原子は,正の電荷を持った陽子と電荷を持たない中性子からなる原子核と,
その周囲に束縛された負の電荷を持つ電子から構成されています.
原子を特徴づけるのは,
陽子の数(原子核の電荷数)と核子(陽子+中性子)の数で,
前者を原子番号 Z,後者を核子数 A といいます.
また陽子と同数の電子が結合している原子を中性原子(neutral atom),
電子が1個または複数個少ない原子を電離原子(ionized atom)といいます.
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鉄原子のモデル 陽子と中性子からなる原子核 電子(中性の鉄原子には26個ある) |
鉄原子の原子核は,
26個の陽子(●)
と約30個の中性子(●)からできています. 原子番号 Z=26 質量数(核子数) A=約56 (陽子の数は同じでも,中性子の数が違う同位体が何種類かあります.) 中性状態の鉄では,原子核のまわりに26個の電子 (●)があります. 電子の存在できるエネルギー準位(原子核との結びつきの強さ)は, とびとびになっていて, 内側から大きくK殻,L殻,M殻,N殻…と呼ばれています. エネルギーが最低の状態では, 最内殻のK殻に2個,つぎのL殻に8個,M殻に14個, もっとも外側のN殻に2個の電子が配置されています. 鉄の原子が電離していくときは, たいていの場合は外側の電子からはぎとられていきます. 最内殻のK殻に一つ上の準位から電子が遷移したときに放射する輝線を, Kα輝線(K alpha emission line)といいます (水素のライマンα輝線に対応します). 高温プラズマ中でほとんど電離したヘリウム的鉄のKα線は, 典型的には6.7keVのエネルギーをもっています. 比較的低温であまり電離していない鉄のKα線は, 典型的には6.4keVのエネルギーになります. |