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鮫島實三郎 著 『物理化學實驗法』 [[初版 昭和2年](2013年9月執筆)
今回紹介するのは,1927年(昭和2年)にたぶん日本で初めて刊行された物理化学の実験本,鮫島實三郎による『物理化學實驗法』です. 実験に基づいた物理化学の入門書としてきわめて高い評価を得てきた本書ですが,その特徴の一つに,学習者(学生),教育者(教師),そして研究者の,三者それぞれが各自の立場で本書を読みこなせるよう,各節毎に,学生向けの「練習実験」(主として定量的な実験),教師向けの「講義実験」(主として定性的な実験)の項が(複数)記載されていることがあります. 以下に,目次(章タイトル)を記しておきます.
現在刊行されている「増補版」の目次は,下記URLをご参照ください.
初版刊行以来,およそ2年に1回ずつ版を重ね,昭和14年には版を少し組み変えた「改訂版」が,昭和30年には字体や仮名遣い,文体などに大きく手を入れた「新訂版」が刊行されています. 物理化学の進歩を考えると,85年以上にわたって読み継がれているのは,非常に驚くべきことと言えるでしょう.「新版」編纂の中心者であった赤松博士は,「第50版の刊行にあたって」(「増補版」に所載)の中で,次のように述べておられます.
その意味では,いまなお物理化学の教育・研究に関わる人に必携の書ではないかと思います.
著者の鮫島實三郎(さめしまじつさぶろう)は,明治23年(1890年)7月3日生まれ.大正3年に東京帝国大学理科大学化学科を卒業し,アメリカ,イギリス,フランス等の各国に留学した後,東北帝国大学の助教授,教授を経て,大正12年(1923年)に東京帝国大学化学第一講座(現在の物性化学研究室)の教授に就任しました.混合液体の蒸気圧,木炭や鉱物類などによる気体の収着,油滑性などの研究を行い,昭和26年に東京大学名誉教授になられています.
なお本書は,国立国会図書館のデジタルアーカイブで公開(館内閲覧限定)されています. [脚注] *1 「増補版」の協力者;赤松秀雄,井口洋夫,佐々木恒孝,立花太郎,田丸謙二,中垣正幸,吉岡甲子郎の七名.
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