観測の流れ (from Observation to Theory)

天体の観測は一般的に,
   1.電磁波(光)などで天体からの信号を受信し検出する(検出
   2.信号を処理して有意な観測データを取得する(整約
   3.観測データを画像やグラフなどにわかりやすく表現する(表示
の3段階に大きくわけられます. またしばしば,
   4.観測結果を解釈し,天体現象のモデルを作る(解釈・モデル
などの段階が続きます.
検出

天体に望遠鏡を向けて, 天体からやってくる微弱な電磁波(可視光,X線,電波など)を, 観測装置で捉えることを,(信号の)検出(detection)といいます. 業界用語では,“(信号が)受かる”ともいいます. 狭い意味では,この段階だけを観測(observation)と呼ぶこともあります.

光学天文学では,反射望遠鏡(および屈折望遠鏡)で光を集め捉えます. 基本的なしくみは単純ですが,天体からの光はしばしば非常に微弱なので, 大型の反射望遠鏡にはさまざまな工夫や技術が投入されています.


大阪教育大学天王寺キャンパス望遠鏡: 2001年に設置された一応最新式 (2001/05/16 福江 純 撮影)

整約

観測装置から直接得られるデータ(生データ)から, 観測装置や地球大気による影響を差し引いて, 天体からの信号だけに処理する過程を, データの整約(data reduction)と呼びます. 具体的には,観測装置による差異(器差と呼びます)を補正したり(較正), 地球大気などからくる観測視野の微弱な光(スカイ)を差し引いたり, その他の不要なノイズを除去したりします. 整約によって,生データは定量的で有効な情報になります.

今日では, 観測データもデジタル化してコンピュータで処理します. どんな波長の観測データでも, 基本的な整約処理はあまり違いません.


大阪教育大学天王寺キャンパス望遠鏡: 2001年に設置された一応最新式 (2001/05/16 福江 純 撮影)

表示

観測の目的に応じて,整約済みの観測データを, 画像に表したり,光度変化を示したり,スペクトル図を作ったりします. 画像として示す場合には,画像の違いや特徴を際立たせるために着色することもあります. 観測データを上手に表現する方法は, 観測波長によらず,可視光でも電波でもX線でも同じです.

このような表現方法(presentation) は, かつてはあまり重要視されていませんでしたが, 最近では観測の一つの大事なステップだと考えられるようになってきました.

解釈とモデル

観測して得られたデータから, 天体のサイズや温度やガスの組成などを導くことができます. 得られるデータはしばしば不充分なので, 多くの場合はなんらかの仮定を立ててデータを解析(analysis)します. さらに画像や時間変化やスペクトルなどのデータを物理的に解釈(interpretation)して, 天体の構造や変化を推測したり,隠された法則性を調べたりします. またしばしば,枝葉末節を切り捨てて描像を単純化したモデル(model)を立て, そこで起こっている天体現象の本質を突き止めます. そのようなモデルが普遍性や予測性をもったときに, そのモデルは理論(theory)と呼ばれます.

観測の流れについての具体的な例
「特異天体SS433のVRI測光観測」
中島里香他,1996,大阪教育大学紀要,第45巻,第1号,115-130
「特異連星系SS433の光度曲線解析」
中村真由美他,1996,大阪教育大学紀要,第44巻,第2号,175-196
「特異連星系SS433の光度曲線解析II」
阪口敏基他,1997,大阪教育大学紀要,第45巻,第2号,249-264


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