- ポピュラー・サイエンス 185
- 測れるもの 測れないもの
-
- 北海道大学名誉教授 工博 高田誠二 著
- 四六判/176頁/定価1650円(本体1500円+税10%)/1998年7月
- ISBN978-4-7853-8685-6 (旧ISBN4-7853-8685-1)
- 月面の山の高さはいつから測れるようになったのでしょう.また,地球の大きさなどの地学的な量や,温度,電流などの理工学的な量は,いつどのようにして測れるものになったのでしょう.他方,ストレスや災害の予兆はどれほど研究しても結局測れないものなのでしょうか.また,心のはたらきの機微を他人が測ることは倫理的に許されるものでしょうか.
本書は“測る”をキーワードに,科学研究と技術開発の両面で不可欠な役を担っている計測の意義を,その生い立ちに添って,また現代社会時評の精神で,興味深く幅広く問い直した試論集です.
- 【目 次】
-
- 序章 測れるか 測れないか
- 1 一ミリも変らないもの
- 2 測れるか ― 私自身,企業価値,国力,インフラストラクチャー
- 3 測れるもの 測れないもの
- 1. ヒトは測ることを知った
- 1.1 ウマは守り ヒトは測る
- 1.2 トビは(測る)能力をもつか
- 1.3 独立した営為としての計測
- 1.4 ヒトが創り出した最初の計測器
- 1.5 能動の人 ピテアス
- 1.6 古代の哲人たちの計測観
- 1.7 気鋭の人物 エラトステネス
- 1.8 エラトステネス再考
- 1.9 歩測の名人
- 1.10 二千余年を結ぶ共感
- 2. 社会は測ることを欲した
- 2.1 ヒトの命を守るための計測 ― 調剤用の(はかり)
- 2.2 薬量を細かく(測る)ための「れいてんぐ」
- 2.3 放射線「一服」の線量
- 2.4 「匙加減」の計量学
- 2.5 (ひょう量)基準の社会学
- 2.6 天びんと分銅の考古学
- 2.7 衆人環視の下ではたらく天びん
- 2.8 社会の中の計量
- 2.9 (測る)専門職の権威
- 2.10 天びん所持すべからず
- 2.11 聖なる場所に収納された基準分銅
- 2.12 現代の公共計量
- 2.13 近代計量の新しい分野
- 2.14 豊かで快適な民生のための計量
- 3. 理学を肩に載せて 理学の肩に乗って
- 3.1 ガリレイの計測実験 ― 斜面を転がり落ちる球の運動
- 3.2 ラヴォアジエの計測実験 ― 天びんによる定量化学と質量基準設定
- 3.3 理学と計測を両肩に載せて闊歩したケルビン卿
- 3.4 日本最初の工学博士・志田林三郎の電気計測研究
- 3.5 日本最初の国際度量衡委員・田中館愛橘
- 3.6 その後の日本での理工学研究と計測
- 3.7 計測と理学の「縁」
- 4. 技能者の腕に頼って
- 4.1 (測る)ための道具の精巧化
- 4.2 自製の望遠鏡で星の動きや月の凹凸を測ったガリレイ
- 4.3 兼業から分業へ
- 4.4 光学計測器の出現 ― その前と後
- 4.5 眼鏡師リーヴズの活躍
- 4.6 (測る)ための望遠鏡とオーズウの活躍
- 4.7 科学実験の表舞台と楽屋裏
- 4.8 (測る)ための道具を創り出す工房
- 4.9 王侯貴族豪商をスポンサーとして
- 4.10 ドイツ・ザクセンの技芸館
- 4.11 イタリア・フィレンツェのアカデミア・デル・チメント
- 4.12 イタリア・フィレンツェとドイツ・ザクセン
- 4.13 職業的な工房の誕生
- 4.14 計測器技能者たちのギルドの結成
- 4.15 異色の技能者たち
- 5. 工学の足場に立って
- 5.1 計測器製造技術者の専門志向
- 5.2 教育制度への期待 ― 自然科学と技術の総合
- 5.3 (測る)ことの技術哲学
- 5.4 個別技術から総合工学へ
- 5.5 動力技術・通信技術のための計測
- 5.6 産業技術のための計測
- 5.7 工学者による計測器性能評価 ― メーターの良度
- 5.8 工学的な性能評価因子
- 5.9 クロスオーバーの妙味
- 5.10 フィードバックの思想と計測
- 5.11 二〇世紀工学と計測
- 5.12 互換性とトレーサビリティ
- 6. 測れるようにしたいもの
- 6.1 人間を知るために(測る)
- 6.2 ストレスを(測る)
- 6.3 「情動」要素との対応
- 6.4 (測る)ことができたら,その後は
- 6.5 事後の処理よりは事前に予兆を
- 6.6 蝶墜ちて
- 6.7 予兆を(測る)
- 6.8 事実とその影
- 7. 測ろうとしても測れないもの
- 7.1 物理学における不可測なもの
- 7.2 測れそうに見えて測れないもの
- 8. 測ってはいけないもの
- 8.1 湿度計で表すことのできぬ湿潤 ― 哲学者の風土論
- 8.2 これより先,測るべからず
- 8.3 孝養を(測る)ことの過ち ― シェークスピア「リア王」
- 8.4 知能指数(IQ)と情緒指数(EQ)
- 8.5 (測る)教師
- 8.6 沈黙と測り合う
-
- 共通文献
- 索引
|