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裳華房メールマガジン (Shokabo-News)
バックナンバー(No.411;2026-09 最近の新刊・近刊/松浦晋也の“読書ノート” ほか)

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆   Shokabo-News No.411                2026/9/30   裳華房メールマガジン 2026年9月号   https://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ★目次★ ─────────────────────────────────── 【1】9月の新刊  『応用数学コース 微分方程式』  『応用数学コース 複素解析』  『物理を微分形式で語り直す −座標系によらない美しい表現を求めて−』  『動画でサポート 生命の科学』 【2】10月〜11月の近刊  『医療・看護系のための 生物学(三訂版)』  『カロテノイド(増補版)[POD版]−その多様性と生理活性−』  『理工系のための 化学入門(改訂版)』  『そるべんつ −もしも分子が見えたなら−』  『物理学レクチャーコース 力学入門』  『物理学レクチャーコース 電磁気学』  『圏論入門 −基礎概念からテンソル圏まで−』  『解きながら学ぶ 力学・解析力学』 【3】連載コラム 松浦晋也の“読書ノート”(72):  『本なら売るほど』(児島 青 著、KADOKAWA)  『税金で買った本』(ずいの 原作、系山 冏 著、講談社) 【4】[YouTube]新規公開中! 【5】お知らせ&編集後記 ─────────────────────────────────── ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【1】9月の新刊 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■『応用数学コース 微分方程式』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1620-4.htm 中村 豪 著/A5判/192頁/定価2640円(税込)/2026年9月25日発行/ ISBN 978-4-7853-1620-4 C3041/裳華房  理工系学生にとって必要とされる常微分方程式の基本を十分に習得し、さら に応用について知ることを目指して書かれた一冊。  各章の初めには学びの内容をはっきりと示し、明確な目標をもって学習が進 められるようにし、一方、章末にはキーワードをまとめ、内容の振り返りに役 立つようにした。  また豊富な例題と、それにならって解ける問題を数多く収め、反復学習の効 果によって理解が定着するようにした。さらに穴埋め式の問題も取り入れ、ス ムーズに学習へ取り組めるようにした。 【主要目次】 1.微分方程式 2.1階微分方程式 3.線形微分方程式 4.微分演算子 5.連立線形微分方程式 6.べき級数解 ■『応用数学コース 複素解析』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1619-8.htm 安達静子 著/A5判/196頁/定価2640円(税込)/2026年9月25日発行/ ISBN 978-4-7853-1619-8 C3041/裳華房  理工系学生にとって必要とされる複素解析の基本的な概念や手法を十分に習 得し、さらに応用例を知ることを目指して書かれた一冊。  各章の初めには学びの内容をはっきりと示し、明確な目標をもって学習が進 められるようにし、一方、章末にはキーワードをまとめ、内容の振り返りに役 立つようにした。  また豊富な例題と、それにならって解ける問題を数多く収め、反復学習の効 果によって理解が定着するようにした。 【主要目次】 1.複素数と複素数の計算 2.正則関数 3.初等関数 4.正則関数の積分 5.テイラー展開とローラン展開 6.留数定理とその応用 7.正則関数の応用 ■『物理を微分形式で語り直す −座標系によらない美しい表現を求めて−』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-2281-6.htm 前野昌弘 著/A5判/336頁/2色刷/定価4290円(税込)/ 2026年9月25日発行/ISBN 978-4-7853-2281-6 C3042/裳華房  電磁気学や解析力学などをはじめ、「微分形式」を使うことで物理的内容の 記述がすっきりとした形に整理される例が数多く存在する。しかし、物理を学 ぶ方の中には、微分形式に対してどこか“とっつきにくさ”を感じている人も 多いのではないだろうか。  本書では、著者オリジナルの創意工夫をふんだんに凝らしつつ、微分形式に よって物理がどのように“語り直される”のか、その有用性がスムーズに理解 できるよう解説している。「座標変換」をひとつの鍵として 1-form(1次微 分形式)とベクトル場を導入し、そこから高次の微分形式への拡張、微分形式 の外微分と積分を考え、そのうえで電磁気学、解析力学、熱力学、相対論など を、微分形式を用いて記述し直していく。  かつて微分形式の修得を挫折してしまった物理学科の方、あるいは電磁気学 や解析力学などを学んだうえで、もう一歩深く勉強したいと思っている方に、 ぜひお薦めしたい書籍である。 【主要目次】 1.2次元平面ベクトルを使ってウォーミングアップ 2.共変成分・反変成分と 1-form 3.ベクトル場 4.n-form 5.n-form の外微分と積分 6.Lie 微分と共変微分 7.form で語る電磁気学 8.解析力学と熱力学 ■『動画でサポート 生命の科学』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5249-3.htm 赤坂甲治 著/B5判/224頁/3色刷/定価3520円(税込み)/ 2026年9月15日発行/ISBN 978-4-7853-5249-3 C3045/裳華房  本書では、生物学を専攻しない大学生にも、生命科学の教養を楽しく身につ けていただけるように、専門用語をなるべく使わず、日常感覚で理解できるよ うに工夫している。また、生命科学の面白さをできるだけ対面の講義に近い形 で伝えるために講義動画を作成して掲載したので、学習のサポートとして利用 して欲しい。 【主要目次】 1.生命とは何か 2.細胞の構造 3.細胞を構成する物質 4.生命現象とタンパク質 5.生命活動とエネルギー 6.遺伝子とそのはたらき 7.遺伝子操作技術 8.発生 9.生物の恒常性 10.環境応答 11.環境と生態系 12.進化と系統分類 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【裳華房 新刊一覧】   https://www.shokabo.co.jp/book_news.html 【裳華房 分野別書籍一覧】https://www.shokabo.co.jp/mybooks/0000.html 【正誤表などサポート情報】https://www.shokabo.co.jp/support/ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2】10〜11月の近刊 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ※下記では書誌情報と弊社WebサイトへのURLのみ掲載します。詳しくは次号  (10月号)にてご案内いたします。 ■『医療・看護系のための 生物学(三訂版)』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5250-9.htm 田村隆明 著/B5判/194頁/4色刷(カラー)/定価2970円(税込)/ 2026年10月下旬刊行予定/ISBN 978-4-7853-5250-9 C3045/裳華房 ■『カロテノイド(増補版)[POD版]−その多様性と生理活性−』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-0653-3.htm 高市真一 編集/ 初版執筆:三室 守・高市真一・富田純史,増補版執筆:高市真一/ A5判/406頁/定価6930円(税込)/ 2026年10月下旬刊行予定/ISBN 978-4-7853-0653-3 C3045/裳華房 ※本書はPOD版(オンデマンド版)につき受注生産書籍になります。 ■『理工系のための 化学入門(改訂版)』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3536-6.htm 井上正之 著/B5判/184頁/2色刷/定価2640円(税込)/ 2026年11月中旬刊行予定/ISBN 978-4-7853-3536-6 C3043/裳華房 ■『そるべんつ −もしも分子が見えたなら−』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3535-9.htm おやすみん 著/A5判/144頁/4色刷(カラー)/定価2200円(税込)/ 2026年11月中旬刊行予定/ISBN 978-4-7853-3535-9 C3043/裳華房 ■『物理学レクチャーコース 力学入門』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-2418-6.htm 轟木義一 著/A5判/268頁/2色刷/定価2860円(税込)/ 2026年11月中旬刊行予定/ISBN 978-4-7853-2418-6 C3042/裳華房 ■『物理学レクチャーコース 電磁気学』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-2419-3.htm 前田京剛 著/A5判/400頁/定価4400円(税込)/ 2026年11月中旬刊行予定/ISBN 978-4-7853-2419-3 C3042/裳華房 ■『圏論入門 −基礎概念からテンソル圏まで−』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1621-1.htm 和久井道久 著/A5判/416頁/定価5830円(税込)/ 2026年11月下旬刊行予定/ISBN 978-4-7853-1621-1 C3041/裳華房 ■『解きながら学ぶ 力学・解析力学』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-2282-3.htm 後藤 晋 著/A5判/296頁/定価未定/ 2026年11月下旬刊行予定/ISBN 978-4-7853-2282-3 C3042/裳華房 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【電子書籍のご案内】  https://www.shokabo.co.jp/ebooks/index.html 【オンデマンド出版書籍】 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/d-pub.html 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【3】[連載コラム]松浦晋也の“読書ノート” (第72回) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ノンフィクション・ライター/サイエンスライターの松浦晋也さんに、お薦 め書籍や思い出の1冊,新刊レビュー等をご執筆いただきます。  ・バックナンバーはこちら→ https://www.shokabo.co.jp/column/ ─────────────────────────────────── ◆ 本を楽しむ者、本で苦しむ者、そして図書館を圧迫する     新自由主義の黒い影 ◆ ●『本なら売るほど』(児島 青 著、KADOKAWAハルタコミックス、     既刊3巻) ●『税金で買った本』(ずいの 原作、系山 冏 著、講談社ヤンマガKC     スペシャル、既刊20巻)  書痴(しょち)という言葉がある。読書、あるいは本そのものの収集に熱中 し、生活がおろそかになる程の人のことを形容する言葉だ。  本にはそれだけの魔的な魅力がある──と書いて、理解できる人と理解でき ない人がいるだろう。裳華房のメルマガを購読する皆さんは、おそらくあらか た「ああ、そういうことはある」と思う側であろう。が、世間一般では逆だ。 「家に本棚がない」あるいは「本棚はひとつだけで、それもスカスカ」という ほうが多数派なのである。  本は、紙の印刷物を束ねて閲覧しやすい形態にまとめたものだ。が、それ以 上の意味をもつ。紙を束ねることで、そこには「ひとつの意味の塊」ができる。 その塊は物理的に人体が扱える大きさ、重さでなくてはならない。同時にその 塊が、一度に人が読解できる情報量である必要がある。本は物理面でも情報面 でも、人間という生物の能力に規定された存在なのである。  それゆえであろうか、本には他の人工物とは異なる、格別の愛着が発生する。 それが、もう書店で手に入らない本、古書店でしか買えない本ならなおさらだ。  すると、本を愛する書痴の間に、本にまつわるドラマが発生する。  『本なら売るほど』は、古書店「十月堂」に集まってくる人々が、本と関わ ることで発生するドラマを描いたマンガだ。マンガ誌「ハルタ」に2023年から 連載され、2026年に第30回手塚治虫文化賞・マンガ大賞を受賞した。  一応、十月堂店主の青年(名前が出てこないので、以下十月堂氏と記述する) が主人公ではあるが、彼はむしろ狂言回しであって、作者の目は十月堂に集ま ってくる人々に注がれている。  十月堂に売った本に5万円が挟んだままになっていたおばあさん。お金を返 しに行った十月堂氏は、本の持ち主であった亡き夫の、おばあさんも知らなか った洒脱な一面を見つけ出す(関係する本は、寺田寅彦の随筆集)。  大量の本を相続し、読まぬままにその本を愛する書痴の青年と、その青年と 一緒にアパートの壁一杯もの本棚をつくろうとするホームセンター勤務の友人 (ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』)。  ちょっとしたことですれ違い、あるいは一致する和服を愛する三人の女性 (岡本綺堂『半七捕物帳』)──。  話が進むにつれて、あっちの回の登場人物がこっちの回にも登場するという ことが重なり、十月堂を中心にして思いよらぬ濃密な、しかし決して暑苦しく はない、むしろ知的で快い人間関係が展開していく。  その知的な清潔感は、本という知性を運ぶ道具を主題としているところから 発生しているのだろう。活字の本をあまり読まない人でも、このマンガを読ん でいくうちに「ここに登場する本を読んでみたい」と思うはずだ。  同時に、古本屋稼業のシビアな実態も描かれる。そもそも第1話「本を葬送 る(おくる)」は本を捨てる話だ。  ある日十月堂氏は、故人の書斎の整理を依頼される。そこは長年かけて趣味 人だった故人が組み上げた理想的な本のコレクションがぎっしりつまった、本 の楽園というべき場所だった。が、十月堂氏はその楽園から、限られた時間内 に売るべき本を選び、捨てるべき本を残すという選別をしなくてはならない。 古本屋は仕入れた本を選別する過程で、多数の本を破棄しなくては成立しない 職業なのだ。  「売る本と捨てる本、潰す本」というシビアな話は、連載が進むなかで何度 も取り上げられる。著者は古物商を営んでいた経験があるとのこと。人々の交 流の結節点となり、楽園とも見える古書店が、厳しい現実の中で漂流しつつ商 売を続けているという視点が、本作では一貫している。  本を通じて広がる人々の交流、しかし「板子一枚下は地獄」。  足下が地獄であるが故に、人の交わりは一層輝く──『本なら売るほど』は そういう構造をもった作品だ。  では、そんな「足下」ではどんな人たちが働いているのだろうか。  今回取り上げるもう一つのマンガ『税金で買った本』は、そんな「足下の地 味でめだたない場所。地獄というにはあまりに日常だが、多数の本に囲まれつ つも決して天国ではない場所」──地方都市の市立図書館で働く人たちを描く。 2026年9月現在、NHKでテレビドラマが放送されている。  主人公の石平紀一(いしだいら・きいち)君はイキる不良の高校生。市立図 書館の図書カードをつくった際の、ささいなトラブルから持ち前の好奇心を刺 激され、市立図書館でアルバイトをするようになる。こうして「図書館の中の 人」となった石平君の視点から、図書館という職場の仕事の内容や、実情が描 写されていく。  石平君を指導するのは、眼鏡が似合い、いつでも丁寧に仕事をする早瀬丸小 夜香(はやせまる・さやか)さんと、大柄で筋肉隆々にして力仕事が得意、し かし心は繊細で対人恐怖症っぽい白井里雪(しらい・さとゆき)さんという2 人の職員。基本は、「あまり知られていない職業の内実を教えてくれるマンガ」 という体裁だ。  外側から見る公立図書館は『「本という知性を運ぶ道具」を税金で買って誰 でも読めるようにしてくれる場所』だ。しかし、石平君が早瀬さん、白雪さん を通じて見る図書館の現場は、決して「本に囲まれた天国」とは言えない。 ? 図書館には変な人もやってくる。朝は新聞を読むだけの高齢者が席を争い、 その日の新聞を手前勝手にも一人で抱え込もうとする。時にはひどい臭いを振 りまく住所不定と思しき人もやってくる。が、みんな市民であって図書館を利 用する権利があるのだから、にこやかに応対しなくてはいけない。  借りた本を返さない人がいるし、汚してしまう人もいる。ひどく汚れた本は 弁償の対象となるが、誰もが気持ちよく弁償してくれるわけではない。逆ギレ して職員をどなりつける人もいる。破損した本は、修復可能な場合は、職員が 修復する。が、丁寧に修復しようとすると予算の関係で材料費が職員の個人持 ちになってしまうこともある。  市立図書館レベルでも収蔵する本は万を超えるので、何冊も行方不明になっ たりする。その場合、長期休業を使って行う総点検で、「消えた本」を職員総 出で探し回ることになる。  手持ちの本を寄付する人もいるが、ではその本が市立図書館にすべて必要か というとそうではない。時には括弧付きの「善意」を無情にも突き返さねばな らない。  そしてなによりも、早瀬丸さんも白井さんも、そして登場する図書館職員の 大部分が正規雇用ではない。身分は不安定で給料も安い非正規雇用に留め置か れている。  彼らは「本と関わる仕事がしたい」という情熱を搾取されている。なぜなら、 市の正規雇用では、市立図書館は人事ローテーションで常に人が入れ替わる 「市役所の仕事」のひとつだからだ。ずっと図書館の仕事がしたければ、非正 規雇用を受け入れるしかない。  非正規雇用のまま長年勤務すると、図書館の仕事にどんどん精通していく。 しかし、ローテーションで交代していく正規雇用の市職員はそうではない。す ると正規雇用と非正規雇用の間で、図書館の運営を巡って対立が発生する。  それどころか「市役所で使えない無能と烙印を押された正規雇用の職員」が 図書館に送り込まれ、無用の軋轢を引き起こすこともある。  「よくある職場のうんざりする話」の連続なのだが、読み進めても決して不 快にはならない。石平君が、図書館でのバイトを通じてどんどん「好奇心が強 い本好き」という資質を開花させて成長していくからだ。やがて、「大学に進 学するのはダルい」と考えていた石平君は、将来の職業として司書を意識する ようになる。  私は図書館のヘビーユーザーであり、ポケットには常に図書館6館の図書カ ードを所持している。地元の市立図書館、そして本を借りることが可能な近隣 市立図書館のカードが合わせて4枚、県立図書館、そして国会図書館で合計6 枚。加えて、自分が卒業した大学の大学図書館と、住所とは関係なくカードを つくることができる東京都千代田区立図書館の図書カードも持っている。物事 を調べる仕事をしていると、これほどまでに図書館のお世話になる。  だから、昨今の「図書館職員は非正規雇用で済ます」という地方行政に腹が 立ってたまらない。図書館は、決して「無料でベストセラー本が読める便利な 貸本屋」ではないし、「おしゃれな環境でコーヒー片手に本が読める喫茶店」 でもない。地域の知を根底から支える知的拠点だ。だから、きちんと司書資格 を持つ者を専門職として正規雇用しろ。正規雇用で図書館に勤務し続けられる 雇用体系を作れ。強くそう思う。  しかし、全国的に公立図書館の予算は長期的に減少し続けており、中でも新 たな本を購入する資料費は大幅に減らされている。非正規雇用は増えこそすれ 減りはしない。  そうなる理由は国が「行政の効率化」を旗頭に、公共施設の運営を民間に委 託する指定管理者制度の導入を推進しているからだ。官の運営は非効率だ。民 間に委託しろ、民間に委託したら経費は安くなるのが当然だ。削れ──ひどく 雑な論理である。  地域の図書館は一般大衆レベルでの知の涵養を受け持つ。それは、効率化を 指標とする新自由主義経済の論理に馴染まない。  今、日本は40年近く間違った新自由主義的政策を文化行政においても推進し つづけた結果、知的にも、経済的にも沈没しているように見える。その傾向は ますます強くなっており、ついには「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨 太方針2026)令和8年7月21日閣議決定」に「人社系のダウンサイジング」と 記載するところまで至ってしまった※。  国の公文書に「学問を縮小する」と記載されてしまったのである。 ※https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2026/ 2026_basicpolicies_ja.pdf  #アクセスの際、URLは1行につなげてください。  人文社会科学系のダウンサイジング──学問に対してダウンサイジングとは 一体どういう了見か。経済活動ならダウンサイジングで組織を効率化するとい うことが言えるだろうが、多様化こそが発展の鍵である学問において、ダウン サイジングするとは意図的な衰退を意味する。  日本政府はどこまで愚策を推進すれば気が済むのだろうか。日本国民全員が バカになるまでか? 日本国が滅ぶまでか?  理系の学問が「自然界に存在する、未だ人間の知らない正解を見つけ出す学 問」なら、人文学は「そう簡単に答えの出ない、ひょっとしたら答えはないか もしれない、そんな人間に関する疑問を徹底してどこまでも考え続ける学問」 である。短絡的に「答えがないならダウンサイジング」とするなら、いつか答 えが見つかるかもしれないのに、探し続けることを放棄することになる。  それは一切の「社会をよくする、より多くの人がより幸福に人生を全うでき る社会を作る」という目標を放棄することに他ならない。  確かに本を巡る状況は「板子一枚下は地獄」だ。が、その地獄は、存在意義 があるのに政治により、行政により、貶められることによって発生している。  『本なら売るほど』は、知的であること、感性豊かに生きていくことの快感 を教えてくれる。そして、『税金で買った本』はそうした愉悦の源泉である本 を巡る状況が、足下から他ならぬ我々が選挙で選んだ政治(家)によって崩さ れつつあることをさりげなく、笑いに包んで伝えてきているのである。 【今回紹介した書籍】 ※URLはいずれも第1巻のもの。また、すべて電子書籍も発売中です。 ●『本なら売るほど』(既刊3巻) 児島 青 著/B6判/定価792円〜858円(税込)/2025年1月〜2026年4月 発行/KADOKAWA(ハルタコミックス) https://www.kadokawa.co.jp/product/322405000881/ ●『税金で買った本』(既刊20巻) ずいの 原作、系山 冏 著/B6判/定価759〜792円(税込)/2021年12月〜 2026年8月発行/講談社(ヤンマガKCスペシャル) https://www.kodansha.co.jp/comic/products/0000358702 #2026年10月に21巻が発売予定。 【松浦晋也さんのプロフィール】 ノンフィクション・ライター。1962年東京都出身。日経ビジネスオンラインに て足かけ4年にわたって連載してきた「チガサキから世間を眺めて」が今年3 月に終了。近著に『ロケットサバイバル2030』(日経BP社)、『日本の宇宙開 発最前線』(扶桑社)がある。その他、『母さん、ごめん。2』『小惑星探査 機「はやぶさ2」の挑戦』『はやぶさ2の真実』『飛べ!「はやぶさ」』『わ れらの有人宇宙船』『増補 スペースシャトルの落日』『恐るべき旅路』『の りもの進化論』など著書多数。 X(旧Twitter)アカウント https://x.com/ShinyaMatsuura       「松浦晋也の“読書ノート”」 Copyright(C) 松浦晋也,2026 ※本コラムは本メール配信後、なるべく早い時期にWebサイトに掲載する予定  です。 https://www.shokabo.co.jp/column/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【4】[YouTube]新規公開中! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・ショート動画【見本出来】『物理を微分形式で語り直す』(前野昌弘 著)  (2026/9/24) https://www.youtube.com/shorts/Vk1ji8gfo6M ・統計力学とは何か 〜状態方程式の導出〜【小鍋 哲先生:『理工系学生の  ための 量子力学・統計力学入門』特別講義】(2026/9/15) https://www.youtube.com/watch?v=MIJIDyOAk6o ・量子力学とは何か 〜井戸型ポテンシャル〜【小鍋 哲先生:『理工系学生の  ための 量子力学・統計力学入門』特別講義】(2026/9/11) https://www.youtube.com/watch?v=3ZklZktfeEE ・【書籍紹介】古宇田悠哉『手を動かしてまなぶ トポロジー《基本群》』    【梅子】(2026/7/31) https://www.youtube.com/watch?v=dcYCm-nNBfY ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【5】お知らせ&編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇お知らせ ─────────────────────────────────── 1.「2026-27年度 裳華房 総合図書目録」(冊子版、PDF版) https://www.shokabo.co.jp/catalogue/ 2.訂正表・正誤表や新しい演習問題など「書籍のサポート情報」 https://www.shokabo.co.jp/support/index.html 3.書店・生協様のページ(注文書、ポップなどがご利用いただけます) https://www.shokabo.co.jp/sales/index.html 4.裳華房のマスコットキャラクター「梅子」 https://www.youtube.com/watch?v=e4jqu4HSIfE ─────────────────────────────────── ◇編集後記 ─────────────────────────────────── ・関東地方は秋とは思えないほど雨の日が続いております。都心部の日照時間 は昨年対比で30%とか。農作物の出来が心配です。 ・ノーベル賞の発表シーズンがやってまいります。今年はどなたが(どんな研 究業績が)受賞するのでしょうか。発表を期待して待ちたいと思います。 ・11月から数店舗の大学生協・書店様にて裳華房フェアを開催いたします。詳 しくは次号でご案内いたします。                               (TK) ─────────────────────────────────── 次号は2026年10月下旬の配信予定です。 どうぞお楽しみに!\\(^o^)// ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★ Shokabo-Newsの配信停止・アドレス変更は下記URLよりお願いします ★ https://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html メールマガジンのご意見・ご感想は m-list@shokabo.co.jp まで. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 自然科学書出版 (株)裳華房 〒102-0081 東京都千代田区四番町8-1 Tel:03-3262-9166 Fax:03-3262-9130 電子メール:info@shokabo.co.jp URL:https://www.shokabo.co.jp/  Twitterアカウント:@shokabo 【個人情報の取り扱い】 https://www.shokabo.co.jp/policy.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(c) 裳華房,2026      無断転載を禁じます.



         

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