目のしくみ (Structure of Eye)

生き物は,視覚・聴覚・臭覚・触覚・味覚など, それぞれにさまざまな知覚器をもっていますが, その中でも視覚…眼から得られる情報は大きく, 多くの生き物にとって視覚器はとても重要な知覚器官なっています. 触ることも,臭いを嗅ぐことも,音を聞くこともできない天体について, 私たちがいろいろなことを調べられるのは,“観る”ことができるからです. この,何かを見るための感覚器, 目というものは, どのようなしくみになっているのでしょうか.


目の構造

人間の目のしくみについて,はじめて深い考察を行い視覚理論を立てたのは, ヨハネス・ケプラーのあたりではないかと考えられています. ケプラーは,肉眼を, カメラの原型であるカメラオブスキュラ(camera obscura)にたとえ, 目は光を感じて像を得ていると説明しました. 実際,人間は目で受けた光の像を神経信号に変換し, それを脳へ伝達してものを見ているのです.




人間の目に入ってきた光は,角膜の後ろの水晶体(レンズ)で曲げられ, ガラス体を通過して,眼球の奥の網膜上で像を結びます. 網膜にはたくさんの視細胞が並んでいて, 光によって刺激を受けると,それを信号として脳に伝えます. この視細胞から脳への情報の伝達を担っているのが視神経です.
網膜に映る像は,実際は倒立像なのですが, 脳がその情報を正立像へ変換して,それを私たちは認識しています.


魚の目は,人間の目に比べて水晶体が厚く,ほぼ球体になっています. これは,魚のすむ水中では空気中に比べて光が曲げられやすいので, その光を捉えるためには,広い視野を必要とするからです. また,魚は人間のように首を回すことができないこともその理由のひとつです.
多くの魚は色を見分けることができますが, サメのように光の明暗しか認識できない魚もいます. しかしそのような魚は,動くものに対しては,とても敏感に反応できる性質をもっています.



昆虫は,単眼と呼ばれる,光の明暗だけを見分ける目をもっています. そして昆虫の多くは,単眼のほかにも,複眼と呼ばれる目も併せもっています.
複眼は小さな個眼が集まったもので,個々の個眼は, ひとつの物体のそれぞれ違う領域を映し出しています. 個眼は,少ないものでも30個, たいていは数千個が集まってひとつの複眼をつくっており, 昆虫は,それぞれ違う部分を映し出した個眼の情報を併せて, 見ているもの全体の姿を認識しているのだと想像されています.

真夏の強い直射日光と,星明かりの下とでは, 照度にして10万倍もの違いがあります. どちらの明かりの下においても, ものを見ることのできる人間の目は, カメラの絞りに相当する虹彩を調整しているだけでなく, 網膜の感度を切り替えることで対応しています. これは,カメラでいえば,感度の違うフィルムへ入れ替えることに相当し, それを自動的にやってのける人間の目は, 高性能の全自動カメラよりも, はるかに優れた機能を備えているということができます.


遠近調節のしくみ


遠くを見るとき

普通にしているとき

近くを見るとき

人間の目は,遠くを見るときと,近くを見るときとでは, 水晶体の厚みが変わります. 水晶体の厚みは,遠くを見るときには薄くなり, 近くを見るときには厚くなりますが, これは,水晶体を囲む毛様体という筋肉が伸縮することで調整されています.
見る対象が無限遠の距離にあるときは, 毛様体は収縮することはないので, 目が疲れることはありません. 「目が疲れたら,遠くを見て目を休ませなさい」といわれるのは,これが理由です.
一方,魚の場合は,水晶体の厚みが変わるのではなく ,水晶体自体を前後に動かします. 水晶体と網膜との距離を調節し,網膜上で像を結ぶように焦点を調節しているのです.

近視
近くのものは見えるのに,遠くのものがぼやけてよく見えない, という症状は,近視と呼ばれます. このような人の目では,遠くのものの像が, 網膜に至るまでに焦点を結んでしまいます. これは,水晶体が遠くを見たときも厚くなっているためで, 凹レンズの眼鏡によって矯正することができます.
遠視
遠くのものは問題なく見えるのに, 近くのものが鮮明に見えない症状は,遠視と呼ばれます. このような人の目では,近くのものの像が, 網膜より奧で焦点を結んでしまいます. これは,水晶体が近くを見たときも薄くなっているためで ,凸レンズの眼鏡によって焦点距離を近くする矯正をします.


光と色の認識


地球上の生物は,太陽光のもとで生きているので,その影響を強く受けています. そのため,光を認識する知覚器である生物の目は, 光の中でも太陽が特に強く放射している領域を認識できるように進化したようです. すなわち,生き物によって多少の差はあるものの, 多くの生物は可視光を中心とした紫外線や赤外線の一部あたりまでを認識しています. というより,そもそも「可視光」とは, 人間が認識できる光の領域につけられた名前なのです.
波長による光の色の違いについては, 生物によっては認識できないものもいますが, 認識できる生物もいます. ただし,その色数は生き物によって違います. たとえば,人間はふつう虹色の7色を区別できますが, ミツバチは4色しか区別することができません.



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