星のスペクトルには種々のものがあることがわかり,
20世紀に入ると組織的なスペクトル分類が本格的に始りました.
その先頭を走ったのが,
アメリカのハーヴァード大学天文台のピッカリング(1846-1919)の指導するグループでした.
彼らの結果はやがて22万個以上の星をスペクトル型に分類したヘンリー・ドレーパー・カタログ
(略称HDカタログ,1918-24)として結実します.
このグループが採用したスペクトル分類法がハーヴァード分類と呼ばれています.
当初はA,B,Cのように線スペクトルのパターンからアルファベット順に分けていましたが, その後の研究によりスペクトルは星の表面(大気)の温度によって決まることがわかり, 温度が高いものから順に;
と,高温度星(数万度)から低温度星(3千度)まで,温度系列として並べることになりました. さらに細かい分類を施す場合,各型ごとに0から9まで10段階に分けてサブクラスとします. たとえば,太陽はG2型,ベガはA0型です.
肉眼で見ると高温度星は青白く見えますが,
低温度星になると橙から赤色に見えます.
星の表面大気は高温のガスですが,その内側のより温度の高い場所から出てくる光を吸収します.
その結果,大気に含まれる元素に固有な吸収線が現れますが,
温度によって吸収の起こり方にちがいがあるため,
このようにいろいろなスペクトル型が生じるのです. ところで,低温度星のスペクトルには原子の吸収線だけでなく, 分子による吸収が帯状に現れるようになり, M型星では酸化チタン(TiO)や酸化バナジウム(VO)の吸収が見られます. また,M型の一部の星は元素の組成が普通の星と異なっていて, 炭素星(C型)とも呼ばれています. 従来はM型がもっとも低温の星(表面温度が3000K程度)とされていましたが, 最近の精密な観測でより低温の, したがってより暗い星が見つかってきました. それらはいままで使われていないアルファベットを当てはめて, 表面温度が2000Kから1300KぐらいのL型と, さらに低い1000K程度の表面温度をもつT型に分類されています. これらの極低温度星の発見によって, 恒星と褐色矮星や惑星とが切れ目なく連続的に存在していることが確実になりました.
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