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「偉人史叢」シリーズ[明治29〜33年]今回ご紹介するのは,自然科学とは離れますが,明治28年(1895)に仙台から東京に移転した裳華房が初めて手がけたシリーズ,「偉人史叢」です.臨時発刊や第2集を含めると全部で30巻を越え,裳華房の礎となったシリーズです. 当時の偉人伝の多くは和漢の学者が偉人の残した書などを読み解くものが多く,その偉人の置かれた時代状況や行ってきた業績が(読者には)なかなかわかりにくかったようで,第1巻の巻末に収められた「發刊の趣旨」をみると,新進の文壇人を起用し「斬新雄快」な筆を借りて,「其人と其時代に傳へ、以て社會を益せんと欲す」という,社主・吉野兵作氏のなみなみならぬ思いが伝わってきます. 明治29年(1896)2月に発刊された「偉人史叢」第1巻は,長田権次郎執筆による『林子平』.林子平は江戸出身ですが仙台に住み,『三国通覧図説』『海国兵談』などを著し,海防の重要性を訴えました.
シリーズの最初に林子平を取り上げたのは,想像になりますが,現存する林子平の手紙の中に,裳華房の伊勢屋半右衛門に古本の引き取りについて相談との記述があり(小井川百合子「仙台の町板について」より),林子平と裳華房に縁があったことによるのではないかと思われます.
第2巻は蒲生君平,第3巻は伊藤仁斎,以後 平田篤胤,平野国臣,平賀源内,大塩平八郎…と続き,臨時発刊として近藤重蔵,柳沢吉保,由井正雪,明智光秀,達磨…などをはさみながら,明治31年に発刊された第20巻の高山彦九郎,第21巻の石川丈山をもってひとまず終了. シリーズの中で,いわゆる理系関係では,本草学などの平賀源内(第6巻)や医者の高野長英と渡辺崋山(第13巻)などがあります.
第1巻『林子平』,第16巻『織田信長』,第19巻『上杉謙信』をはじめ,いくつかの巻については国立国会図書館のデジタルアーカイブにて一般に公開されています.
◆「偉人史叢」シリーズ(21巻,臨時発刊6巻,第2輯5巻) ※「裳華房の“古書”探訪」は,裳華房のメールマガジン「Shokabo-News」にて連載しています.Webサイトにはメールマガジン配信の約1か月後に掲載します.是非メールマガジンにご登録ください. |
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