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Shokabo-News No.352 2019/3/27
裳華房メールマガジン 2019年4月号
https://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html
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★目次★
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【1】新刊案内
『植物生理学』『Introduction to Calculus in English』
【2】連載コラム 松浦晋也の“読書ノート”(39):
『戦火のシンフォニー』(ひの まどか 著,新潮社)
【3】連載コラム 裳華房 編集子の“私の本棚”(59)
『チャート式シリーズ 数学難問集100』(数研出版)
【4】お知らせ&編集後記
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【1】新刊案内
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●『植物生理学 −生化学反応を中心に−』
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5239-4.htm
加藤美砂子 著/B5判/192頁/2色刷/定価(本体2700円+税)/
2019年4月発行/裳華房/ISBN 978-4-7853-5239-4 C3045
※2019年4月18日頃発売予定です.
植物生理学は最近,ますます面白くなってきた.なぜならば,科学技術の進
歩により,植物生理学の研究にもゲノム解析を初めとする新しい手法が怒濤の
ように押し寄せ,分子レベルでの新しい発見が相次いでいるからである.
本書は植物が生きていくためのしくみを知るという植物生理学の本質を,多
数の図を示しながら,大学の初学者向けにわかりやすく解説したものである.
さらに,植物生理学の研究の先には何があるのか,研究の社会実装という観点
から,バイオテクノロジーの技術や藻類を用いた有用物質生産についても紹介
した.
【主要目次】
1.植物生理学を学ぶための基礎知識 2.植物の細胞 3.光合成 4.呼吸
5.糖質の代謝 6.脂質の代謝 7.無機栄養の代謝 8.二次代謝 9.代謝
産物の輸送 10.植物ホルモン 11.成長の調節 12.植物生理学は未来を拓
く:バイオテクノロジー
●『Introduction to Calculus in English −英語で学ぶ微分積分学−
[POD版]』
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-0641-0.htm
ヤン・ブレジナ,柳田英二 共著/B5判/286頁/定価(本体3800円+税)/
2019年3月発行/裳華房/ISBN 978-4-7853-0641-0 C3041
※本書は,POD版(オンデマンド版)および電子書籍のみの発売になります※
微分積分学を英語で学びたい人のための教科書.“標準的な”日本の教科書
の“アメリカ”英語版であり,キーワード,定義,定理の日本語訳が簡単に参
照できるようになっている.将来,研究者になること,あるいは海外留学を考
えている学生にとっては,最初の一冊として最適だろう.
本書は大きく二つの部分からなる.第I部は“計算”の部分で,これは1変
数関数に対する“高校”の微分積分の復習に加え,多変数の微分積分をすぐに
使えるようになることに焦点を合わせた.つまり,多変数関数を微分し積分す
るための“技術”を提供する.第II部は“理論”の部分で,第I部で“明らか”
として扱ったすべての基本的な問いに対して,厳密な数学的説明を与える.つ
まり,極限,微分,積分とは“本当は”どのようなものであるかを示す.
【主要目次】
Part I Elementary Calculus
1.Calculus in a single variable 2.Differential calculus in several
variables 3.Integral calculus in several variables
Part II Foundation of Analysis
4.Sets, points and real numbers 5.Limit and continuity 6.Differ-
entiation 7.Series
※オンデマンド版書籍のご注文は,「万能書店」にお願いいたします.
https://www.d-pub.co.jp/shop/products/detail.php?product_id=16358
※電子書籍は4月の配信予定です.
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【2】[連載コラム]松浦晋也の“読書ノート” (第39回)
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ノンフィクション・ライター/サイエンスライターの松浦晋也さんと鹿野司
さんに,お薦め書籍や思い出の1冊,新刊レビュー等をご執筆いただきます.
今回のご担当は松浦晋也さんです.
・バックナンバーはこちら→ https://www.shokabo.co.jp/column/
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◆ 戦争に翻弄された交響曲と、その初演 ◆
● 『戦火のシンフォニー −レニングラード封鎖345日目の真実−』
(ひの まどか 著,新潮社)
最初に訂正とお詫びを。バイク小説を取り上げた第36回で、私は現代のバイ
ク小説の特徴は、登場人物とバイクという乗り物との間にのっぴきならない結
びつきがないことだ、と書いた。
https://www.shokabo.co.jp/column/matsu-36.html
が、取り上げた小説『スーパーカブ』(トネ・コーケン著、角川書店)の3
巻を再読していて、きちんとそのことが書いてあったことに気が付いた。3巻
のラストで、大学推薦入学が決まった主人公の小熊は、バイク不可の寮への入
寮を拒否して、自分で下宿を探すことを選ぶ。小熊は教師に向かって宣言する。
「カブはお金を払えば誰にでも買える。私のカブもいい値段をつけてくれれば、
いつでもお売りしますよ。でも私はそのお金で、きっと新しいカブを買う」。
これは、自分とバイクとののっぴきならない関わりの宣言ではないか。そし
て、この3巻は以下の文言で締めくくられるのである。
スーパーカブは小熊の誇り。
あまりに大きな見落としを、私はしていたようだ。申し訳ありませんでした。
さて、今回の読書のテーマは「音楽と戦争」だ。
音楽と戦争には切っても切れない関係がある。人心を統一し、士気を鼓舞す
るためである。古代より現代に至るまで、洋の東西を問わず軍隊には軍楽隊が
つきものだ。が、今回取り上げるのは、そういった実用品としての音楽ではな
い。テーマとなるのは、ドミトリ・ショスタコーヴィチ(1906〜1975)の交響
曲第7番「レニングラード」と、第二次世界大戦において酸鼻を極める激戦地
となった都市レニングラード(現サンクトペテルブルク)の関係である。
バルト海にネヴァ川が流れ込むデルタ地帯は、古来より交易の要所として栄
えてきた。18世紀、スウェーデンとロシアとの間の小競り合いで荒れていたこ
の地に、ロシアのピョートル大帝(1672〜1725)が、本格的な都市を造営する。
街はキリスト教の聖人ペテロにちなみ「聖ペテロの街(サンクトペテルブルク)」
と命名されたが、ピョートルは、ペテロのロシア語読みであり、事実上この名
は「ピョートル大帝の街」を意味した。
1917年のロシア革命によりソビエト連邦が建国され、街の名前は「レーニン
の街」、レニングラードと変わる。そして1941年6月、ナチスドイツの対ソ宣
戦布告とともにドイツ軍が侵攻してきた。9月、レニングラードはドイツ軍に
包囲される。以来1944年1月までの約900日、同地は悲惨を極める包囲戦を戦
うことになる。物資の流入が絶たれたことにより食糧は枯渇し、厳冬の期間中
も暖房に使う燃料はない。ドイツの攻撃による戦死者のみならず多数の餓死者、
凍死者が発生し、市内では餓死者の肉を食う人肉食が横行した。それでも、冬
期に凍結したラドガ湖を経由して物資補給を受け、レニングラードは陥落する
ことなく耐え抜いた──。
ドミトリ・ショスタコーヴィチは、1906年に帝政時代のサンクトペテルブル
クに生まれ、育った生粋の土地っ子である。ドイツ軍の侵攻が始まった時、彼
はレニングラード音楽院の作曲科教授であった。独ソ戦が始まった夏、彼はレ
ニングラードに捧げる交響曲を書き始める。世界的作曲家であった彼は、包囲
開始直後に政府命令で、当時モスクワの首都機能が移転していたクイビシェフ
に空路で疎開させられ、そこで全曲が完成した。全4楽章、演奏時間80分近い
堂々たる大作である。
初演は1942年3月5日に、クイビシェフでサムイル・サモスード指揮、ボリ
ショイ劇場管弦楽団により行われた。ソ連政府は、この壮大な交響曲を戦意高
揚と連合国の連帯誇示に利用する。楽譜はマイクロフィルム化され、連合国各
国へと渡った。アメリカでは、1942年7月19日、トスカニーニの指揮、NBC
交響楽団によって初演が行われた。アメリカはその演奏を、全世界にラジオ中
継した。
そしてこの曲は、包囲下のレニングラードでも演奏された。レニングラード
初演は1942年8月9日。カール・エリアスベルクが指揮するレニングラード・
ラジオ・シンフォニーが行った。
本書は、このレニングラード初演を担当した指揮者エリアスベルクとレニン
グラード・ラジオ・シンフォニー、そして彼らに活躍の舞台を提供したレニン
グラードラジオ局の活動を追ったノンフィクションだ。著者は、ヴァイオリニ
ストであると同時に、クラシックに関する著書をもつ作家でもある。現在、サ
ンクトペテルブルクには、このレニングラード初演だけをテーマとした博物館
「ショスタコーヴィチ記念第235中学校内民間博物館」があり、関連資料を収
集、展示している。この博物館が集めた資料と、現地の関係者・研究者へのイ
ンタビューに基づき、著者は1942年8月9日に戦火のただなかで行われた交響
曲の演奏を描いていく。
レニングラード・ラジオ・シンフォニーは、(当時の)新しいメディアであ
るラジオで音楽を演奏するために1931年にラジオ局内に組織されたオーケスト
ラだった。「人民に質の高い音楽芸術を提供する」のがラジオ・シンフォニー
の使命だった。
しかし、開戦とともに、その役割は変質する。愛国心を鼓舞する番組に、勇
壮な音楽を提供するのがラジオ・シンフォニーの仕事となった。団員も塹壕掘
りや軍事教練などに動員されるようになり、演奏機会は減っていく。電力不足
により、ラジオ放送もほとんどの時間が、ただ無意味なカチ、カチと鳴るメト
ロノームの音のみとなった。辛うじて、レニングラードが戦い続けていること
を世界にアピールするための放送のみが継続する。1941年12月31日、飢えと寒
さの中でエリアスベルクの指揮でチャイコフスキーの交響曲5番を演奏し、放
送したのを最後に、ラジオ・シンフォニーは活動を停止した。
1942年に入ると、状況はますます悪化する。寒さと飢えで死亡する楽団員も
出るようになった。エリアスベルク夫妻もまた、餓死寸前にまで追い詰められ
る。
この地獄のような状況は、厳冬期に入りラドガ湖の凍結で氷上を通る物資補
給ルートが確保できたことで改善し始める。ラジオ局にも電力が供給されるよ
うになる。が、放送番組をつくることができる人材はいない。わずかな宣伝放
送の他は、無意味で気が滅入るようなメトロノームの音が流れる時間だけが増
えていく。
その状況に、レニングラード市の共産党第一書記であり最高指導者だったア
ンドレイ・ジダーノフが癇癪を破裂させた。彼はラジオ局に電話を入れて怒鳴
った。「何でこんな陰気な雰囲気を作っている! 何か音楽をやらんか!」。
最高指導者がそういうなら、従わねばならない。
ここからのラジオ・シンフォニー復活と、その立役者となった芸術監督ヤー
シャ・バーブシキンの活躍は、是非とも本書を読んでほしい。彼は、ショスタ
コーヴィチがレニングラード市に捧げると言っていた交響曲が完成し、初演さ
れたことを知り、なんとしても包囲下のレニングラードで演奏しようと動き出
す。しかし、やっと届いた楽譜を見てバーブシキンは頭を抱える。ショスタコ
ーヴィチの交響曲7番は、別働隊を含む大編成のオーケストラで演奏する作品
だった。戦闘と飢餓と寒さで、メンバーを失い、生き残った者も痛手を被った
ラジオ・シンフォニーには、大編成のオケを組む余力がなかったのである。バ
ーブシキンと体力を取り戻したエリアスベルクは、徴兵された音楽家を、前線
から戻してくれるよう軍と掛け合う。
演奏者たちも大変だった。本番までに、練習不足で鈍りきった楽器の腕前を
取り戻さなくてはならない。7月25日から始まった練習で、エリアスベルクは
徹底的にオケメンバーをしごいた。軍も協力し、演奏当日にドイツ軍が強襲を
かけてこないように、事前に大規模な砲撃をかける作戦を立案、実行した。
そうして、1942年8月9日。ショスタコーヴィチの交響曲7番「レニングラ
ード」のレニングラード初演が行われた。
聴いた者が口々に「素晴らしい演奏だった」と証言しているのだが、この演
奏の録音は残っていない。ラジオ局は演奏のラジオ放送が精一杯で、録音をす
る余裕がなかったのだ。この劇的かつ歴史的な演奏は、その時聴いた者の心に
のみ残る、幻の演奏となった。
そして、物事は「めでたしめでたし」では終わらない。戦況の好転とともに、
スターリンが戦前に作り上げた密告と粛正の日々が戻ってくる。
(松浦注:レニングラードの)封鎖が解ける直前、ラジオ委員会の芸術
監督バーブシキンは「人民の敵」という理由で秘密警察に逮捕され、最
前線ナルヴァに送られたその日に戦死した。死の直前、彼は友人のフリ
ドレンドルに手紙を送っていた。
「僕は、我々の国の悲惨な年の歴史に、自分の仕事の成果が少しでも入
っていることを誇りに思う」
(本書「エピローグ──しかし、ミューズは黙らなかった」より)
本書は、交響曲7番のレニングラード初演に焦点を絞っており、それは一
冊の本としては成功している。が、ぐっと視点を引いて、ショスタコーヴィ
チ、ソ連という国、音楽芸術と政治──といった枠組みで捉え直すと、この
交響曲には感動だけではすまない様々な問題が絡みついていることが見えて
くる。
ショスタコーヴィチは、1936年に共産党の機関紙プラウダで批判されたこ
とがあった。スターリンの大粛正が進行する中、それは彼の生命の危機を意
味した。彼は翌年初演した交響曲5番が絶賛されたことで名誉を回復したが、
その後は音楽作品の中に様々な形で屈折した暗喩を込めるようになった。そ
の研究はショスタコーヴィチの死後、そしてソ連崩壊後にかなり進み、現在
では彼が単なるソ連の社会主義リアリズムを代表する作曲家ではなく、した
たかかつ用心深く政治と渡り合い、自分の表現欲求を押し通したことが分か
ってきている。本書でも、ショスタコーヴィチがレニングラード初演に対し
て妙に素っ気なく、よそよそしい電報を送ってきたことが書かれている。
交響曲7番には、単にファシズムと戦うレニングラード市民と共産党への
賛美というだけではない側面が込められている。当時、レニングラード市民
はナチスと戦うだけではなく、スターリンの弾圧をも耐えしのいでいたのだ。
第1楽章の通称「戦争の主題」の、妙にお気楽で軽い曲調、その中に込めら
れたレハールのオペレッタ「メリー・ウィドウ」からの引用(公使ダニロが
酒場の女たちについて「彼女らは祖国を忘れさせてくれる」と歌うメロディ
が引用されている)──。
加えて、ショスタコーヴィチは恋多き男であり、折々の浮気やら横恋慕や
らの象徴も曲に書き込んでいるという説もあって、このあたりは彼のファン
にとっては推理合戦の楽しい泥沼というべき状況である。
それはさておき──2007年11月から12月にかけて、指揮者の井上道義氏が
日比谷公会堂でショスタコーヴィチの15曲ある交響曲の全曲演奏を行った。
交響曲7番は、2007年11月10日になんとサンクトペテルブルク交響楽団によ
り演奏された。
私はこの演奏を聴いて、「そうか!」と得心した。
第4楽章はちょっと聞くと派手に鳴って、敵であるファシストに対する勝
利を表現しているように思えるのだが、実はこの楽章、主に三つに別れてい
て、真ん中にかなり長いゆっくりした沈鬱な部分が挿入される。その上で、
最後に第1楽章冒頭の雄大なメロディ、通称「レニングラード市民のテーマ」
が戻って来て、全曲を締めくくる。
この日、実演を聴いて初めて気が付いたのだが、ラストのレニングラード
市民のテーマは、オーケストラ本体ではなく、舞台両脇の袖に控えたトラン
ペット、トロンボーン、ホルンの別働隊が左右ユニゾンで演奏する。
それで理解した。この第4楽章はラストの盛り上がりが戦争の勝利ではな
いのだ。三部分のうち最初の部分で戦争の勝利は終わっていて、中間の沈鬱
な部分は「たとえ勝ってもスターリンの圧政は残り、レニングラード市民の
苦悩は終わらない」という意味なのだ。その上でオケの別働隊が、ラストで
レニングラード市民のテーマを演奏するということは、「ファシストへの勝
利」ではなく「それでも苦難に耐えているレニングラード市民がんばれ」と
いう応援歌なのではなかろうか。つまり、音楽的焦点は中央(のオーケスト
ラ)ではなく、はずれたところにある別働隊の楽器群(疎外され、抑圧され
たレニングラードの人々)にあるのだ。
……まあ、これは一介のショスタコマニアである私の勝手な解釈である。
この連続演奏会は、井上道義氏が演奏会の最初や途中で曲を解説するとい
うなかなか楽しいものだった。何回目だったかは忘れたが、氏はこんなこと
を話した。
「知っていますか。昭和20年、米軍の爆撃機が爆弾が落としてくる中、こ
の日比谷公会堂では、3日に1回もの割合でコンサートを開催しているんで
すよ」。
音楽をあきらめなかったバーブシキンとエリアスベルク、レニングラード
・ラジオ・シンフォニーの人々。「音楽をやれ」と癇癪を起こしたジダーノ
フ、そして空襲下の東京でも途切れることがなかった日比谷公会堂のコンサ
ート──まこと人は、音楽なしでは生きられないのである。
【今回紹介した書籍】
●『戦火のシンフォニー −レニングラード封鎖345日目の真実−』
ひの まどか 著/四六判変形/287頁/定価(本体1800円+税)/2014年3月
発行/新潮社/ISBN 978-4-10-335451-2
https://www.shinchosha.co.jp/book/335451/
【松浦晋也さんのプロフィール】
ノンフィクション・ライター.1962年東京都出身.現在、日経ビジネスオンラ
インで「宇宙開発の新潮流(*1)」を連載中。近著に『母さん、ごめん。−50
代独身男の介護奮闘記−』(日経BP社)がある.その他、『小惑星探査機「は
やぶさ2」の挑戦』『はやぶさ2の真実』『飛べ!「はやぶさ」』『われらの
有人宇宙船』『増補 スペースシャトルの落日』『恐るべき旅路』『のりもの
進化論』など著書多数.
Twitterアカウント https://twitter.com/ShinyaMatsuura
*1 http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20101208/217467/
「松浦晋也の“読書ノート”」 Copyright(C) 松浦晋也,2019
※本コラムは本メール配信約1か月後を目安に裳華房Webサイトに掲載します.
https://www.shokabo.co.jp/column/
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【電子書籍のご案内】 https://www.shokabo.co.jp/ebooks/index.html
【オンデマンド出版書籍】 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/d-pub.html
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【3】[連載コラム]裳華房 編集子の“私の本棚”(第59回)
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編集部の有志が思い出の一冊やお薦めの書籍などを語ります(不定期掲載).
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◆ 受験数学の“ラスボス”? ◆
● 『チャート式シリーズ 数学難問集100』(チャート研究所 編著,数研出版)
「チャート式」といえば,数研出版が刊行する高等学校用の参考書シリーズ
として有名であり,高校時代に「赤チャート」や「青チャート」の問題と格闘
した経験をおもちの方も多いのではないだろうか.
数多ある「チャート式」シリーズの中でも本書は,難関大受験を強く意識し
た問題集であり,整数問題・一次変換など,受験生が顔をしかめるような“い
やらしい”問題がずらりと並んでいる.読者への配慮として,一応は「入門の
部」「試練の部」の2部構成になっているものの,問題のレベルが高すぎて,
文字通り“狭き門”になってしまっている.おそらく,その存在すら知らずに
高校を卒業する方がほとんどであろうと思う.
じつは私が本書を入手したのは,受験生のときではなく,大学入学後のこと
である.
当時私は,時間ができれば数学の問題を作成し,自信作ができる度に友人に
解かせ,困り果てる姿を見物するという,少しばかりおかしな趣味をもってい
た.つまりは本書を“ネタ本”として利用し,これまで以上に趣向を凝らした
面白い問題をつくり,友人に見せびらかそう,などと企んでいたわけである.
ある日,数学科の1年先輩であるYさんが私の部屋を訪ねてきた.Yさんは
本書を手にとってぱらぱらとめくり,数列の証明問題を一瞥して首を傾げた.
「これは,当たり前のことでは……?」
当然ながら,問題そのものは受験数学ではとても「当たり前」とはいえない
代物である.大学受験の数学しか知らなかった私は,難問を前にして「当たり
前」と言ってのけるYさんの姿に暫し唖然とした.それ以来,何となく自分が
受験数学の殻に閉じこもっているように感じ,いつしか問題作成もやめてしま
い,本書をあまり開かなくなった.
後に大学の数学に触れ,自分の想像する以上に数学が広く奥深いものである
ことを知ったとき,かの「当たり前」発言を思い起こし,その真意を理解する
と,改めてYさんの秀才ぶりに感動したものである.今になってその問題を見
返すと,さすがに「当たり前だ」とまでは思わないが,「なるほど,大学はこ
ういう力を要求しているのだな」等と,出題者の意図するところが何となく読
めるようになり,「私も成長したな」などと自画自賛してみたりする.
ちなみに本書は旧版であり,現在は新学習指導要領への移行に伴って「黒チ
ャート」としてリニューアルしたそうである.「黒」という“ラスボス感”が
見事にイメージ通りである.
【今回紹介した書籍】
●『チャート式シリーズ 新課程入試対応 数学難問集100』
チャート研究所 編著/A5判/152頁〔別冊解答編 48頁〕/
定価(本体1200円+税)/2015年10月刊行/数研出版/
ISBN 978-4-410-14282-6
https://www.chart.co.jp/goods/item/sugaku/16475.php
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【4】お知らせ&編集後記
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◇お知らせ
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1.訂正表・正誤表や新しい演習問題など「書籍のサポート情報」.
https://www.shokabo.co.jp/support/index.html
2.裳華房 総合図書目録
https://www.shokabo.co.jp/catalogue/index.html
#2019年度版の「総合図書目録」は3月末の発行予定です.
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◇編集後記
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都内では桜がほころび始めましたが,寒暖の差が激しい日々が続きます.く
れぐれもご自愛くださいませ。
日本気象協会 桜開花情報2019
https://tenki.jp/sakura/
(TK)
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次号は2019年4月下旬の配信予定です.どうぞお楽しみに! \\(^o^)//
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