しを感じ取っていたのだった。  では軍はどうだったのか。著者は、第一次世界大戦における、日本陸軍の青 島要塞攻略戦に目を向ける。青島は、ドイツの租借地であり要塞化されていた。 当時の日本は、日露戦争にあたって締結した日英同盟が有効だったので、イギ リス・フランス・ロシアなどの連合国側として参戦し、極東の青島にあるドイ ツの要塞を攻撃したのである。  陸軍には、日露戦争の旅順要塞攻略戦では歩兵の突撃を繰り返し、多数の戦 死者を出したことに対する反省があった。このため陸軍は、日露戦争後に要塞 攻略戦を徹底的に研究して正攻法を確立していた。青島攻略戦には、研究成果 の確認という側面があった。  要塞攻略の正攻法、それは物量戦だった。敵よりも多くの砲と弾丸を用意し、 集中して要塞に打ち込んで機能を喪失させ、しかるのちに歩兵を送り込んで占 領する。指揮官の勇気も兵士の決死の献身も必要ない。必要なのは最先端兵器 を敵に優る物量で用意し、的確に輸送することだけ。近代戦の要諦そのものだ。 この時点での陸軍は、驚くほどまともで正気だったのである。  青島攻略戦は、陸軍の想定通りに進行する。山東半島への上陸後、2か月も の時間を物資の輸送と兵站の整備に使い、いざ進撃を開始するとたった1週間 で青島要塞を陥落させた。だが、この時、軍は正気でも国民が正気ではなかっ た。新聞は「慎重作戦」と揶揄し、人々は「陸軍は軟弱ドイツ軍に、突撃もせ ずに時間ばかりかけた」と嗤ったのである。  ここから著者は、様々な軍人が著した著書を紐解き、彼らの経歴と組み合わ せていくことで、正気で正攻法の青島要塞攻略戦、および第一次世界大戦の経 緯から、彼らが何を感じ、何を理解し、どのように対応しようとしたかを追跡 していく。  青島攻略戦は、近代戦の要諦と言うべき物量戦で圧勝した。また、第一次大 戦には多数の軍人が観戦武官として欧州の戦場に赴き、何が戦場で起きたかを 視察した。彼らは一様に「これからの戦争は、国と国とが総力を挙げてぶつか る総力戦になる。しかも戦闘では、物量を用意できたほうが勝つ。すなわち経 済力に勝る国が勝つことになる」という認識に到達する。まったくもって正気 かつ論理的で、なにもおかしいところはない。  が、ここで軍人たちはもう一つの現実にぶつかる。日本は経済的な小国であ る、という事実だ。第一次世界大戦がもたらした特需によって日本は好景気と なり、経済的にも成長した。が、それだけでは欧米列強やソ連に互するには全 然足りない。なによりも日本は資源小国であり、戦争に必要な資源を自給でき ない。  その意味は明確である。戦争の勝敗が経済力で決まるようになった以上、こ のままいけば日本は次の戦争では必ず敗北する。  第一次世界大戦は、世界全体を巻き込む巨大な戦争だった。となれば、次の 戦争はそれと同等以上の世界大戦となるかもしれない。明治維新以降、日本は 10年間隔で戦争を経験してきた。このため大正から昭和にかけての軍人たちに とって「戦争のない長期的な平和が続く」可能性は、想像力の外にある。「10 年かそこらのうちに、確実に次の戦争、それも世界大戦が起きるから、備えね ばならない」と考える。  しかし――次の世界大戦で、日本は確実に敗北する――勝利することが仕事 の軍人たちにとって耐え難いほど過酷な現実が突きつけられたのである。  次なる世界大戦で、日本は絶対に勝てない。  それでも、勝てない状況下で勝つためにはどうしたらいいか――ここから軍 人たちの対応は二つに別れる。ひとつは「勝てない戦はしない」という行き方 だ。彼らは日本が勝てる戦争の形式は局地戦だけであると考える。具体的には ソ連との国境紛争だ。これだけは勝つ必要があるが、その他の戦争は徹底的に 回避しなくてはいけない。  局地戦を短期即決で確実に勝利するには、どうしたら良いか、軍人たちはそ のヒントを、第一次世界大戦で40万人のロシア軍を15万人のドイツ軍が撃破し たタンネンベルクの戦いを観戦することで得る。この戦いでは、分散したロシ ア軍を、集中したドイツ軍が機動力を生かして一つずつ包囲し、各個撃破した。  各個撃破――これだ。そのためには兵の士気を高く保つ必要がある。  そして、精鋭の兵を常備するための精神主義が発生する。この精神主義は、 「勝てない戦はしない」という現実主義と表裏一体である。が、軍人は職業柄 「勝てない」とは言えない。結果、現実主義の部分は流布することなく、精神 主義だけが社会に流布し、増殖していくことになる。著者は、この流れが後に 軍を二つに分かつ派閥の一方、皇道派につながっていくと指摘する。  もう一つが、「経済力がないのなら高度経済成長すればいい」という考え方 だ。日本が経済成長するためには、資源のある植民地と、経済成長を達成する だけの長い平和な時間が必要である。この方向性が、皇道派に対立するもう一 つの派閥、統制派となっていく。石原莞爾(1889〜1949)や板垣征四郎(1885 〜1948)などが1931年に満州事変を起こした理由もここにある。石原莞爾は事 変で満州国を成立させた後、少なくとも30年以上は平和を保って日本と満州国 を高度経済成長させなくてはいけないと考えていた。  軍内部の皇道派と統制派の確執は、1936年の二・二六事件をきっかけに統制 派の勝利で決着する。しかし、それまでに皇道派は「短期の局地戦に勝つため の精神主義」を「統帥綱領」や「戦闘綱要」といった軍の基本的文書に書き込 んでおり、その内容はまんま統制派に引き継がれた。その一方で、皇道派の前 提であった「勝てない戦はしない」という語られざるポリシーは、引き継がれ ることなく消滅してしまった。  文書化された精神主義は、「勝てない戦はしない」という隠された制約条件 から解放されて自律運動を始め、ついには玉砕や特攻といった無意味な死をも 強いるほどに過激化していくのである。  加えて著者は、皇道派も統制派も共通の問題をはらんでいたと指摘する。軍 人でありつつ、「勝てない戦争はしない」「経済成長すればいい」と政治に足 を踏み込んでいたことだ。戦争が総力戦になった以上、戦争は戦争技術者であ る軍人の管轄ではなく、政治の管轄となる。戦争を行うのも行わないのも決め るのは政治的意志だし、総力戦を遂行するための国家総動員体制を構築するの も経済政策で国家経済を成長させるのも政治の仕事である。  かくして軍人たちの政治への介入が始まる。  さらに著者は、明治憲法が持っていた二重性が、こうした軍人たちの政治的 な動きの邪魔をして、結果的に彼らの政治への介入を激化させたことを示す。  明治憲法は、天皇を中心とした中央集権的な内容だったと思われているが、 実際には国内各勢力を巧妙に分断した分権的な内容だったというのだ。ただし、 その分権制は、裏から「元勲」という非公式な最高権力が全体をコントロール することを前提としていた。明治維新に関与した元勲たちは、昭和初期には、 ほとんどこの世を去っていた。必死になって次なる世界大戦に向けて総力戦の 体制を作ろうとする軍人たちの前には、総動員体制を作りにくい分権的な明治 憲法だけが残っていたのだ。結果、軍人たちは過度に政治に関与し、様々な職 を兼職し、日本を軍事国家化することで国家総動員体制を作ることになるので ある。  著者は、総力戦のための国家総動員体制は、日本においては未完に終わった と指摘する。書名『未完のファシズム』の由来である。  なんという恐ろしい論考だろうか。個々の軍人たちは優秀であり理性的であ り、現実がきちんと見えている。思考のステップも、一つひとつは合理的で間 違いはない。ところが、ワンステップずつ現実に即して思考し、理性的に行動 していくほどに、狂気の結果へと近づいていくのである。  本書を通読すると、正気から狂気がしたたり落ちるプロセスに、二つの要素 が関係していることが見えてくる。一つは軍人という職業だ。彼らは「勝てま せん」とは言えない。いかに絶望的な状況であっても「勝てない」とは言えな いため、彼らは勝つ方策を求め、その中から極度の精神主義が発生した。  もう一つは、日本社会における建て前と本音の乖離だ。精神主義は「勝てな い戦はしない」という本音から導出されるが、本音は隠され、建前である精神 主義のみが流布し、増殖していく。明治憲法の、分権体制を元勲という“本音” がコントロールする構造も同様だろう。  よくよく考えると、そもそも「軍人が“勝てない”とは言えない」ことも、 本音と建て前の乖離なのだ。戦争技術者である軍人たちが「ダメです。何をど うしても勝てません」と本音を明言できたならば、政治家らはそれに対応して 新たな日本の進路を模索できたかもしれない。  身も蓋もない本音を明確に口にして、共有の知識とし、議論の前提とする仕 組みが、戦前日本には欠けていた。この欠如が、正気で理性的な現状認識と行 動から、狂気を絞り出すフィルターとして機能していたのである。  さらに、軍人たちは軍人であるが故に「そもそも戦争をしない/次の総力戦 に巻き込まれない日本を作る」という選択肢を想像することすらできなかった、 ということも指摘できるだろう。  満州国を作ることで経済成長を志向した石原莞爾にしても、経済成長はあく まで彼の想定する世界最終戦争という総力戦を勝利するための道具だった。 「経済成長によって長期の平和を維持する」という発想はなかった。彼は、な んの証拠もなく、世界最終戦争は日本とアメリカの戦いになると信じ込んでい た(敗戦後、石原はそれが誤りであったと反省している)。しかし、例えばア メリカとの戦争を回避するための経済成長というのもあり得たかもしれない。 日本と満州国の経済成長が、アメリカにとっても利益となるものへと持ってい けば――満州の工業化にアメリカ資本を大規模に導入するとかしていれば―― あるいは、対米戦争そのものを回避できたかもしれない。  本書は、真っ当な頭脳と冷静な正気から、狂気が導き出される過程を露わに した。さあ、私たちはこれを教訓として未来に向かわねばならない。  例えば、関係各国がすべて正気で合理的な判断をした結果、北朝鮮を巡る有 事が勃発するというような事態は、なんとしても避けねばならないのだ。 【今回紹介した書籍】 ● 『未完のファシズム −「持たざる国」日本の運命−』 片山杜秀 著/四六判変形/346頁/定価(本体1500円+税)/2012年11月刊行/ 新潮社/ISBN 978-4-10-603705-4 http://www.shinchosha.co.jp/book/603705/ ※電子書籍版もあります。 【松浦晋也さんのプロフィール】 ノンフィクション・ライター.1962年東京都出身.現在、日経ビジネスオンラ インで「宇宙開発の新潮流(*1)」を、「自動運転の論点」で「モビリティで 変わる社会(*2)」を連載中。近著に『母さん、ごめん。−50代独身男の介護 奮闘記−』(日経BP社)がある.その他、『小惑星探査機「はやぶさ2」の挑 戦』『はやぶさ2の真実』『飛べ!「はやぶさ」』『われらの有人宇宙船』 『増補 スペースシャトルの落日』『恐るべき旅路』『のりもの進化論』など 著書多数. Twitterアカウント https://twitter.com/ShinyaMatsuura *1 http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20101208/217467/ *2 http://jidounten.jp/archives/author/shinya-matsuura       「松浦晋也の“読書ノート”」 Copyright(C) 松浦晋也,2017  次号は鹿野司さんにご執筆いただく予定です.どうぞお楽しみに! ※本コラムは本メール配信約1か月後を目安に裳華房Webサイトに掲載します. https://www.shokabo.co.jp/column/ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【裳華房 分野別書籍一覧】https://www.shokabo.co.jp/mybooks/0000.html 【正誤表などサポート情報】https://www.shokabo.co.jp/support/ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【3】[連載コラム]裳華房 編集子の“私の本棚”(第49回) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  編集部の有志が月替わりで,思い出の一冊やお薦めの書籍などを語ります. ─────────────────────────────────── ◆ 偉大なるあの方の“何者でもなかった頃の話” ◆ ●山中伸弥 羽生善治 是枝裕和 山極壽一 永田和宏  『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』(文春新書)  ――あんな偉い人でも、なんだ自分と同じじゃないかということを感じ取っ  てほしい(永田和宏先生)  まえがきや帯にも登場するこんな想いを元に,歌人で細胞生物学者の永田先 生によって京都産業大学で開催された講演・対談シリーズ「マイ・チャレンジ  一歩踏み出せば,何かが始まる!」.この講演を書き起こしたのが,今回ご 紹介する『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』です.  本書に登場するのはiPS細胞の山中伸也教授、将棋の羽生善治氏、映画の 是枝裕和監督、京大総長の山極壽一教授という,一冊の本に名を連ねているだ けでもびっくりするような豪華メンバーです.そのような方々が若かりし頃の 失敗や挫折,苦悩の日々について語って下さっています.掲載されているエピ ソードにはすでに広く知られているものもありますが,ご自身の口から目の前 の学生たちに向けて語られたことで,インタビュー記事やご執筆文章とはまた 違った熱と重みが生じているような気がしてなりません.講演に引き続いての 永田先生との対談も収録されており,より突っ込んだお話まで伺うことができ ます.  各界を牽引するトップランナー達の「何者でもなかった頃の話」を通じて, 学生そしてわたしたちにも一歩を踏み出す勇気が生まれるのではないでしょう か.一度限りの講演に留まらずに広くみなさんにお届けしたい,そんな一冊で す.(編集部D) 【今回紹介した書籍】 ●『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』 山中伸弥 羽生善治 是枝裕和 山極壽一 永田和宏/ 新書判/208頁/定価(本体700円+税)/2017年2月発行/文藝春秋社/ 978-4-16-661118-8 http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166611188 ※電子書籍版もあります. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【4】連載コラム「数学者的思考回路 −夢と妄想のはざま−」最終回のご案内 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  裳華房ウェブサイトで2年間にわたり連載してまいりました,2人の数学者 によるコラム  「数学者的思考回路 −夢と妄想のはざま−」  https://www.shokabo.co.jp/column-math/ は8/3に掲載した第18回で最終回を迎えました.  最終回:第18回 本〜先輩からの贈り物〜  https://www.shokabo.co.jp/column-math/column-math0018.html  バックナンバーともども是非,ご一読をお願いいたします. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【5】お知らせ&編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇お知らせ ─────────────────────────────────── 1.訂正表・正誤表や新しい演習問題など「書籍のサポート情報」.   https://www.shokabo.co.jp/support/index.html 2.電子書籍のご案内   https://www.shokabo.co.jp/ebooks/index.html 3.2017年度版の裳華房「総合図書目録」   https://www.shokabo.co.jp/catalogue/index.html ─────────────────────────────────── ◇編集後記 ───────────────────────────────────  今年もノーベル賞発表の時期が近づいてきました.どんなテーマでどなたが 受賞されるのでしょうか.今から発表が楽しみです.                                (TK) ─────────────────────────────────── 次号は2017年10月20日の配信予定です.どうぞお楽しみに! \\(^o^)// ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★ Shokabo-Newsの配信停止・アドレス変更は下記URLよりお願いします ★ https://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html メールマガジンのご意見・ご感想は m-list@shokabo.co.jp まで. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 自然科学書出版 (株)裳華房 〒102-0081 東京都千代田区四番町8-1 Tel:03-3262-9166 Fax:03-3262-9130 電子メール:info@shokabo.co.jp URL:https://www.shokabo.co.jp/  Twitterアカウント:@shokabo 【個人情報の取り扱い】 https://www.shokabo.co.jp/policy.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(c) 裳華房,2017      無断転載を禁じます.



         

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