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早川康弌 著 『初等量子力学』 [初版 昭和9年;1934年]本書は,科学哲学などの分野でも業績を残された,数学者の早川康弌先生(東京工業大学名誉教授,[*1])が1934年(昭和9年)に出版した量子力学の本です.ここで驚くべきことは,早川先生は1911年(明治44年)生まれであることから,本書は,先生が23歳という若さの時に出版したということです.そのこともあってか,本書の扉にある先生の肩書きは「理學士」 となっています.ちなみに,出版当時の値段は壹圓八拾錢でした. 早川先生が本書を執筆するに至った動機については,本書の「序」に次のように記されています.
本書の詳しい目次については, 国立情報学研究所のWebcat Plusにも掲載されていますので[*2]省かせていただきますが,附録を除いたわずか92ページの本文で,量子力学を初めて学ぶ人たちを対象に,その基礎的な事項について解説しています. 本書の目的について,早川先生は同じく「序」で次のように記しています.
このコラムを書いている私自身が気づいた本書の特徴を挙げるとすれば,
1.本文中の重要語句には肩に番号が付けられ,脚注で,その語句の英語とドイツ語の表記が併記されていること といったあたりかと思います.
1〜4については,早川先生の教育的配慮に基づくものであることが窺えます.特に長い附録の意図は,先の「序」の一部に先生ご自身が書かれているとおりです.5番目については,一般に量子力学の初学者向けの本では,量子力学の哲学的な議論は初学者を却って惑わすことになるとの配慮から触れないことが多いのですが,本書ではこの部分にこそ,早川先生らしさが如実に現れているのではないかと思いました.
「附 教科書の紹介」
なお弊社では,本書の出版から11年後の1946年に,『マトリックス概説』という本も早川先生に執筆していただいています. [脚注] *1 早川 康弌 (Webcat Plus)
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