19世紀になって,電気と磁気との研究が進むと(マクスウェル;J.C. Maxwell),
これらが互いに影響することで真空中を波動が伝わる可能性があることが指摘されました.
さらに研究が進むと,光も電波と同種の波動であることがはっきりとし,
これらを総称して電磁波と呼ぶようになりました.
1888年,ドイツのヘルツ(H.R. Hertz)が実験によって,
このような波動の実在を示し,この新しい波動は電波と呼ばれるようになりました.
電波による通信が実用化すると,通信に自然界で発生した雑音が紛れる ことがわかりました.これを空電と呼びます. 空電のように,人工的な装置がなくとも電波が自然界で発生することが知られると, 1890年代から1900年にかけてロッジやケネリーによって, 天体からの電波を観測してみようとする試みが行われました. 彼らが目標としたのは全天で最も明るい天体である太陽でした. しかし,当時の受信機では感度が不十分だったり, 長い波長の電波は地球の電離層で反射されてしまうため,観測には成功しませんでした. こうして,天体から電波がやってきているのではないかという着想は, その後しばらくは,人々の間から忘れ去られてしまいました.
1931年,天文学とは無縁の若き(20代半ば)無線技術者として,
ベル電話会社に勤めていた米国のカール・ジャンスキー(K. Jansky)は,
空電の性質を詳しく調べていました.
彼は,当時としては感度が高い受信装置を用いて,
波長14.6mの電波で空電の強さの時間変化を測定していたのですが,
空電が強くなる時刻が毎日4分ずつ早くなることに気づきました.
人間生活や地上の自然現象ならば,毎日ほぼ決まった時刻に起きそうなものですが,
この雑音は,正確に4分ずつ早くなっていったのです.
復元されたジャンスキーのアンテナ(Photo by Anish Roshi) ジャンスキーが世界で最初に宇宙からの電波を捕らえたアンテナの実物大復元模型. 米国立電波天文台グリーンバンクに保存されています. 水平回転部分には当時の自動車の車輪が使われているなど手作り感が強いアンテナです. 白く塗られているのは,支えとなる枠組みで, 電波を受信する部分は,金属線が矩形の折り曲がっている部分です.
宇宙電波を発見したジャンスキーの栄誉をたたえて,
天体電波の強さの単位として,
ジャンスキー[Jy]という単位が使われます.
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